抑肝散加陳皮半夏
不眠、イライラ、精神不安に使用される抑肝散加陳皮半夏です。認知症の周辺症状を抑える抑肝散に陳皮・半夏が加わったものです。認知症に関係なく、不眠、イライラ、精神不安があればつかえる漢方薬です。抑肝散に陳皮・半夏が加味されているので、脾胃の湿をさばきます。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症」と記載があります。
何が入っているの?
陳皮・半夏・釣藤鈎・柴胡・当帰・川芎・白朮・茯苓・甘草の7薬から構成されています。
抑肝散加陳皮半夏=抑肝散+陳皮・半夏
釣藤鈎:熄風
釣藤鈎は急迫的なイライラ、痙攣の症状があるときの重要な生薬です。急に生じるイライラ・不安は内風といわれ、風をいなします。
柴胡:疏肝解鬱
柴胡にて鬱滞している気を条達します。日本においては疎肝といえば柴胡が代表生薬となっています。イライラや精神症状を緩和します。
当帰・川芎:養血行気
当帰・血を養う生薬です。肝血が不足していると、イライラ・不安の肝風を生じやすくなります。当帰にて養血し、肝血を補い、内風を予防します。川芎は血中の気薬ともいわれ、血の巡りと気の巡りを改善します。
白朮・茯苓・甘草:健脾
白朮・茯苓・甘草の健脾作用にて気血をつくりやすくする土台を固めます。白朮・茯苓は利水作用があり、水飲の上逆がめまい、イライラ・不安に関連することも多いため、それを防ぎます。
陳皮・半夏:祛痰飲
陳皮・半夏の組み合わせは二陳湯に使われており、痰飲を取り除きます。四君子湯に陳皮・半夏が加わり、六君子湯になるように湿をため込みやすい日本に向いている生薬です。
効果のまとめ
抑肝散加陳皮半夏は不眠、イライラ、精神不安に幅広くつかわれる漢方薬です。イライラ、不安の急迫的な症状を釣藤鈎で防ぎ、柴胡いて疏肝解鬱。当帰・川芎にて血を養うことで肝血を養い、肝風が動じるのを予防します。白朮・茯苓・甘草にて利水と健脾を兼ねます。さらに陳皮・半夏が加わることで身体にため込みやすい痰湿をさばきます。抑肝散よりも陳皮・半夏が加わった抑肝散加陳皮半夏の方が日本、ご年配の方に適しています。
ほかの漢方薬との違いは?
イライラ・不安で用いられる代表的な漢方薬に抑肝散(加陳皮半夏)、柴胡加竜骨牡蛎湯、加味逍遙散があげられます。それらの違いについて説明します。
抑肝散(加陳皮半夏)
イライラ・精神不安の代表方剤です。釣藤鈎にて熄風し、柴胡にて疎肝します。
柴胡加竜骨牡蛎湯
柴胡加竜骨牡蛎湯には疎肝の柴胡と竜骨・牡蛎にて気を鎮めます。気を降ろす生薬数を考えると柴胡加竜骨牡蛎湯の多く、イライラ、不眠の症状が強ければ抑肝散よりも柴胡加竜骨牡蛎湯の方がオススメです。
加味逍遙散
加味逍遙散はイライラのときの漢方薬のなかで一番多く血分に配慮した構成になっています。そのため更年期のときの代表方剤として加味逍遙散がよく使用されます。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ54 7.5g(3包)中には
日局ハンゲ 5.0g
日局ソウジュツ 4.0g
日局ブクリョウ 4.0g
日局センキュウ 3.0g
日局チョウトウコウ 3.0g
日局チンピ 3.0g
日局トウキ 3.0g
日局サイコ 2.0g
日局カンゾウ 1.5g
医療用のメーカーごとの違いは?
ツムラ、クラシエ、コタローで比べてみました。クラシエ、コタローでは白朮がつかわれているところ、ツムラでは蒼朮がつかわれていました。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
クラシエの漢方 漢方セラピー
医療用の半分の生薬量です。顆粒タイプも錠剤タイプもあり、飲みやすいほうを選ぶことができます。
イライラに抑肝散加陳皮半夏