自汗、自然に汗がでる、多汗
自汗というのは『症状による中医診断と治療』には、“自汗とは、労働・運動・天候・着衣・発散薬の服用などの要素に無関係に、自然に汗がでることを言う”とあります。自然に汗がでるということからも現在でいうなら多汗症にあたると考えられます。
漢方の考えにおいて汗をどうコントロールしているのか説明します。漢方では汗がでる穴のことを腠理(そうり)といいます。腠理が開閉することで汗がでたり、でなかったりします。腠理を開閉するにもエネルギーが必要で、衛気(体の表面をめぐる気)が不足していると腠理を閉じることができないために汗が漏れ出てしまいます。つまり自汗というのは気の不足が主な原因です。
反対に腠理が湿などで詰まっていると汗をうまくかくことができず、肌に気が巡らないため、湿疹、アトピーなどの皮膚疾患になることもあります。
肺衛不固・営衛不和による多汗
衛気という身体の表面をめぐる気の不足によるあせ、多汗です。多汗だけでなく、ねあせ、かぜをひきやす、つかれやすいなどの虚した症状があれば黄耆建中湯が適しています。また黄耆建中湯は桂枝・芍薬の営衛不和による汗にもつかうことができます。
気虚による多汗
黄耆建中湯のときは肌の表面の気の不足が問題でしたが、ここでは気虚と気の不足がより一層強くなっています。かぜをひきやすい、疲れやすい、倦怠感、息切れ、食欲不振があれば気の不足もあるため、人参の入った補中益気湯が適しています。
陽虛による多汗
補中益気湯のときは気の不足でしたが、ここでは陽気の不足とさらに虚が進行し、腎の弱さからくる多汗です。かぜをひきやすい、疲れやすい、倦怠感、息切れ、食欲不振と冷える、寒がる、手足、トイレが近いの冷えの陽虛の症状もあるときは八味地黄丸が適しています。
風湿による多汗
風湿が肌表で停滞することによる多汗です。風湿の邪は湿の性質があるため、肌表で腠理が失調し、汗をかくだけでなく、手足の重だるい感じ、しびれ、関節痛、むくみ、水太りの症状があるときは防已黄耆湯が適しています。
更年期による多汗
更年期症状による多汗は気の流れが問題となります。気は熱をもち、上にあがりやすい性質があります。気が通調していれば、気が下から上へ、上から下へめぐることができます。しかし更年期症状のような気の鬱滞があるときは上がった気が下へ降りられず、頭に熱がこもり、ほてり、のぼせ、頭から汗をかくという症状があらわれ、柴胡桂枝乾姜湯が適しています。