真武湯
下痢やめまいにつかわれることの多い真武湯です。真武湯には附子という体の裏側から温める生薬が入っており、温めることで下痢や水の巡りを改善し、めまいにつかわれます。
もともとは『傷寒論』に記載のある漢方薬です。
『傷寒論』での使われ方↓
「太陽病発汗、汗出不解、其人仍発熱、心下悸、頭眩、身瞤動、振振欲倒地者、真武湯主之」
この条文では腎陽虚による水滞証を説明してあります。水毒症なので苓桂朮甘湯と症状がかぶるところがあります。心下悸、頭眩(めまい)、ふらふらして地面に倒れようとするのは溢れた水飲が上焦、頭へ影響を及ぼしていることがわかります。苓桂朮甘湯は上焦・中焦の陽虚によるものでしたが、真武湯は腎陽虚による水毒症です。腎は生命エネルギーの根本となるので段階としてはかなり重いです。発汗したのに発熱がみられるのは、気力が満ちているように感じますが、この場合の発熱はかなり陽気が衰弱しているため、腎が熱を保持することができなくなり、表へ上がってきていることによる発熱です。腎陽虚による水毒証のときは真武湯を使います。腎陰虚による水毒証であれば猪苓湯です。
真武湯は茯苓・芍薬・白朮・生姜・附子の5薬から構成されています。附子にて腎の陽気を補い、茯苓・白朮にて利水し、過剰な水分を捌きます。生姜にて温中去湿、芍薬にて収斂し、陽気を内へ戻し、全身へ巡らせます。
効能又は効果は?
コタローの添付文書には「冷え、けん怠感が強く、めまいや動悸があって尿量減少し、下痢しやすいもの。慢性下痢、胃下垂症、低血圧症、高血圧症、慢性腎炎、カゼ。」と記載があります。
何が入っているの?
真武湯は附子・茯苓・芍薬・白朮・生姜の5薬から構成されています。
真武湯=苓桂朮甘湯―桂枝+芍薬・附子
附子:温陽利水
附子は腎陽を補う生薬です。簡単にいえば陽気を補い、身体の奥を温める生薬です。身体を奥から温めることで水がめぐり、下痢に効果を発揮し、めまいに効果を発揮します。
芍薬:利水
芍薬は収斂する生薬といわれています。真武湯においては附子の力が外側に発散しないように内側へ返します。滞っている水を体内の引っ張り、利小便します。
茯苓・白朮・生姜:利水健脾
茯苓・白朮は利水とともに健脾し、生姜も行水に走ります。
効果のまとめ
真武湯は附子にて腎陽を補い、身体の奥から温めることで水滞を解き、冷え、下痢、めまいに効果を発揮します。
添付文書には「冷え、けん怠感が強く、めまいや動悸があって尿量減少し、下痢しやすいもの。慢性下痢、胃下垂症、低血圧症、高血圧症、慢性腎炎、カゼ。」と多様な症状に効果を発揮します。それらに共通しているのは腎陽虚による症状ということです。漢方においての水のめぐり方は蒸気機関に例えることができます。水を石炭の火力で温め、蒸気にします。その蒸気の力によってピストンが働き、機関車が動きます。まずは十分な火力がないと動くことができないのです。火力である腎陽が虚すると水を巡らせることができなくなります。その結果として水の停滞の症状がでることがあります。火力である腎陽を補うのが附子です。そう考えると真武湯が胃腸疾患、胃腸虚弱症、慢性下痢、慢性腎炎などの効能効果があるのも理解しやいです。水の巡りには腎が重要になるので「腎は水を主る」といいます。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ30 7.5g(3包)中には、、、
日局ブクリョウ 4.0g
日局シャクヤク 3.0g
日局ソウジュツ 3.0g
日局ショウキョウ 1.5g
日局ブシ末 0.5g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手2社(ツムラ、コタロー)の生薬量を比較してみました。ブシの量はコタローの方が多く、ショウキョウの量ではツムラの方が多くなっています。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
JPS製薬
クラシエは医療用の6割ほどの生薬量になっています。それでも附子の量は医療用のツムラよりも多くなっています。こちらは錠剤タイプなので粉が苦手な方でも飲みやすくなっています。
サンワロンS顆粒
上記のJPS製薬のものと同じ生薬量になっています。
下痢、めまい、冷えには真武湯