桂枝湯
風邪をひいたときによく使用される漢方薬の1つです。
桂枝湯というのは一般的にあまり知られていない漢方薬ですが、漢方医学を学んでいく上では非常に重要なもののひとつです。『傷寒論』という1800年前に編纂された書物の中で1番最初に登場するのが桂枝湯です。
「太陽病、頭痛、発熱、汗出、悪風者、桂枝湯主之」と『傷寒論』にかいてあり、訳すなら「頭痛があったり、発熱があったり、汗がでて、悪寒があるときには桂枝湯が良い」とかいてあります。まさに風邪の引き初めの症状ですね。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「体力が衰えたときの風邪の初期」と記載されています。
風邪といえば葛根湯ですが、桂枝湯では“体力が衰えたとき”と書いてあり、体力が落ちたご年配の方の風邪に使用されることが多いです。
何が入っているの?
桂枝湯には桂皮、芍薬、生姜、大棗、甘草が配合されています。
桂皮:発汗作用
これはいわゆるシナモンの仲間。この桂皮には発汗解表作用、気を降ろす作用などがあります。発汗作用があるため、風邪ひいたときに邪を表面から追い出します。気を降ろす作用があるので桂枝茯苓丸にも使用されています。
芍薬:過剰な発汗を抑える
芍薬は花で有名なシャクヤクの根を使用しています。芍薬には筋肉や節々の痛みを抑える作用もありますが、桂枝湯では過剰な発汗を予防するために使用されています。
生姜:発汗作用、胃薬
生姜には発汗作用があり、芳香性健胃薬としての作用もあります。
大棗:胃薬
ナツメの果実を乾燥させたものです。簡単にいえばドライフルーツです。大学の授業で食べましたが、おいしかったです。桂枝湯では脾胃を補う胃薬としての作用があります。甘いものを食べると落ち着くように大棗には精神安定作用もあります。
甘草:胃薬
マメ科カンゾウの根のことです。名前の通り、この生薬は甘いです。実はお菓子の甘味料としてもよく使用されています。桂枝湯では脱水を予防し、胃薬として配合されています。この生薬にはグリチルリチン酸という抗炎症成分が入っており、咽頭痛を抑える作用もあります(桔梗湯)。
効果のまとめ
桂皮→発汗作用
芍薬→発汗しすぎるのを予防
生姜、甘草、大棗→胃薬
ほかの漢方薬との違いは?
身体を温める風邪薬で代表的なものに、桂枝湯、葛根湯、麻黄湯があります。
これらの漢方薬の違いに温める強さがあります。
温める強さを比較すると、麻黄湯>葛根湯>桂枝湯という順になります。
インフルエンザのように寒気が強いときには麻黄湯が適しています。少し寒気があるけど、汗がでているのであれば強く温める必要がないので桂枝湯がいいです。葛根湯はその間の状態のときに使用することができるので、幅広く使用することができ、使いやすいためよく使用されています。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ45 7.5g(3包)中には
日局ケイヒ 4.0g
日局シャクヤク 4.0g
日局タイソウ 4.0g
日局カンゾウ 2.0g
日局ショウキョウ 1.5g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)を調べたところ、クラシエでは取扱いがなく、大手ではツムラ、コタローが扱っていました。生薬量を比較すると、ツムラの方がショウキョウの量が0.5g多いだけで、大きく違いはありませんでした。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているもの、市販で手に入るものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ漢方
こちらは処方箋でもらうツムラではなく、市販で販売しているツムラの商品
1日量、2包(3.75g)中にケイヒ2.0g、シャクヤク2.0g、タイソウ2.0g、カンゾウ1.0g、ショウキョウ0.75gと医療用の半分の量になっています。
マツウラ
ツムラ以外ではマツウラというメーカーからも販売されています。
こちらの配合量を調べてみると、
1日量(3包)でケイヒ:2.0g、シャクヤク:2.0g、タイソウ:2.0g、ショウキョウ:0.5g、カンゾウ:1.0gとこちらも医療用の半分の生薬量になっています。
寒気があまりひどくなく、体力が弱っている方の風邪には桂枝湯です。