大黄牡丹皮湯
大黄牡丹皮湯は『金匱要略』瘡瘍腸癰浸淫病篇に記載のある漢方薬です。
「腸癰者、少腹腫痞、按之則痛如淋、小便自調、時時発熱、自汗出、復悪寒。其脈遅緊者、膿未成、可下之、当有血。脈洪数者、膿已成、不可下也。大黄牡丹皮湯主之。」
実熱性の腸廱の条文です。ここでは腸癰の初期の状態で、膿はまだ形成していません。熱毒が鬱滞し、気血を瘀滞させている腸癰の段階です。腸の血分に瘀滞し、気血を阻滞しているため、少腹は腫れ、按じると痛みがあります。膀胱の病気(淋病)のように見えるが小便はきちんとでているため、膀胱には問題がないことを示しています。熱邪によって津液が外へ追いやられ、発熱し、汗がでて、悪寒もあります。脈が洪大にならず、遅緊からも化膿しておらず、まだ血分の炎症の段階とわかります。化膿する前の腸癰には大黄牡丹皮湯を使います。ただ実熱性化膿があるときは下すべきではないと書いてあります。
大黄牡丹皮湯は大黄・牡丹皮・桃仁・冬瓜子・芒硝の5薬から構成されています。大黄は清熱瀉下の妙薬であり、瀉熱通便の芒硝と組み合わせることで相乗的に効果を発揮します。牡丹皮・桃仁はどちらも血分に働く生薬であり、活血散瘀します。冬瓜子は湿に働き排膿消腫します。
よく似た処方で腸廱湯があります。腸廱湯は牡丹皮・桃仁・冬瓜子・薏苡仁の4薬から構成されています。
腸廱湯=大黄牡丹皮湯―大黄・芒硝+薏苡仁
腸廱湯には瀉下薬は入っておらず、その代わりに薏苡仁が入っています。薏苡仁は湿を取り除く作用があり、化膿し、膿瘍となった場合には腸廱湯の方が適しています。