同じ竜胆瀉肝湯という名前でもツムラとコタローでは考えた人が違います。
ツムラ竜胆瀉肝湯は『蘭室秘蔵』という本を参考につくられ、コタロー竜胆瀉肝湯は一貫堂医学からつくられています。
竜胆瀉肝湯はややこしいのですが、ツムラ、コタローで内容が異なります。調剤のときや、取り違えに注意が必要です。
ツムラとコタローの生薬の違いは?
ツムラ竜胆瀉肝湯の方が生薬の量は少ないです。
ツムラ竜胆瀉肝湯に芍薬・川芎・黄連・黄柏・連翹・薄荷・防風を加えたものがコタロー竜胆瀉肝湯です。
コタロー竜胆瀉肝湯=ツムラ竜胆瀉肝湯+芍薬・川芎・黄連・黄柏・連翹・薄荷・防風
適応の違いは?
ツムラ竜胆瀉肝湯の効能効果は”比較的体力があり、下腹部筋肉が緊張する傾向があるものの次の諸症:排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ”。
コタロー竜胆瀉肝湯の効能効果は”比較的体力のあるものの次の諸症:尿道炎、膀胱カタル、膣炎、陰部湿疹、こしけ、陰部痒痛、子宮内膜炎。”。
入っている生薬は違っても、適応の記載はほとんど同じです。
ツムラ竜胆瀉肝湯の構成は?
当帰・地黄・木通・黄芩・沢瀉・車前子・竜胆・山梔子・甘草から構成されています。
ツムラ竜胆瀉肝湯はコタロー竜胆瀉肝湯に比べると生薬の数が少ないです。
木通・沢瀉・車前子にて湿熱を尿として出し、膀胱の炎症に対応しています。
竜胆・黄芩・山梔子にて肝・胆・膀胱の炎症の熱を清熱します。
当帰・地黄にて不足している肝血を養います。
コタロー竜胆瀉肝湯の構成は?
コタロー竜胆瀉肝湯は一貫堂医学という流派を参考につくられています。
一貫堂の竜胆瀉肝湯について説明します。
竜胆瀉肝湯は一貫堂医学において解毒証体質(解毒する必要がある体質)の方に用いられていました。
とくに下焦の疾患の解毒証体質に竜胆瀉肝湯を頻用していました。
解毒証体質につかう漢方薬には竜胆瀉肝湯のほかに柴胡清肝散(湯)荊芥連翹湯があります。
すべて黄連解毒湯合四物湯である温清飲をベースとしてつくられています。
小児の解毒証体質に柴胡清肝湯、青年期以降の解毒証体質に荊芥連翹湯、下焦の疾患(小児期には少ないため青年期以降の方)に竜胆瀉肝湯がつかわれていました。
何が入っているの?
コタロー竜胆瀉肝湯は地黄・当帰・芍薬・川芎・黄連・黄芩・黄柏・山梔子・連翹・薄荷・防風・車前子・木通・沢瀉・竜胆の15薬から構成されています。
コタロー竜胆瀉肝湯=四物湯(地黄・当帰・芍薬・川芎)+黄連解毒湯(黄連・黄芩・黄柏・山梔子)+連翹・薄荷・防風・車前子・木通・沢瀉・竜胆
コタロー竜胆瀉肝湯=ツムラ竜胆瀉肝湯+芍薬・川芎・黄連・黄柏・連翹・薄荷・防風
ツムラ竜胆瀉肝湯に比べ、芍薬・川芎の養血、黄連・黄柏の清熱燥湿、連翹・薄荷・防風にて風熱を発散する生薬が増えています。
清熱薬も増えていますが、その分血分を補う薬が増えており、実の人にも虚の人にもつかいやすくなっています。
風熱を発散するため、邪を尿で排出するだけでなく、風熱として表から発散するルートも考えられています。
コタロー竜胆瀉肝湯は適応上は陰部の炎症がメインになっていますが、四物湯・黄連解毒湯の温清飲の構成に風熱を発散する生薬が足されていることから、つかいやすく、様々な症状に応用できます。
コタローの方が多くの生薬が入っています。生薬が多いからいいのではなく、熱がどれくらいあるのか、血虚は隠れていないか、風熱の鬱滞は強いかなど、状態にあわせて使う必要があります。