ねあせ
ねあせというのは寝ている間に汗をかくことです。漢方ではねあせのことを盗汗といいます。自汗(日常的に自然に汗をかく。現代でいうなら多汗症にあたる)は別の項目で説明します。
ねあせの漢方における考え方を知るにはまず睡眠のメカニズムを理解する必要があります。
漢方においては気の動きが日中と夜間では異なります。「日中は陽をめぐり、夜間は陰をめぐる」というように昼間は(衛)気が身体の表を巡り、身体を活発に動かし、邪の侵入を防ぎます。それに対し、夜間は気が陰に戻る時間となります。気はエネルギーですから、気が表を巡っていると身体も休まりませんが、夜は気が陰のなかに収まることで眠ることができるようになります。
ねあせの考え方ですが、原因は大きく3つあります。(衛気)気の不足、陰の不足、もう1つは気の流れを邪魔しているものがないか、です。
・衛気という身体の表面を流れている気が充実していることで腠理(汗をかく穴)を正常に開け閉めできます。気が足りていなければ、腠理(汗のかく穴)を閉じることができないため、汗が漏れ出てしまいます。
・陰が少なければ気の収まる場所がなくなり、気が過剰になるため熱(虚熱)となり、あせをかきます。
・もう1つは身体に溜まっている痰濁や血瘀といった血の滞りがあることで気の流れを邪魔し、気が戻ることができず、熱となり、あせとなります。
肺衛不固・営衛不和による寝汗
衛気という身体の表面をめぐる気の不足によるねあせです。ねあせだけでなく、日常でも汗がよくでる、かぜにかかりやすい、つかれやすいなどの虚した症状があれば黄耆建中湯が適しています。また黄耆建中湯は桂枝・芍薬の営衛不和による発汗にもつかうことができます。
心血虚によるねあせ
心血が不足することによるねあせです。“汗は心液たり”ともいい、汗をかくことで心血を消耗し、さらに寝汗をかきやすくなるという悪循環に陥る恐れがあります。疲れやすい、倦怠感、食欲不振の症状のほかにも不眠、動悸、顔色が薄い等の症状があれば益気補血の(加味)帰脾湯が適しています。
陰虚内熱によるねあせ
陰が不足することで生じるねあせです。陰によって身体を適度に冷ましているため、それが足りないことでほてり、口渇、午後に身体が熱くなる、イライラの症状があるときは知柏地黄丸が適しています。
血瘀によるねあせ
『医林改錯』には薬を服用しても治らない、盗汗(ねあせ)・自汗の原因に血瘀を指摘しています。血瘀があることで気の流れが妨げられ、結果的にねあせもあるという場合です。イライラ、怒りっぽい、動悸、不眠、舌の瘀点があれば気滞血瘀の恐れがあります。のぼせ、肩こりにもつかわれる血腑逐瘀湯が適しています。
寒湿・湿熱・痰熱によるねあせ
痰湿によって気の流れが妨げられ、結果的にねあせの症状もあるという場合です。寒湿による場合は藿香生気散、湿熱による場合は茵蔯五苓散、痰熱による場合は温胆湯が適しています。