動悸、息切れに炙甘草湯

炙甘草湯

『傷寒論』に記載のある漢方薬です。結脈・代脈という現代でいうなら不整脈の症状に炙甘草湯がつかわれていました。現代では心電図にて脈を確認し、それにあわせた不整脈のお薬がつかわれます。

「傷寒脈結代、心動悸、炙甘草湯主之」

脈が結代というのは今でいうなら不整脈や動悸のことをあらわしています。

「脈来緩、時一止復来者、名曰結。」

脈が緩慢なときに1回止まるのが結脈で、規則的に止まるのを代脈といいます。結脈は気血の阻滞にて血の流れが1回止まる程度ですが、代脈は臓腑の気不足にて脈が止まるため、代脈の方が症状が重たいです。

もともと心が虚していたところに傷寒の邪が入り込み、心の機能が失調し、不整脈・動悸が起こっている状態です。こういった動悸・不整脈には炙甘草湯を使います。

炙甘草湯は甘草(炙)・生姜・人参・生地黄・桂枝・阿膠・麦門冬・麻子仁・大棗の9薬から構成されています。炙甘草湯というくらいなので炙甘草が重要です。『傷寒論』では甘草よりも炙甘草の方がよく使用されていますが、甘草は炙ることで補の性質が強くなります。炙甘草を用いることで心陽を補います。生姜・人参・桂枝にて陽気を補います。生地黄・阿膠・麦門冬・麻子仁・大棗は滋陰薬であり、陰血を補い、栄養を与えます。麦門冬など甘寒粘膩の生薬が入っているため、邪を留めるか懸念がありますが、桂枝・生姜が合わさることで邪を留める恐れを回避しています。『傷寒論』では地黄は“生”地黄となっていますが、現代で炙甘草湯をつくるときは“生”地黄ではなく“熟”地黄が適当だと考えられます。というのは乾地黄をお酒で蒸し、涼性から温性の生薬となります。炙甘草湯の煎じ方のところには「九味、以清酒七升、水八升」とあり、地黄をお酒で煮込み、煎じています。熟地黄の作り方を思わせます。この当時は熟地黄が存在しておらず、温性の地黄をつくるためにこのような処理をしていると考えられます。熟地黄になることで生地黄よりも強く腎を補うことができます。

目次

効能又は効果は?

ツムラの添付文書には「体力がおとろえて、疲れやすいものの動悸、息切れ」と記載があります。

何が入っているの?

炙甘草・人参・地黄・桂皮・阿膠・麦門冬・麻子仁・生姜・大棗の9薬から構成されています。

 

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