半夏白朮天麻湯
めまい、頭痛に頻用される漢方薬の1つです。めまいを呈する疾病にはメニエール病がありますし、うつ状態にめまいが伴えば半夏白朮天麻湯の適応になります。
半夏白朮天麻湯を一言でいえば風痰によるめまい、頭痛に対応した漢方薬になっています。風痰とは肝風によって上衝する痰濁のことです。苓桂朮甘湯は水飲によるめまい、頭痛でしたが、半夏白朮天麻湯は痰濁によるめまい、頭痛です。そのため舌苔は痰濁を示す白膩滞を呈します。水飲が停滞し、煮詰まると痰飲へ変化しき、日本は湿をため込みやすい環境にあるため、向いている方は多いと思われます。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがある者」と記載があります。
何が入っているの?
天麻・陳皮・半夏・蒼朮・沢瀉・黄柏・麦芽・神麴・人参・黄耆・白朮・茯苓・乾姜の13薬から構成されています。
熄風薬(天麻)、化痰薬(陳皮・半夏)、利水薬(蒼朮・沢瀉)、消導薬(麦芽・神麴)、補気薬(人参・黄耆・白朮・茯苓・乾姜)にわけて説明します。
天麻:熄風
天麻は熄風薬といわれ、頭痛、めまい、痙攣、しびれなどの急迫的な風の症状を緩和します。小児の熱性けいれんに対する鈎藤飲やてんかん発作に対する定癇丸にも天麻は配合されています。
陳皮・半夏:化痰
陳皮と半夏は痰をとる組み合わせで、有名なものに二陳湯があります。痰飲というヌメリのようなものが頭に上昇することで頭痛、めまいが起こってくるのでそれを取り除きます。抑肝散加陳皮半夏も、抑肝散に陳皮・半夏が加味されたものです。
蒼朮・沢瀉・黄柏:利水
蒼朮・沢瀉も停滞している水飲を膀胱へ引っ張ってきます。水飲もめまい、頭痛に関与し、脾胃の働きを阻害するため、余分な水飲は排出する必要があります。さらに黄柏は清熱作用もあり、清熱燥湿します。
麦芽・神麴:消導薬
麦芽・神麴は消導薬で消化を助けます。脾胃の働きが弱いことで痰飲が貯留してくるため、麦芽・神麴が消化を助けます。麦芽・神麴は炭水化物の消化を助け、山査子は肉類の消化を助けます。
人参・黄耆・白朮・茯苓・乾姜:補気
痰濁をさばくことができなくなった原因の1つに脾胃の失調があります。補脾することで痰濁の停滞を防ぎます。
効果のまとめ
天麻にて急迫的な頭痛、めまいの症状を緩和し、陳皮・半夏にて原因となっている痰濁を取ります。蒼朮・沢瀉・黄柏にて余分な水を小便として排出します。麦芽・神麴にて消化を助け、脾胃の負担を少なくし、人参・黄耆・白朮・茯苓・乾姜にて気を補います。
半夏白朮天麻湯はめまい、頭痛の原因の痰濁を取り除く漢方薬であり、痰濁がつくられるよになった脾胃の弱さを補う薬でもあります。
ほかの漢方薬との違いは?
めまい、頭痛で用いられる代表的な漢方薬に加味逍遙散、当帰芍薬散、柴胡桂枝乾姜湯があげられます。それらの違いについて説明します。
半夏白朮天麻湯
痰濁によるめまい、頭痛につかわれます。痰濁というのは水がやや煮詰められたもので、舌苔には白膩苔としてあらわれます。“奇病は痰なり”という言葉もあるようにあらゆる不調の原因に関与します。めまい、頭痛が改善しない方は一度考えてもいいかもしれません。
苓桂朮甘湯
苓桂朮甘湯もめまいに使われる頻用処方です。苓桂朮甘湯は気が通じないことによる水飲の停滞によるめまいに使われます。めまいの原因が水飲であれば苓桂朮甘湯で効果がありますが、水飲が停滞することで痰飲となるため、苓桂朮甘湯で効果がなければ半夏白朮天麻湯を服用してみてもいいかもしれません。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ37 7.5g(3包)中には、、、
日局チンピ 3.0g
日局ハンゲ 3.0g
日局ビャクジュツ 3.0g
日局ブクリョウ 3.0g
日局テンマ 2.0g
日局バクガ 2.0g
日局オウギ 1.5g
日局タクシャ 1.5g
日局ニンジン 1.5g
日局オウバク 1.0g
日局カンキョウ 1.0g
日局ショウキョウ 0.5g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)の生薬量を比較してみました。ツムラは白朮が入っていましたが、クラシエ・コタローには蒼朮も入っており、利水の生薬が多くなっています。コタローは神麴も入っており、消導薬が多くなっています。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
サンワ半夏白朮天麻湯
市販ではサンワから販売されています。医療用のツムラの7割の生薬量となっています。ツムラには入っていなかった蒼朮・神麴が入っており、利水・消導の生薬が多くなっています。
めまい、頭痛には半夏白朮天麻湯