慢性心不全、心臓性喘息にはどんな漢方薬がいいの?

木防已湯

慢性心不全や胸に浮腫みがあるときに木防已湯です。簡単にいえば胸膈の水を取り除く漢方薬です。木防已湯は『金匱要略』に記載のある漢方薬です。

「膈間支飲、其人喘満、心下痞堅、面色黎黒、其脈沈緊、得之数十日、医吐下之不愈、木防已湯主之。虚者即愈、実者三日復発、復与不愈者、宜木防已湯去石膏加茯苓芒消湯主之。」

支飲という胸膈に水がたまったときの条文です。現代いうなら肺水腫に近いと考えられます。胸膈に水飲が停滞しているため、胸が苦しく咳がでますし、心下のところが水が溜まり硬くなります。“面色黎黒”というのはチアノーゼの症状だと考えられます。脈が沈緊であることからも裏で水邪が結していることが想像できます。“得之数十日”とあることからも久しくこの状態が続いており、水飲が熱化し、鬱熱していることがわかります。水飲の邪があると考えて医者が嘔吐させても下しても治りません。なぜなら膈間という狭いところに強く結しており、その原因は脾虚から来ているからです。木防已湯にて気を補いつつ、支飲に対応します。

木防已湯は(木)防已・石膏・桂枝・人参の4薬から構成されています。防已は気平・味辛で、気味のどちらも肺経に入る生薬です。肺経に入ることで津液を大小便へ引き込み浮腫みを改善します。支飲は胸膈の水邪であり、胸膈は三焦の一部であり、防已は三焦の水を巡らせます。石膏にて鬱熱した水飲を清熱し、鎮咳清熱します。人参にて脾気を強く補います。桂枝は発散させるように陽気を上へ通陽化気し、防已は下へのベクトルが強く、一昇一降し、行水します。この方剤は人参が入っていることからも、支飲の原因が脾虚からきているのであれば癒えるため、“虚者即愈”とあります。

しかし木防已湯をつかっても治らないときは脾虚が原因ではありません。胃中に水飲が実し、有形の邪になっています。そこで肺に働く石膏を、中焦の実邪に対応するために軟堅の芒硝へ変更します。さらに中焦の水飲であるため茯苓という利水の生薬を加え心下から胸脇までの水飲を破ります。

 

以上が『金匱要略』での木防已湯の使われ方です。読んでいただいたように木防已湯はの人にしか効果がなく、水飲の停滞が強く実邪となっているのであれば茯苓を加えるなどの加味が必要になると記載があります。エキスで使うなら木防已湯+茯苓飲が適当だと思われます。

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効能又は効果は?

コタローの添付文書には「みぞおちがつかえて喘鳴を伴う呼吸困難があり、あるいは浮腫があって尿量減少し、口内または咽喉がかわくもの。心内膜炎、心臓弁膜症、心臓性喘息、慢性腎炎、ネフローゼ。」と記載があります。

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