淫羊藿（いんようかく・イカリソウ）を食べた雄羊が百頭の雌羊と交尾しても衰えなかったところから命名されているようです。
淫羊藿（いんようかく）は市販でも滋養強壮剤として配合されているものがあります。淫羊藿は別名イカリソウの名前でも知られ、漢方でも補腎薬として使用されます。
『神農本草経』では寒性となっていますが、現在では温性とされています。
現代中医学
気味：辛・甘 温
帰経：肝・腎
効能：陽痿(インポテンツ)、早泄(早漏)、腰酸腿痛、四肢麻痺、半身不随、神経衰弱、健忘、耳鳴り、めまいなどに応用される
古典
気味：辛 寒＜神農本草経＞
帰経：肺 腎＜葉天士解本草＞
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淫羊藿の働きついて『神農本草経』と葉天士がそれを解説した『葉天士解本草』から考えたいと思います。
『神農本草経』
気寒。味辛。無毒。主陰痿絶傷。茎中痛。利小便。益気力。強志。
『葉天士解本草』
淫羊藿気寒。稟天冬令之水気。入足少陰腎経。味辛無毒。得地潤澤之金味。入手太陰肺経。気味降多於升。陰也。
陰者宗筋也。水不制火。火熱則筋失其剛性而痿矣。淫羊藿入腎而気寒。寒足以制火而痿自癒也。
絶傷者。陰絶而精傷也。気寒益水。味辛能潤。潤則陰精充也。
茎。玉茎也。痛者火鬱于中也。熱者清之以寒。鬱者散之以辛。所以主茎中痛也。
小便気化乃出。辛寒之品。清粛肺気。故利小便。
肺主気。腎統気。寒益腎。辛潤肺。故益気力也。気力既益。内養剛大。所以強志。蓋腎蔵志也。
↓にて『神農本草経』と『葉天士解本草』の条文を並べ、働きについて考えます。
気寒。味辛。無毒。
淫羊藿気寒。稟天冬令之水気。入足少陰腎経。味辛無毒。得地潤澤之金味。入手太陰肺経。気味降多於升。陰也。
淫羊藿は気寒にて冬令の水気をもち、少陰腎経に入ります。味は辛味で太陰肺経に入ります。
主陰痿絶傷。
陰者宗筋也。水不制火。火熱則筋失其剛性而痿矣。淫羊藿入腎而気寒。寒足以制火而痿自癒也。絶傷者。陰絶而精傷也。気寒益水。味辛能潤。潤則陰精充也。
宗筋（陰茎と睾丸のこと）は陰であり、水が火を制御できなくなると火熱によって筋の剛性が失われ、痿（インポテンツ）となります。淫羊藿は気寒にて腎に入り、寒によって火を制御することで痿は癒えます。傷によって気血の流れが途絶えるときは、陰が絶することで精が損傷されます。淫羊藿の気寒によって益水し、辛味によってよく滋潤し、陰精が充足されます。贊育丹、二仙湯につかわれ、市販でも滋養強壮剤につかわれているものもあります。
茎中痛。
茎。玉茎也。痛者火鬱于中也。熱者清之以寒。鬱者散之以辛。所以主茎中痛也。
陰茎と睾丸が痛むときは火鬱がなかにあります。淫羊藿の寒をもって清熱し、辛味をもって鬱を散じます。よって陰茎、睾丸の痛みにつかわれます。
利小便。
小便気化乃出。辛寒之品。清粛肺気。故利小便。
小便は膀胱からの気化によって排出されてます。淫羊藿は辛・寒の生薬であり、水道をつかさどる肺気を粛降することで、利小便となります。
益気力。強志。
肺主気。腎統気。寒益腎。辛潤肺。故益気力也。気力既益。内養剛大。所以強志。蓋腎蔵志也。
肺は気をつかさどり、腎は気を統べます。淫羊藿の寒によって益腎し、辛によって潤肺し、気力を益します。気力がきちんと充足され、体内が充分に養れ、腎は志を蔵しているため、強志となります。
