啓脾湯
下痢や潰瘍性大腸炎の寛解維持療法に使用されることのある漢方薬です。脾の気と陰の虚を補う漢方薬。中医学では脾が消化吸収を担当しており、それが弱ることで下痢につながります。
万病回春では子供に下痢があって栄養失調傾向のときに使用されています。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「やせて、顔色が悪く、食欲がなく、下痢の傾向があるものの次の諸症:胃腸虚弱、慢性胃腸炎、消化不良、下痢」と記載があります。
何が入っているの?
啓脾湯には茯苓、山薬、人参、連肉、山査子、沢瀉、陳皮、甘草の8つの生薬から構成されています。
茯苓:利水作用
サルノコシカケ科マツホドの菌核。利水作用があり、身体の水のバランスを調整してくれます。胃内停水を改善し、胃腸機能を調える作用、気を降ろす作用があり、精神安定作用もあります。
山薬:補腎作用
ヤマイモの根茎。補脾胃作用があり、胃腸が虚弱な方の消化吸収を高めます。
人参:消化吸収の働きをよくする、気を補う
ウコギ科オタネニンジンの根。日常、口にするニンジンはセリ科のニンジンで、漢方で使用されるものと異なります。補気剤といい、強力に気を補う作用があります。四君子湯においては胃腸の働きをよくし、吸収能力を高めます。鎮咳去痰作用もあります。
蓮肉:胃腸の働きをよくする
ハスの種子。脾を補い、胃腸の働きを高め、腎を益し、心を養う。
山査子:消化促進作用
サンザシ。消化をよくし、とくに肉類の食滞に効果があります。
沢瀉:利水作用
オモダカ科サジオモダガの塊茎。除湿、利水作用。気を降ろし、水滞による頭重感、めまい、耳鳴りを利水作用にて改善します。年齢を重ねると排尿能力が衰えて、むくみが生じます。利水作用にてむくみを改善します。
陳皮:健胃作用、湿を取り除く
ウンシュウミカンの成熟した果皮。よく見るみかんのことです。胃腸の調子を整える作用と湿を除く作用があります。
効果のまとめ
人参をはじめ茯苓、山薬、蓮肉、山査子、陳皮など胃腸の消化吸収を高める生薬がメインになっています。吸収を高め、身体の調子をよくすることで下痢を改善していきます。添付文書の効能効果にも「やせて、顔色が悪く、食欲がなく」と記載があるのは吸収を高める効果があるためです。
漢方薬の違い
脾虚という胃腸の調子が悪いときに使用される漢方薬には補中益気湯、人参湯があります。
補中益気湯は気を上方向にもっていく作用が強いため、倦怠感が強い場合に用いられます。
人参湯は乾姜という体を温める生薬が入っており、お腹が冷えて、下痢気味のときに用いられます。
啓脾湯は食欲があってもすぐにお腹がいっぱいになるときに使用されます。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ128 7.5g(3包)中には、、、
日局ソウジュツ 4.0g
日局ブクリョウ 4.0g
日局サンヤク 3.0g
日局ニンジン 3.0g
日局レンニク 3.0g
日局サンザシ 2.0g
日局タクシャ 2.0g
日局チンピ 2.0g
日局カンゾウ 1.0g
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
調べてみたところ、一般用医薬品では啓脾湯は販売されていないようです。