頭痛・偏頭痛
頭痛について漢方的に分類してみました。
大きく分けると原因が外側なのか、内側かです。
普段は頭痛がないのに急にするようになったのであれば外感による可能性が高く、慢性的に頭痛があれば内側に原因があります。
内傷
身体の内側に原因のある頭痛です。足りていないものがあれば頭まで気血が巡ることができず、頭痛となり、反対に過剰なものがあっても流れをさえぎってしまうため頭痛になります。虚と実を見極めて漢方薬を選ぶ必要があります。
寒飲頭痛
脾胃の弱さから寒飲が溜まり、寒飲によって気の流れが妨げられ、頭痛が生じます。症状は強く、頭痛だけでなく、吐き気、めまい、手足の冷えもあります。寒飲による頭痛には呉茱萸湯です。頭痛、吐き気、めまいからも呉茱萸湯は偏頭痛の予防によく使用される漢方薬です。普段から手足の冷えと頭痛があるのであれば呉茱萸湯が適しています。
血虚頭痛
血が虚しているため、相対的に気が多くなり、熱が上衝することで頭痛になります。普段から疲れやすい、動悸、落ち着かない、食欲不振、舌の色が薄い等の症状があれば血虚の恐れがあります。血を養うための加味帰脾湯と、血虚による落ち着かない・神経症・不眠に対応するために抑肝散を考えます。
腎虚頭痛
“腎は髄を生ず”という言葉があるように腎によって髄は養われ、腎が衰えると髄が空虚となり、空虚な痛み、耳鳴り、のぼせの症状があらわれます。補腎と疎散風熱・平肝陽を兼ねた杞菊地黄丸が適しています。
肝陽頭痛
肝が高ぶっているため、内風が生じることで頭痛だけでなく、イライラ、怒りっぽい、不眠、舌が紅い症状もあります。肝陽を鎮めるために天麻鉤藤飲をつかうことが多いですが、一般的には扱いはないため、柴胡加竜骨牡蛎湯+竜胆瀉肝湯(一貫堂)を考えます。柴胡加竜骨牡蛎湯の柴胡にて疎肝、竜骨・牡蛎にて気を鎮め、竜胆瀉肝湯(一貫堂)にて肝火を瀉し、養血にて陰虚による肝風の上炎を防ぎます。
瘀血頭痛
血の滞りがあることで慢性的で刺すような頭痛となります。血の滞りは瘀血といわれ、それが取り除かれなければ頭痛は改善しません。頭痛の原因である瘀血をとるためには血腑逐瘀湯が適しています。
痰濁頭痛
脾胃の力が弱く、痰濁を処理することができず、痰濁が肝風とともに上衝し、痰濁によって気が塞がれ、頭痛が生じます。痰濁というのは体内のヌメリのようなもので、症状としては頭痛、めまい、吐き気、脾胃の力が弱いため普段から食欲不振、軟便、白膩苔があります。半夏白朮天麻湯にて痰濁を処理するとともに、脾胃の働きを補います。
水湿頭痛
体内に水飲が過剰に停滞することで清陽が頭まで上ることができず、頭痛が生じます。水飲の影響は体内だけでなく、体外の気候からも影響を受け、雨の日に頭痛が起こる方に五苓散がつかわれます。水飲の停滞は二日酔いの頭痛と捉えることもでき、二日酔いの頭痛にも五苓散がつかわれます。
外感の頭痛
外感が原因の頭痛には風寒、風熱、風湿によるものが考えられます。
風寒頭痛
葛根湯
かぜひいたときに頭痛がしますが、これは風寒の邪にあてられ、陽気が頭を巡らなくなるためです。項から後頭部が痛くなるときは太陽経に風寒の邪が侵入してきているので葛根湯をつかいます。
川芎茶調散
かぜをひいていなくても、頭痛がときどき発生したり、温めると頭痛がマシになったりするのであれば風寒による頭痛の恐れが高いので川芎茶調散が適しています。川芎茶調散には風を発散する生薬が多く入っており、羌活・防風・荊芥は太陽頭痛(後頭部)、白芷・薄荷は陽明頭痛(前頭部)、香附子・川芎は少陽頭痛(側頭部)に対応し、頭痛全般に使うことができます。
風熱頭痛
頭が張る、割れるように痛む、口渇、舌が紅いときは風熱による頭痛です。風熱が原因であるため、熱を冷ますために釣藤散が適しています。
風湿頭痛
風湿による影響で頭が何かに包まれているような感じがあり、舌には白膩苔としてあらわれます。湿を発散する必要があるため羌活・独活の入った荊防敗毒散が向いています。コタローの添付文書には“湿疹・皮膚炎”の適応となっていますが、『中医臨床のための方剤学』では“風寒感冒の初期で悪寒発熱・頭痛・身痛するもの及び瘡瘍の初期”と説明してあります。
頭痛の部位
太陽経頭痛:後頭部から項
陽明経頭痛:前頭部から眉
少陽経頭痛:頭の両側、耳
厥陰経頭痛:頭頂部