四物湯
血虚といわれる状態のときに使用される代表的な漢方薬です。血虚というのは血という栄養が不足することで、髪や皮膚に潤いがなくなる、眼精疲労、こむらがえり、顔色がよくないという状態があらわれます。温清飲、芎帰膠艾湯、当帰飲子など四物湯から派生した処方も多くあり、四物湯を理解していれば他の処方も理解しやすくなります。
四物湯がどういう使われ方しているのか、どういう研究があるのか調べてみました。
当帰芍薬散加地黄(エキス製剤だと当帰芍薬散+四物湯)にて不妊症、慢性湿疹に効果があった事例が報告されています。不妊に使用されることもあります。https://ci.nii.ac.jp/naid/130006338103
アトピーの方に対して、四物湯もしくは温清飲を服用してもらった時のかゆみなどの変化を調べた研究です。https://ci.nii.ac.jp/naid/130005163119
こむら返りに対しての研究です。こむら返りには通常は芍薬甘草湯を用いますが、甘草の量が多いため、偽アルドステロン症という副作用のリスクがあります。四物湯には甘草が含まれないため、そういった副作用もなくこむら返りに効果がある報告もあります。
https://ci.nii.ac.jp/naid/130005108247
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症:産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、冷え症、しもやけ、しみ、血の道症」と記載があります。
何が入っているの?
四物湯には地黄、芍薬、川芎、当帰の4つの生薬が配合されています。
地黄:補血作用
コマノハグサ科のアカヤジオウの根のこと。強い滋潤作用があり、身体の乾きに使われます。血虚の方に補血剤として使用されます。
芍薬:補血作用
芍薬は花で有名なシャクヤクの根を使用しています。芍薬は鎮痙作用でよく使用されますが、ここでは補血作用の生薬として使用されています。
当帰:補血作用、血流改善
セリ科トウキの根。補血作用があり、血行を促進し、冷えを緩和します。生理不順の方に使用され、妊婦の方には安胎作用があります。
川芎:血流改善
セリ科センキュウの根茎。四物湯では血流を改善するために配合されています。また気を発散し、風邪による頭痛を治すために葛根湯加川芎辛夷に配合されています。
効果のまとめ
四物湯に配合されている4つの生薬は血を補い、血虚に対応したものです。血虚の方に使用する漢方薬の基本骨格となっています。
ほかの漢方薬との違いは?
温清飲と四物湯の違いは?
温清飲は四物湯に黄連解毒湯を合わせたものです(温清飲=四物湯+黄連解毒湯)。黄連解毒湯は熱、炎症を抑える作用があるため、熱をもった湿疹などに温清飲が使用されます。
芎帰膠艾湯と四物湯の違いは?
芎帰膠艾湯は四物湯に艾葉、阿膠、甘草を足したものです(芎帰膠艾湯=四物湯+艾葉、阿膠、甘草)。艾葉、阿膠は止血として働き、芎帰膠艾湯は出血がある場合に使用されることが多いです。
当帰飲子と四物湯の違いは?
当帰飲子は四物湯とベースとし、かゆみなどの皮膚疾患に効く生薬が加えられたものとなっています。乾燥があり、かゆみがあるときには当帰飲子がよく使用されます。
当帰芍薬散と四物湯の違いは?
当帰芍薬散、四物湯もどちらも血虚のときに使用される漢方薬です。当帰芍薬散は血虚だけでなく、水毒にも効果があります。顔色が悪く、生理不順、冷え性、浮腫みの傾向があるときは当帰芍薬散がいいです。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ71 7.5g(3包)中には、、、
日局ジオウ 3.0g
日局シャクヤク 3.0g
日局センキュウ 3.0g
日局トウキ 3.0g
医療用のメーカーの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)で使用されている生薬の量を比較してみました。どのメーカーも生薬は同じ比率で、同じ量が使用されていました。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているもの、市販で手に入るものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
マツウラの漢方薬
1日量でトウキ:1.5g、シャクヤク:1.5g、センキュウ:1.5g、ジオウ:1.5gと医療用の半分の量になっています。四物湯は市販ではほとんと種類がないようです。
髪や皮膚に潤いがなくなる、眼精疲労、こむらがえり、顔色がよくないという状態、血虚の方に使用される四物湯です。