普段はそんなことないのに、生理の時に下痢・軟便になることはありませんか?
生理時は通常の気の流れと異なり、生理の方に多くのエネルギーが注がれ、体力を消耗することから胸の張り、腰痛、下痢・軟便、頭痛などの諸症状があらわれます。
目次
生理に関連する臓
肝
肝というのは漢方において細かい気血のめぐりを担当しています。“女子は肝をもって先天となす”“女子は血をもって本となす”というように生理や妊娠に肝血が重要になります。肝血が不足すると、血が溜まるのに時間がかかるため生理が遅れやすく、生理持続期間も短くなる傾向があります。
肝は気を疏泄・条達し、気の流れにも関与します。肝による気のめぐりが悪ければ気が鬱滞し、イライラ・不安になりやすくなります。生理の時にイライラ・気分が落ち込むなどの精神的な症状は肝の影響です。生理のときに血を消耗することで肝が疲れやすくなり、その肝が精神をコントロールしていることからも生理に肝の働きが重要なことがわかります。
生理時にイライラ・不安になっても自分を責めるのではなく、肝の働きが悪いせいだと思ってください。
腎
“腎は先天をつかさどる”というように腎は生命エネルギーを蔵しています。そのため腎が衰えることで男性はインポテンツ、女性は生理不順、不妊となります。“腰は腎之府”というように、腎と腰もつながりがあります。生理の時に腰痛もあるときは腎が弱っているかもしれません。腎は身体を温める腎陽をもっているので、身体を温める作用もあります。
脾
漢方において脾は消化吸収機能全般をあらわしています。脾が強ければ食べ物から栄養を十分に吸収することができます。つまり脾が機能していれば、肝血が不足し、腎精が弱ってきても栄養を補給することができます。反対に脾が弱ければ栄養を吸収できず、普段からお腹が緩くなりやすくなり、肝・腎や他の蔵も弱ってきます。
生理の時に胸の張り・イライラもある方
下痢・軟便と一緒に胸の張りやイライラもともなう場合は肝の働きが過剰になっている恐れがあります。
胸の張り、イライラもあるときは気が鬱滞しているときです。気の鬱滞が脾に影響を与えることで下痢・軟便となります(木克土)。
気の鬱滞からきている下痢・軟便には加味逍遙散が適しています。
本によっては痛瀉要方と書いてあるときもありますが、日本にはなく、加味逍遙散が向いているのではないかと考えます。
痛瀉要方は白朮・芍薬・防風・陳皮・芍薬から構成されています。芍薬は平肝の生薬で下痢・生理の腹痛を緩和し、防風にて軽く気を発散する構成となっています。加味逍遙散には同じ芍薬が入り、防風の代わりに柴胡にて気を発散します。
ここでポイントになるのが、加味逍遙散を使う方は普段は少し便秘傾向のある方が適しています。便秘の傾向があるということは普段から気の鬱滞があるということです。普段は気の鬱滞から便秘になりやすいが、生理時は気の鬱滞が行き過ぎるため、下痢・軟便になっています。
肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のある、冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症などのどれか症状があてはまるときは加味逍遙散が適しています。
お腹、手足の冷え、生理時の腰痛、生理血の色も薄い方
生理のときは多くのエネルギーを消耗します。身体を温める力(陽気)が弱っているときはさらに陽気を消耗してしまいます。身体を温める力が弱くなることからお腹・手足が冷え、腎虚からも腰痛となり、力が弱っているため生理血の色も薄くなります。
身体を温めるために人参湯か附子理中湯が適しています。
人参湯には乾姜が入っています。乾姜というのは生姜を蒸して乾燥させ、温める力を強めたものです。
体力虚弱で、疲れやすくて手足などが冷えやすい、胃腸虚弱、下痢、胃痛、腹痛のときはお腹を温める人参湯が適しています。
普段からお腹が緩い、生理血の色も薄い方
脾は消化吸収に関連しています。脾の力が普段から弱いときは軟便傾向、胃もたれ、消化不良となります。
脾の力が弱いところに、生理によってエネルギーを消耗することで、さらに脾が衰え、生理時の下痢・軟便となります。
脾を補い、胃腸の力を強くするため六君子湯が適します。
六君子湯には人参が入り、気を強く補い、下痢・軟便を緩和します。
体力中等度以下で、胃腸が弱く、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすい、胃腸虚弱、胃下垂、消化不良のときは六君子湯が適しています。