頚椎症

頚椎症

頚椎症について考えたいと思います。中国ではどういった考えがされているのか調べてみました。

目次

原因

日本脊髄外科学会では“年齢が進むと(40-50歳代以降)、この椎間板や頚椎が少しずつ変形し、脊柱管の中に含まれている脊髄や神経根が次第に圧迫されるようになってきます。これが頚椎症(頚部脊椎症)と呼ばれるものです。”と説明しています。

症状

症状としては手のしびれ、麻痺、進行すると上肢を自由に動かしづらくなる、などがあります。

要因

しびれの症状があることからも古典における痺症に分類されます。

気血不足・肝腎虧損

虚弱体質、気血不足であると腠理が空疎になり、外邪が侵入しやすくなります。邪を追いだすことができなければ、風寒湿熱邪が徐々に深入し、頸項筋骨血脈に至り、留恋します。そのような方が中年になると衛気営血が弱り、肝腎が徐々に衰え、筋骨が脆弱になり、血脈が壅滞すると頚椎症も発症しやすくなります。

外邪入侵

体質が充分にしっかりしていても長い間、寒湿邪を受けるとそれらが混ざり合い、時間の経過とともに蓄積し、頚椎症となります。あるいは体質虚弱者が過労になると外邪侵入しやすくなり、発症します。

外傷及び労損

頚部の外傷によって、一部分の経脈気血が瘀滞不通になります。物理的に頚部が長時間圧迫され、損傷の状態が累積していくと慢性的な労損となり、気血失和となり、経脈が不通となります。血瘀痰聚が累積することで肝腎の督脈にまで及び、病邪は侵入し、難治となります。

要点

実と虚

病期の初期は虚に乗じて風寒湿熱邪が入ることで起こることが多く、邪実が主となります。それが反復し、徐々に進行していくと経絡が邪によって長期的壅阻され、営衛不行、痰湿があつまり、脈絡瘀阻、痰瘀互結となります。病が久しくなると深入し、気血虧耗、肝腎虚損、筋骨失養、痰瘀諸邪を追い出すことができなくなり、正虚邪実の証となります。あるいは正虚が主のとき、邪実が主のときもあります。

体質

その人の体質によって大きく影響されます。

陽虚で虚胖型、面色淡白あるいは黄暗、多汗悪風、労に耐えることができず、小便清長、大便溏薄、舌胖大、舌質淡白苔、虚脉。そういう人は風寒の邪に感じやすく、痰湿を内生しやすい。

陰血不足であれば、身体痩せ、肌は削がれ、面色蒼黒、あるいは頬骨紅く、潮熱、盗汗、夜眠多夢、大便干結、舌痩舌質紅、脈細数、化火し熱邪の影響を受けやすい。

病邪

風性のものは軽揚で変化しやすく、遊走性の痛みが多く、痛みが定まることはない。寒邪は凝滞しやすく、頭痛部位は定まり、拘緊、疼痛激烈、寒によって悪化し、熱によって軽くなる。あるいは日中は軽く、夜に重たくなり、舌苔白、脈緊。湿邪は粘滞し、重たく貼りつき、下肢を中心とした病態となります。舌苔白膩、脈濡。熱性のものは急迫し、津液が焼かれ、筋脉は失養し、拘攣しやすくなる。痰邪は滑膩で関節経脈に留まり、筋骨に浸入し、経気を閉塞し、発病すると麻痺、あるいは疼痛し、難治。その陰邪の性質から寒によって重たくなり、熱によって緩くなる。陽気が一時的に宣通すれば麻痺、疼痛は軽くなるが、また戻ります。

痰瘀互結

頚椎症の中後期の状態の1つで、痰瘀互結し、血脈を閉塞し、痛み、ふらつき、痩せ、半身不随、痙攣があらわれ、時間の経過とともに難治となる。


治法

痰瘀交阻型

肩首痛みが時間の経過とともに難治となり、あるいは痛みが激烈になり、あるいは麻痺し、あるいは麻痺によって痛みも感じず、あるいは手足に力が入らず、片側の手足が痩せ、舌質淡暗、あるいは瘀斑あり、白膩苔、脈細滑あるいは渋。

治法 活血化瘀 祛痰通路

方剤 身痛逐瘀湯加減(桃仁・紅花・当帰・五霊脂・地竜・川芎・香附子・羌活・秦艽・牛膝・蜈蚣・全蝎)

桃仁・紅花・当帰・五霊脂:活血化瘀

地竜・全蝎・蜈蚣:祛痰通絡

川芎・香附子:理気活血

羌活・秦艽:祛風湿

牛膝:強壮筋骨

加減法 身痛逐瘀湯加減は活血化瘀・化痰通絡が強力で、体力もある程度ある、疼痛が比較的強く、比較的体力のある痰瘀交阻型につかいます。もし体力がやや虚弱で痰瘀の邪が盛んで疼痛も激しい場合はこの処方でも良好な結果になるが、元気を損傷しやすいため、そのようなときは疼痛がある程度緩和されたあとに紅花、五霊脂、蜈蚣を減らし、党参、鶏血籐を加え益気養血します。体力が虚弱であれば顔に華がなく、脈微であれば慎重に用いるべきである。

湿火流筋型

頸、肩が痛み、しびれ、麻痺し、口苦、咽干、渇不欲飲、肢体煩熱、面目紅赤、小便短赤、大便不爽、あるは裏急後重、舌質淡紅、黄膩苔、脈弦あるいは滑数

治法 清熱利湿 舒筋活絡

方剤 清肝利湿湯(羚羊角・竜胆・茵蔯・山梔子・黄柏・蚕砂・薏苡仁・滑石・桃仁・姜黄・桑枝)

羚羊角:清熱平肝・袪風通絡

竜胆・山梔子・茵蔯・黄柏:清熱燥湿

薏苡仁・滑石:清熱利湿

蚕砂・姜黄:化湿通絡

桑枝:走肩肘通経絡

桃仁:活血化瘀

加減法 便秘のときは大黄をもって通便、胃脘脹痛のあるときは竜胆、蚕砂を除き、厚朴枳殻を加え、行気止痛します。

気血不足型

発病してから久しく、長期間癒えず、その痛みがやや和らぎ、あるいはそれを繰り返し、麻痺して動かなくなる。顔色に華が少なく、舌質淡、脈弱。

治法 益気養血 活血通絡

方剤 黄耆桂枝五物湯加減(黄耆・桂枝・当帰・生姜・白芷・芍薬)

加減法 気虚が強ければ黄耆を大量に加える。陽虛の傾向があれば熟附子を加える。疼痛が甚だしければ袪風通絡の姜黄・威霊仙・防風を加える。血虚があれば養血の何首烏・川芎・鶏血籐を加える。肝腎陰虚があれば肝腎強筋骨の桑寄生・杜仲・牛膝・天門冬・山茱萸を加える。

陽虛痰阻型

めまい、悪心、あるいは四肢も麻痺、無力、疼痛、体型虚煩、手足が冷たく、小便清長、大便溏薄、腰膝のだるさ。舌質淡胖、白膩苔、脈細滑、強く按じると無力。

治法 温陽益気化痰利水

方剤 真武湯加減(熟附子・桂枝・生姜・茯苓・白朮・芍薬)

附子:温補腎陽・補命門之火

芍薬:酸甘化陰・通利小便

白朮・茯苓:健脾利水

生姜:解附子之毒

桂枝:温陽・温化膀胱し、附子の働きを助ける

以上から温腎壮陽利小便・祛水湿し、生痰の源を絶つ。

加減法 めまいのあるときは益気の人参、駆風化痰の天麻を加える。肢体無力のときは督脈陽虚であるため大補元陽の人参・鹿茸・黄耆・巴戟天を加え、峻補元陽する。肩・肘の痛みがあり、夜になると耐えられない激痛があるときは熟附子・乾姜・巴戟天を加え、壮陽祛寒する。

肝腎陽虛

肩頸の麻痺、しびれ、手足肌肉の萎縮、四肢拘緊、歩行することも順調にできず、口干、体削、面色潮紅、心煩失眠、口苦咽干、肌膚甲錯、大便干結、小便短渋、舌紅絳、苔無あるは少ない、脈細。

治法 滋腎養肝 活血通絡

方剤 六味地黄丸加味(熟地黄・山薬・山茱萸・牡丹皮・茯苓・沢瀉・当帰・桑枝・絡石藤・田七・丹参)

熟地黄・山薬・山茱萸・牡丹皮・茯苓・沢瀉:六味地黄丸 滋陰養肝腎

当帰:養血

丹参・田七:活血化瘀

桑枝・絡石藤:通絡止痛

以上から養陰潤筋骨、活血にて通経絡、標本兼治。

加減法 陰虚陽亢、肝風内動にて四肢拘緊にて歩行もしづらいときには牡丹皮・当帰・沢瀉・田七を去り、石決明・牡蛎・桑葉・釣藤鈎・菊花・全蝎を加え、平肝止痙する。

痰火上擾型

めまい、頭痛、胸悶煩熱、悪心欲嘔、口苦、舌質紅、黄膩苔、脈数滑。

治法 清熱化痰

方剤 温胆湯加味(竹茹・茯苓・半夏・枳実・陳皮・天南星・羚羊角・黄芩・白僵蚕)

温胆湯は清熱化痰の方剤で、天南星を加え燥湿化痰、羚羊角にて清熱涼血、白僵蚕にて化痰通絡、枳実にて行気化痰します。これらをまとめることで清熱化痰を強め、めまいを伴なう痰熱の治療に効果的である。

加減法 面赤唇紅、口渇、舌質紅、黄厚苔のときは黄連・竜胆を加え、清熱平肝。頭頸の痛みがあれば全蝎を加え通絡化痰止痛します。

風寒痺阻型

肩頸疼痛初期、一部分の肌肉が拘緊、上肢に至ると痛みは逃げ、痛むところが固定されることなく、舌質淡紅、白苔、脈浮緊。

治法 袪風散寒 養血活血

方剤 疎風活血湯(羌活・防風・白芷・葛根・升麻・紅花・桃仁・当帰・川芎・芍薬・甘草)

羌活・独活・防風・白芷:袪風散寒

葛根・升麻:解肌発表

当帰・川芎・芍薬・紅花・桃仁:養血活血(風を治すには先に血を治す。血がめぐれば風は自ずと消える)

甘草:調和諸薬

加減法 加齢にて肝腎が不足しているときには熟地黄・何首烏・肉従蓉・鹿衔草を加える。面色に華がなく、気短、手足が冷え、陽気不足のときは熟地黄・巴戟天・鎖陽・人参を加え、温陽散寒します。

 

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