小建中湯
小建中湯の効能効果は?
ツムラの添付文書には「体質虚弱で疲労しやすく、血色がすぐれず、腹痛、動悸、手足のほてり、冷え、頻尿および多尿などのいずれかを伴う次の諸症:小児虚弱体質、疲労倦怠、神経質、慢性胃腸炎、小児夜尿症、夜なき」と記載があります。
小建中湯の特徴は?
小建中湯は虚弱な方の子供につかる漢方薬です。
小建中湯には気血を調える働きがあり、また膠飴という甘味の生薬も入っているため、お子さんでも服用しやすい漢方薬です。
小建中湯には人参などは入っていませんが、桂枝と芍薬にて気血の働きを整え、膠飴にて気を補うのを助ける構成になっています。
シンプルな処方ですが、営衛を整えることで、胃腸の働きも整います。
胃腸は身体の土台であり、胃腸が整うことで、あらゆるほかの病態の異常も改善していきます。
小建中湯には人参・黄耆は入っていませんが、桂枝・芍薬にて営衛を和し、膠飴にて優しく脾胃を補います。その結果として、脾胃が安定します。
小建中湯の出典は?
『傷寒論』
傷寒、陽脈濇、陰脈弦、法当腹中急痛、先與小建中湯。不差者、小柴胡湯主之。傷寒二三日、心中悸而煩者、小建中湯主之
『傷寒論』
小建中湯は『金匱要略』の虚労病編に記載があるように脾胃が虚した状態に使用される漢方薬で、子供にもよく使用される漢方薬の1つです。
陽脈濇から気血不足、陰脈弦から肝経の少陽病であることがわかります。
肝(木)の影響は脾(土)へあらわれやすく(木剋土)、お腹が痛むという症状としてあらわれています。
その状態のときに小建中湯をつかっても効果がなければ小柴胡湯をつかいなさい、とあります。
まず小建中湯で膏油を温め、血に凝滞がなくなれば痛みは癒えます。
痛みが癒えないときは、膏油の血分が通利しても膜網の微細な管竅が通利せず、陽気がでられないため小柴胡湯を与え、陽気を疎通します。
また傷寒して2,3日のときに動悸がするのは虚弱体質であり、先天の本が不足しており、気血が不足しているためです。そのような場合は小建中湯で補脾建中し、気血不足を補います。
『金匱要略』
「婦人腹中痛、小建中湯主之。」
『金匱要略』婦人雑病
「男子黄、小便自利、当與虚労小建中湯」
『金匱要略』黄胆病
虚労裏急、悸、衂、腹中痛、夢失精、四肢痠疼、手足煩熱、咽乾口燥、小建中湯主之。
『金匱要略』血痺虚労病篇
『金匱要略』では小建中湯は3回もでてきます。
血痺虚労病篇の小建中湯をみてみましょう。
虚労病で、陰陽両虚の状態になっています。
陽気が不足すると裏急・腹中痛・四肢痠疼します。
陰虚にて手足煩熱・咽乾口燥・悸・衄・夢失精が生じます。
陰陽両虚にて夢失精となります。
虚労による気血両虚のときは小建中湯を用います。
小建中湯には何が入っているの?
小建中湯は桂枝・甘草(炙)・大棗・芍薬・生姜・膠飴の6薬から構成されています。
小建中湯=桂枝加芍薬湯+膠飴
桂枝と芍薬にて営衛を調和します。
陰虚で乾いている状態であるため、桂枝にて内側から外へ陽気を巡らせ、営分からの陰を表へ持ち上げ、芍薬にて陽気が発散しすぎないように再び陰へ返す作用があります。
膠飴はアメのことで補中益気します。
小建中湯には強い補薬は入っていません。
膠飴にて脾胃を補い、桂枝加芍薬湯が営衛を調和することで気血を生成しやすい状況をつくることで結果的に陰陽両虚を改善するように意図されています。
小建中湯の加減法
当帰建中湯
当帰建中湯は小建中湯に当帰を加えたものです。『金匱要略』婦人産後病篇に記載のある漢方薬です。
「当帰建中湯、治婦人産後虚羸不足、腹中刺痛不止、吸吸少気、或苦少腹中急、摩痛引腰背、不能食飲。産後一月.日得服四.五剤為善、令人強壮宜。」
産後の虚労病について説明しています。出産後は必ず気と血が足りない状態になっています。気血の不足、つまり『金匱要略』の虚労病の状態に近いといえます。肝血不足から、脾へ影響があり、肝脾不和で腹痛が生じ、腎まで影響がでると腰痛がでます。産後の虚労病には小建中湯に当帰を足した当帰建中湯を使います。
当帰建中湯=小建中湯+当帰
小建中湯にて虚労病に対応し、出産後の血虚に当帰を加えることで対処しています。
黄耆建中湯
黄耆建中湯は小建中湯に黄耆を加えたものです。『金匱要略』血痺虚労病篇に記載のある漢方薬です。
「虚労裏急、諸不足、黄耆建中湯主之。」
小建中湯の次に記載があるのが黄耆建中湯です。小建中湯の条文を踏まえ、さらに“諸不足”と記載があります。小建中湯の証よりもさらに虚した状態であれば黄耆を加えなさいとなっています。
黄耆建中湯=小建中湯+黄耆
黄耆は補気薬として有名ですが、人参のように気の量を増やすのではなく、三焦に入ることで気を全身に届ける作用を主としています。
小建中湯の医療用のメーカーごとの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)の生薬量を比較してみましたが、扱いがあるのはツムラとコタローでした。
コタローでは膠飴が20gとなっており、ツムラの膠飴10gと比べ、倍量になっています。
小建中湯の市販薬のおすすめ
小建中湯の市販薬のなかで一番生薬量が多いのは、小建中湯「クラシエ」でこちらがおすすめです。
次に生薬量が多いのは小建中湯「ツムラ」です。