五淋散
膀胱炎の症状がある方によく処方される漢方薬です。急性の膀胱炎は抗生物質の投与が標準的な治療法ですが、自覚症状の改善まで時間がかかるので漢方薬を併用することがあります。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「頻尿、排尿痛、残尿感」と記載があります。
何が入っているの?
五淋散には茯苓、黄芩、山梔子、当帰、地黄、芍薬、沢瀉、木通、滑石、車前子、甘草の11種類の生薬が配合されています。
茯苓:利水作用
サルノコシカケ科マツホドの菌核。利水作用があり、身体の水のバランスを調整してくれます。胃内停水を改善し、胃腸機能を調える作用、気を降ろす作用があり、精神安定作用もあります。
黄芩:清熱作用
シソ科コバネバナの根。炎症を抑え、解熱作用を発揮します。湿熱を取り除く作用があり、湿熱による下痢にも効果があります。
山梔子:抗炎症作用
アカネ科クチナシの果実。精神安定作用(加味帰脾湯)と熱を冷まし、炎症を抑える作用があります。
当帰:止痛作用
セリ科トウキの根。補血作用があり、血行を促進し、冷えを緩和します。生理不順の方に使用され、妊婦の方には安胎作用があります。五淋散では止痛作用のため、配合されています。
地黄:滋潤作用、補血作用
コマノハグサ科のアカヤジオウの根のこと。強い滋潤作用があり、身体の乾きに使われます。血虚の方に補血剤としても使用されます。五淋散では利水の生薬が多く配合されているため、乾燥しすぎるのを予防するために滋潤作用の薬として地黄が入っています。
芍薬:鎮痙作用
芍薬は花で有名なシャクヤクの根を使用しています。芍薬には鎮痙作用があり、過剰な平滑筋の収縮を緩和し、お腹の痛み(桂枝加芍薬湯)や足がつった時(芍薬甘草湯)にも使用されます。
沢瀉:利水作用
オモダカ科サジオモダガの塊茎。除湿、利水作用。気を降ろし、水滞による頭重感、めまい、耳鳴りを利水作用にて改善します。
木通:利水作用、清熱作用
アケビの茎。清熱作用があり、炎症を抑え、利尿作用があります。
滑石:利尿作用、清熱作用
ケイ酸アルミニウムを主成分とする軟滑石という鉱物。熱を冷ます作用と利尿作用があります。
車前子:利水作用、清熱作用
オオバコの種子。利水作用と清熱作用があります。
効果のまとめ
茯苓、沢瀉、木通、滑石、車前子の利水作用にて排尿を促し、黄芩、山梔子にて熱を冷まし、炎症を抑えます。地黄、当帰で副作用を予防します。
ほかの漢方薬との違い
膀胱炎の症状があるときに使用される漢方薬には五淋散のほか、猪苓湯、竜胆瀉肝湯があります。
膀胱炎のときの頻用処方は猪苓湯です。膀胱炎が慢性化していたり、熱があったりする場合により清熱、利水作用の強力な五淋散を使用します。竜胆瀉肝湯は肝の熱が膀胱に影響があるときに使用されます。肝の熱がある状態とは陰部や鼠径部にかゆみがある状態のことです。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ56 7.5g(3包)中には、、、
日局ブクリョウ 6.0g
日局オウゴン 3.0g
日局カッセキ 3.0g
日局カンゾウ 3.0g
日局ジオウ 3.0g
日局シャゼンシ 3.0g
日局タクシャ 3.0g
日局トウキ 3.0g
日局モクツウ 3.0g
日局サンシシ 2.0g
日局シャクヤク 2.0g
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ボーコレン
1日量で医療用の半分の量の生薬量になっています。
五淋散エキス錠N
こちらも医療用の半分の生薬量になっています。
頻尿、排尿痛、残尿感があるときは猪苓湯にさらに利尿、抗炎症作用を強化した五淋散です。