柴陥湯
小柴胡湯と小陥胸湯を合わせたものです。柴陥湯=小柴胡湯+小陥胸湯
小柴胡湯は有名ですが、半表半裏のこじらせた風邪に使用されます。
配合されているもう1つの小陥胸湯は医療用でも一般用医薬品でも販売されていません。小陥胸湯というのは傷寒論に登場する漢方薬です。胸の熱と結びついた痰を除く作用があり、今でいう胸膜炎のような症状のときに使用されていました。小柴胡湯、柴陥湯を合わせることで胸に熱が入り込み咳、胸痛に効果があります。
論文を調べると件数は少ないですが、肺炎、胸痛、舌痛、咳喘息、多汗症にも使用された例もあります。
咳喘息に使用された症例です。ほかの漢方薬で咳がおさまらないときは柴陥湯も考慮にいれる必要がありますね。
https://ci.nii.ac.jp/els/contents110006839534.pdf?id=ART0008778225
薬の副作用で発生した胸水に柴陥湯が効果を発揮した症例です。
https://ci.nii.ac.jp/naid/10029482008
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「咳、咳による胸痛」と記載があります。
市販のもの(救心漢方)には「体力中等度以上で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振で口が苦く、舌に白苔がつき、強いせきが出てたんが切れにくく、ときに胸痛があるものの次の諸症:せき、胸痛、気管支炎」とより幅広く効能効果が記載されています。
何が入っているの?
柴陥湯には柴胡、半夏、黄芩、大棗、人参、黄連、甘草、生姜、栝楼仁が配合されています。
柴陥湯=小柴胡湯(柴胡、半夏、黄芩、大棗、人参、甘草、生姜)+小陥胸湯(栝楼仁、半夏、黄連)
柴胡:清熱作用
ミシマサイコの根。かぜの中期のこじらせたときに、清熱作用として使用される。胸脇苦満という胸から脇にかけてなんとなく重苦しいときに緩和する作用もある。
半夏:吐き気を抑える
サトイモ科カラスビシャクの塊茎。薬性が燥。乾かす作用が強いため、湿性の咳嗽に有効です。気を下す作用があり、吐き気を抑える作用もあります。大学の実験で生薬をそのまま食べたことがありますが、後を引くえぐ味と刺激感がすごかったです。ただこの刺激感は煎じることで消失するので安心してお飲みください。
黄芩:清熱作用
シソ科コバネバナの根。炎症を抑え、解熱作用を発揮します。湿熱を取り除く作用があり、湿熱による下痢にも効果があります。
人参:消化吸収の働きをよくする
ウコギ科オタネニンジンの根。日常、口にするニンジンはセリ科のニンジンで、漢方で使用されるものと異なります。補気剤といい、強力に気を補う作用があります。胃腸の働きをよくし、吸収能力を高めます。
大棗、生姜、甘草;胃薬
栝楼仁:肺の熱をとる
カラスウリの種子。胸の痰飲を除き、肺を潤し、去痰作用があります。
効果のまとめ
柴胡、黄芩、栝楼仁で熱を冷まし、肺の熱をとります。人参、大棗、生姜、半夏で胃腸の消化吸収をよくし、弱っている身体の調子を整えます。このような構成から咳、咳の胸痛を改善します。
似た漢方薬との違いは?
・麦門冬湯と柴陥湯の違いは?
麦門冬湯も咳によく使用される漢方薬です。麦門冬湯の性質は「潤す」ことです。そのため咳でも乾いた感じ、痰が絡むとき、乾燥が伴うときに麦門冬湯は使用されます。
・柴朴湯と柴陥湯の違いは?
2つの漢方薬の頭の文字に「柴」の文字があるようにどちらにも小柴胡湯が配合されています。
柴陥湯は小柴胡湯と小陥胸湯を合わせたもの(柴陥湯=小柴胡湯+小陥胸湯)。
柴朴湯は小柴胡湯と半夏厚朴湯と合わせたもの(柴朴湯=小柴胡湯+半夏厚朴湯)。
そのため柴陥湯は胸痛、咳がキーワードになるのに対し、柴朴湯は半夏厚朴湯が配合されているため、のどのつまり、のどの違和感、不安感がキーワードになります。
・麻杏甘石湯、五虎湯と柴陥湯の違いは?
麻杏甘石湯、それに痰切りの桑白皮を加えた五虎湯も咳によく使用されます。こちらは咳が強く、喘鳴があるときなどに使用されます。
方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
医療用ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ73 7.5g(3包)中には、、、
日局サイコ 5.0g
日局ハンゲ 5.0g
日局オウゴン 3.0g
日局タイソウ 3.0g
日局ニンジン 2.0g
日局オウレン 1.5g
日局カンゾウ 1.5g
日局ショウキョウ 1.0g
カロニン 3.0g
医療用メーカーでの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)での使用される生薬量を比較してみましたが、クラシエでは販売されていませんでした。コタローの方がツムラに比べてショウキョウの量が0.2g少ないだけで生薬量に大きな違いはありませんでした。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているもの、市販に手に入るものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
救心漢方
救心製薬がつくっている漢方薬です。アマゾンで検索したところこの1社だけしか見つけられませんでした。配合されている生薬量をみると、医療用のツムラと同じ量が使用されています。
「体力中等度以上で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振で口が苦く、舌に白苔がつき、強いせきが出てたんが切れにくく、ときに胸痛があるものの次の諸症:せき、胸痛、気管支炎」と効能効果もあり、咳がおさまらないときには服用できます。