麻子仁丸
便秘のときに使用される麻子仁丸です。よくつかわれる大黄甘草湯よりも腸を潤す作用があるため、コロコロした便に適しています。
麻子仁丸は『傷寒論』で脾約というわれる胃熱・脾陰虚のときに記載されています。
麻子仁丸の『傷寒論』での使い方↓
「趺陽脈浮而濇、浮則胃気強、濇則小便数。浮濇相打、大便側硬、其脾為約、麻子仁丸主之」
趺陽の脈は脾胃の状態を反映する脈です。その脈が浮であることから陽気が活発なこと、濇であることから陰虚が伺えます。胃気は盛んであるのに脾気は陰虚であり、弱まっている状態です。脾の働きが弱いため水分を吸収する間もなく、落ちていくため小便の回数は増えます。胃の陽気が強過ぎるため乾燥し、水分も吸収できないため、便は硬くなっていきます。胃強脾邪、胃熱・脾陰虚の状態を“脾約”といい、機能を取り戻してもらうために、脾の水分・脂を補うために麻子仁丸を用います。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「便秘」と記載があります。
何が入っているの?
麻子仁・芍薬・枳実・大黄・厚朴・杏仁の6薬から構成されています。
大黄:瀉下
大黄の成分はセンノシドの名で知られます。瀉下作用があり、便秘のときによく使用されます。
麻子仁:潤腸通便
麻子仁は“仁”の文字があることからも植物のタネを意味しています。麻子仁は麻の種子です。種子はオイルをたくさん含んでおり、腸を潤し、便通を改善します。
杏仁:宣肺
杏仁はアンズの種子であり、麻子仁と同じく、オイルを豊富に含み、潤腸通便します。さらに杏仁は宣肺する作用があり、肺気を巡らせます。五臓六腑の関係から肺と大腸は表裏の関係にあり、肺気は巡ることで大腸の気も巡るようになります。
枳実・厚朴:理気除満
枳実・厚朴の組み合わせは大承気湯にも入っており、厚朴にて下気除満し、枳実の破気作用にて排便を助けます。
芍薬:柔肝
芍薬にて柔肝し、腹痛を緩和します。
効果のまとめ
麻子仁丸は腸を潤しながら、排便を促す漢方薬です。大黄にて瀉下、麻子仁にて潤腸。、杏仁にて肺・大腸を宣肺し、枳実・厚朴にて除満し、大黄の働きを補います。
便秘で使われるほかの漢方薬との違いは?
便秘でつかわれる漢方薬に大黄甘草湯、麻子仁丸、潤腸湯があります。
大黄甘草湯
大黄甘草湯は大黄と甘草の2薬から構成されています。大黄の瀉下作用と甘草の甘味にて脱水を防ぎます。一時的な便秘であれば大黄甘草湯がオススメです。
麻子仁丸
麻子仁丸は瀉下作用の大黄に、厚朴・枳実の理気除満にては便を助け、麻子仁・杏仁にて潤腸通便し、芍薬にて筋肉の緊張と平じます。麻子仁丸は大黄甘草湯を強化し、腸を潤す作用をもったものです。コロコロした便には麻子仁丸が適しています。
潤腸湯
潤腸湯=麻子仁丸―芍薬+当帰・地黄・桃仁・黄芩・甘草
上の構成からも潤腸湯は麻子仁丸よりも腸を潤す生薬が増えていることがわかります。
大黄甘草湯<麻子仁丸<潤腸湯という順番で瀉下作用、潤腸作用が強くなります。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ126 7.5g(3包)中には、、、
日局マシニン 5.0g
日局ダイオウ 4.0g
日局キジツ 2.0g
日局キョウニン 2.0g
日局コウボク 2.0g
日局シャクヤク 2.0g
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
クラシエの漢方(漢方セラピー)
医療用のおおよそ半分程度の生薬量になっています。錠剤タイプであり、粉が苦手な方でも服用しやすくなっています。
JPS
医療用のおおよそ7割程度の生薬量になっており、市販されているなかでは生薬量はかなり多いです。生薬量で選ぶならこちらがオススメです。また錠剤タイプでもあり、粉が苦手な方でも飲みやすくなっています。
コロコロした便には麻子仁丸