便秘・便秘がち

便秘といって人によって排便の周期はそれぞれ異なります。

日本内科学会の定義では「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とし、男性の約2%、女性の約5%の方が便秘といわれています。

大腸が狭窄しているなどの器質的な便秘の場合は、便が通りづらい腸の形となっているため大腸内視鏡検査などで検査する必要があります。

ここではそういった場合以外の便秘について説明しています。

Q1
便秘の頻度は?
目次

目次

  1. 便秘に関わる臓腑
  2. 便秘のタイプ
  3. ときどき便秘でそのときだけ飲む方
  4. 残便感があり、くり返し腹痛を伴う便秘の方
  5. コロコロ便、便が固く、スムーズに排出できない方
  6. ストレスを感じる便秘がちの方に
  7. ぼせ、月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安もある便秘の方
  8. 脂肪太り、肥満、のぼせがある方
  9. 疲れやすくて、手足のほてり、口渇、頻尿のある方
  10. 手足の冷え、お腹の冷え、頻尿、夜間尿のある方
  11. 体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えている方



便秘に関わる臓腑

大腸

“伝導之官”ともいわれます。小腸で栄養を吸収したあとの残りから水分を吸収し、それを外に伝導し、排便となります。

肺と便秘は関連がないようにも見えますが、漢方において大腸と肺は表裏関係になっています。

肺気がめぐらなければ大腸も機能を失調します。

また肺は水道を主る臓であるため、水分の調整に深く関わっています。

肺気がめぐらなければ大腸が便をスムーズに出すことができず、便の水分のバランスが崩れます。

脾胃

脾胃は漢方において広い意味で消化吸収する臓腑を示しています。

胃に熱をもったり、脾の働きが悪ければ便秘となります。

『傷寒論』では“脾約”という言葉があり、胃の熱によって便が乾燥し、便秘となっている症状について記載もあります。脾約のときは麻子仁丸が使われています。

漢方において肝は気のめぐりと筋肉をスムーズに動かすことに関わっています。

試験の前や、仕事でのプレゼン前のストレスのかかる状況で下痢・軟便になった経験はありませんか?

ストレスによって肝気が鬱滞してしまうと脾に影響を与え、下痢・軟便となることがあります。

反対に気の鬱滞によって、脾の働きが悪くなり、便秘になることがあります。そういった場合は気のめぐりを改善する必要があります。

腎は“二便を主る”とあり、小便・大便の働きに深くかかわっています。

腎は水を主る臓であり、腎によって水のめぐりが悪ければ全身の乾燥にもつながり、ほてり、口渇、便の乾燥につながります。

反対に水のめぐりが悪いことで頻尿にも関与します。腎は年齢とともに衰える臓でもあり、加齢とともに身体の乾燥、頻尿があることは想像できると思います。

便秘のタイプ

便秘のタイプを2つに分けると、実証の便秘と虚証の便秘になります。

実証の便秘

実証というのは身体で過剰になっているものがある状態のことをいいます。便秘はお腹に便が過剰に溜まっている状態と捉えることができます。

実証の便秘はお腹に詰まっているものが原因であるため、それを瀉すことが一番の解決策です。清熱行気をもって、便を出します。

虚証の便秘

虚証というのは身体に足りていないものがあることを意味します。

気によって筋肉がきちんと動くことができます。つまり気が充足していなければ、便を肛門まで送り、排出することができません。血・水が足りていなければ、便が乾燥し、便秘となります。

虚証の便秘は足りていないものを補うことで結果的に排便につながります。

実証はいわゆる下剤の攻めるタイプのお薬を使う必要があります。

それに対し虚証の便秘は気血水が足りず、便をスムーズに排出できていないため、補うことが治療の鉄則です。

 

同じ便秘でも治療法が異なるため症状・体質の理解が重要になります。

ときどき便秘でそのときだけ飲む方

普段から便秘がちではなく、ときどき便秘で困る方には大黄甘草湯が適しています。

大黄甘草湯は大黄と甘草の2種類の生薬だけが入っています。
大黄にて腸を刺激し、排便を促します。
甘草は甘味にて大黄の苦味を緩和し、甘味にて気を補うことで大黄の瀉下作用によって気が傷つけられるのを抑えます。

大黄甘草湯はシンプルな構成ですが、お通じを良くする漢方薬です。
ときどき便秘になる方におすすめです。

普段から便秘がちなときは別の漢方薬をおすすめします。
なぜなら普段から便秘がちなときは背景に別の原因があると考えられるからです。
気の鬱滞や、血の鬱滞、もしくは水・気が足りていないときなどは別の漢方薬の方が適しています。

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残便感があり、くり返し腹痛を伴う便秘の方

お腹がすっきりせず、腹痛もあるときは肝と脾の働きが連動できていないことが考えられます。

肝は細かい筋肉の動きをコントロールしており、肝が正常に機能しなければ筋肉が拘急し、腹痛・お腹が緩くなります(足で同じことが起こればこむら返りになるイメージです)。

お腹の筋肉がスムーズに動くことができていないため、便も排出しきれず残便感となります。
桂枝加芍薬大黄湯には芍薬が多く入っており、肝の働きを平らにしてくれ、腹痛とともに便秘を緩和します。

残便感があり、くり返し腹痛を伴う便秘には桂枝加芍薬大黄湯が適しています。

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コロコロ便、便が固く、スムーズに排出できない方

便が乾燥し、コロコロ、固くなっているときは腸が乾燥し、便秘になっています。
コロコロ便、乾燥、固くなっている便秘には麻子仁丸(マシニンガン)が向いています。

麻子仁丸の麻子仁は麻のタネのことです。
植物のタネには油分が多く含まれており、腸を潤し、通便を助けてくれます。
ほかにも杏仁というアンズのタネも入っており、こちらもタネの油分にて腸を潤します。
杏仁は肺気をめぐらせる作用もあり、肺とその裏の大腸の気の動きも改善します。
枳実・厚朴は大承気湯にも入っている組み合わせで詰まっている気を下に動かします。
芍薬にて平肝し、排便をスムーズにします。

麻子仁丸は麻子仁・杏仁が入り、腸を潤す作用が強く、乾燥した便の排出を助けてくれます。
コロコロ便、便が固い、スムーズに排出できないときには麻子仁丸が適しています。

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ストレスを感じる便秘がちの方に

漢方の考えではストレスがかかると肝の気をめぐらせる作用が失調し、肝と脾が連動できず便秘となります。

仕事やテスト、試験などのストレスから気がめぐらないときは肝気鬱結と表現します。
肝気鬱結からイライラ・不安の症状もあります。
気がめぐらないため、胃腸の気もめぐらなくなり、便秘となります。

そういった気の鬱滞からくる便秘には気を動かす漢方薬を使う必要があります。
仕事でのストレスなど気の鬱滞からくるイライラ・不安の精神症状や肩こり、便秘には大柴胡湯が適しています。

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のぼせ、月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安もある便秘の方

お腹に血の鬱滞からくる便秘には桃核承気湯が向いています。

お腹に血の鬱滞があることで生理不順、月経困難症、生理痛になります。
血の鬱滞は気のめぐりも邪魔することになり、のぼせ、精神不安にもつながります。

桃核承気湯には桃仁が入っています。
桃仁はモモのタネで生理不順、月経困難、生理痛の原因となっている血の滞りを解きます。

のぼせ、月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安もある便秘は血の滞りが原因なので、桃核承気湯を使います。

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脂肪太り、肥満、のぼせがある方

生活習慣病による肥満、むくみ、便秘には防風通聖散が向いています。
肥満、むくみ、便秘の原因の1つは身体に水・食べ物・熱など余分なものがたくさん溜まっていることです。

 

防風通聖散には18種類の生薬が入っています。
防風通聖散は発汗剤・利尿剤・下剤を合わせたような構成になっており、身体に溜まっている余分な水分を表から出し、尿して出し、お腹に溜まっている便も出すことで体重減少に寄与します。

肥満、むくみ、のぼせに便秘があるときは身体に余計な気・水・便が溜まっているため、それらを追い出すために防風通聖散が適しています。

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疲れやすくて、手足のほてり、口渇、頻尿のある方(陰虚秘)


手足のほてり、口渇、頻尿があるときは腎陰が不足し、身体全体が乾いている恐れがあります。
身体を潤すために六味丸を使います。

腎陰というのは身体の深いところにある水のことです。
腎陰が乾くことで手足のほてり、口渇となり、結果として便も乾燥し、便秘になります。
腎陰は水の流れをコントロールしているため、制御できなくなると頻尿、寝ているときのトイレ、残尿感にも関連しています。
こういった状態はご年配の方に多く見られます。

手足のほてり、口渇、頻尿や寝ているときにトイレ行くなどの腎陰が不足の症状があるときは六味丸が適しています。身体の乾燥の結果、便も乾燥し、便秘になっているときは六味丸が潤してくれます。

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手足の冷え、お腹の冷え、頻尿、夜間尿のある方(腎虚秘)

陽気(身体を温める力)が弱くなると手足の冷え、お腹の冷えとなります。
陽気の衰えは気や水のめぐりにも影響を与え、頻尿・夜間尿となります。
陽気が不足した結果、腸が活発に動くことができなると便秘になる恐れがあります。
そのようなとき、陽気を補うために八味地黄丸を使います。

八味地黄丸には附子・桂皮という温める生薬が入っています。
附子・桂皮で身体の奥から温め、気・水のめぐりを改善することから、八味地黄丸はよく頻尿・夜間尿に使われます。
こういった状態はご年配の方でよくみられます。

手足の冷え、お腹の冷え、頻尿、夜間尿のあるなどの陽気が不足しているときには八味地黄丸が適しています。陽気が不足し、気・水のめぐりが悪くなることで、お通じがうまくでないときには八味地黄丸が陽気を補ってくれます。

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体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えている方(気虚秘)

気が充足していなければ身体は元気に動きません。
胃腸の働きが弱り、腸を思い通りに動かすことができず、便を出そうと思ってもうまく排便できなくなります。
気の不足を補うときには補中益気湯を使います。

補中益気湯は補剤の漢方薬の代表的なものです。
気を補い、全身にめぐらせることで胃腸が弱っているところを助けてくれます。
補中益気湯が直接便通を促すのではなく、気が足りていないことで胃腸が弱り、腸を思い通りに動かすことができず、結果的に生じている便秘に使うことができます。

体力虚弱で、元気がなく、胃腸のはたらきが衰えた結果、腸を思っているように動かすことができず、排便しようと思っても、うまく排便できないときには補中益気湯が適しています。

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