下痢・軟便・お腹がゆるい

こちらでは普段からお腹が緩い、軟便・下痢になりやすいときについて説明します。

 

大腸の器質的疾患、血液検査などでも問題がなく、下痢・軟便の原因がわからないときは過敏性腸症候群(IBS)といわれることも多い症状です。

Q1
どんな症状?
目次

目次

  1. 西洋医学的にみた消化吸収
  2. 漢方での消化・吸収
  3. 原因
  4. 胃腸が弱く、食欲がなく、冷たい物、食べすぎ・油もので下痢する方に
  5. お腹の冷え、手足の冷えもある下痢・軟便の方に
  6. 胸やけ、胸・みぞおちのつっかえのある下痢・軟便の方に
  7. 残便感があり、くり返し腹痛を伴う下痢・軟便の方
  8. ストレスの蓄積からくる胃痛・腹痛・不眠の方
  9. 急性胃腸炎、水っぽい下痢の方
  10. 急な腹痛のときの漢方薬



西洋医学的にみた消化吸収

漢方での消化・吸収の説明を前に西洋医学的にどう働いているのか、整理したいと思います。

:食べ物を細かくし、アミラーゼがでんぷんを分解します。

 

:胃酸、ヘプシンにてより細かく分解します。

 

十二指腸:膵臓から膵液、胆のうから胆汁が分泌され混ざり合います。膵液にはアミラーゼ、トリプシン、リパーゼが含まれ、糖質、脂質、タンパク質を分解します。胆汁にて脂肪の吸収を助けます。

 

小腸:栄養素を吸収します。小腸→門脈→肝臓へ行くルートと、小腸絨毛の乳糜管からリンパへ行くルートがあります。

 

大腸:水分、ミネラルを吸収します。腸内細菌によっても分解します。残ったものが大便として排出されます。

漢方での消化・吸収

“胃は受納を主る”といい、食べたものを受け入れる部位となります。

“胃は腐熟を主る”といい、簡単な食べ物の分解をしていることを示しています。

“胃は降を以って順となす”といい、胃から次の臓腑へ分解したもの下向きへ送っていることです。嘔吐・吐き気、逆流性食道炎は降りるべき胃の働きが失調しているため生じていいると捉えることができます。

漢方において脾は西洋の脾”臓”と異なり、広い意味では消化吸収機能のことをあらわし、狭い意味では膵臓をあらわしているといわれています。

“脾は運化を主る”といい、食べたものを吸収し、全身へ栄養を送っていることを示しています。

脾の働きが失調すると食べ物を消化吸収することができず、下痢・軟便となります。

胆は中精之腑・中正之官ともいいます。精汁を貯蔵しており、精汁とは胆汁のことです。精汁によって脾の運化を助けるのは現在の考え方と同じです。

小腸

“小腸は受盛之官、化物出づ”といい、胃・十二指腸から降りてきたものを受け入れる腑であり、物を化する、つまり吸収し、栄養にしていることをあらわしています。

小腸の働きは“清濁の泌別を主る”とあり、栄養となる清らかなものと、糟粕(残りかす)の濁を分けています。現在でも小腸は主に栄養を吸収する腑であることは同じ認識です。

大腸

“大腸は伝導之官、変化出づ”といい、大腸は糟粕(残りかす)を伝導し、外に糞便として排出します。

下痢・軟便に関わるほかの臓腑

以上の流れからも胃・脾・胆・小腸・大腸の働き(広い意味での脾)が正常に機能しないと、消化・吸収されず、下痢・軟便となります。

それ以外にも肺は水道を通調するため、下痢・軟便という水の偏在に肺はつながりがあります。

肝と脾は働きを密にしており、肝の疏泄が正常でなければお腹にも影響を与えます。例えば緊張するとお腹が緩くなるなど、肝が活発になりすぎると脾に悪い影響を与えます。

腎は“二便を主る”とあり、小便・大便の働きに深くかかわっています。腎陽がなければ脾胃が温められず、働きません。腎陽がなければ水のめぐりが悪くなり、下痢・軟便となります。

 

以上のことからも下痢・軟便を考える場合、脾、肺・肝・腎が重要になってきます。

原因

原因にはいくつかあり、何かが過剰になっている、内側で虚している、熱、冷えによるものかあります。

実証:過剰になっていたり、外側から悪いものが侵入してきているときは、病気の勢いは強く、お腹が張り、腹痛でもお腹を押さえられるのをイヤがり、お腹を下すと楽になり、小便もあまり出ません。

虚証:下痢・軟便になるまでの進行が比較的ゆっくりで、腹痛でも押さえされると痛みがマシになり、小便はよくでて、口渇もありません。

熱証:便がやや黄色を帯びた褐色で、臭いのあるベットリとした便、肛門に熱感があり、小便は短く、赤い、口が乾き、冷たい水を好む

寒証:便は薄く、水のようで、腹痛でお腹を温めると楽になり、寒さをイヤがり、手足が冷える

胃腸が弱く、食欲がなく、冷たい物、食べすぎ・油もので下痢する方に

胃腸の弱さ、食欲がないこと、食べすぎ・油もので下痢・軟便になるときは脾の力が弱っているかもしれません。

 

脾というのは漢方において消化・吸収能力機能全般のことを示しています。

脾の力が弱っていると、食欲がわきにくくなります。ちょっと食べすぎたり、冷たいものを食べたりしただけで消化・吸収できないため下痢・軟便となります。

 

脾が弱いと消化・吸収ができないだけでなく、痰湿(余分な水)を身体から出すこともできなくなります。余分な痰飲によって、胃腸の働きは一層弱くなり、下痢・軟便の連鎖となります。

 

参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)には胃腸の働きを良くする生薬が多く入っています。

人参によって脾の働きを高めます。

白朮・茯苓によって余分な水を追い出し、健脾します。

山薬、薏苡仁、白扁豆、蓮肉によって胃腸の働きを整え、止瀉(下痢を緩和)します。

 

参苓白朮散は胃腸の働きを高め、下痢の原因となる水湿を追い出し、止瀉作用のある生薬が多く入っているため、疲れやすくて食欲がない、ちょっと食べ過ぎたり、油ものを食べたりすると下痢をするような慢性的な下痢の方に適しています。

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お腹の冷え、手足の冷えもある下痢・軟便の方に

人参湯を簡単に言うと、お腹を温める漢方薬です。

 

下痢・軟便のときにお腹が冷えていたり、手足が冷えていたりするときは身体の温める力が弱く、下痢・軟便となっています。

 

人参湯で重要になる生薬は乾姜です。日本でいう乾姜というのは、生姜を湯通しまたは蒸して乾燥させ、生姜の温める力を高めたものです。

 

人参湯には人参で胃腸の働きを改善するだけでなく、生姜よりも温める作用の強い乾姜が入り、お腹をしっかり温めてくれます。お腹の冷え、手足の冷えもある下痢・軟便のときには人参湯が向いています。

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胸やけ、胸・みぞおちのつっかえのある下痢・軟便の方に

胃は下向きにものを送っています。胃の働きが悪くなり、胃に熱がこもると胃は下向きベクトルへ機能しなくなります。胃が上向きに働くと、胃液の逆流・胸やけ・吞酸・胃酸の上昇などが起こります。

 

胃と脾は表裏の関係になっており、胃と脾は連動して機能することで食べ物を消化・吸収します。胃に熱がこもり、脾がそれを冷すことができないときは脾胃の協調がうまくいっていません。胃の熱、脾の冷えがせめぎ合うことで、胸・みぞとちのつっかえ、下痢・軟便となります。

 

半夏瀉心湯には黄連が入り、胃の熱をとってくれます。

乾姜が入り、お腹を温めてくれます。

黄連の苦味と乾姜の辛味にて辛開苦降し、胸・みぞおちのつっかえをとり、お腹の調子を正常に戻します。

 

半夏瀉心湯は黄連・乾姜が入ることで、胸・みぞおちのつっかえ、胸やけ・胃酸の逆流のある方の下痢・軟便に適しています。半夏瀉心湯は寒熱のバランスのとれた漢方薬であるため、冷えの症状があっても、熱感の症状があっても使うことができ、使いやすい漢方薬といえます。

残便感があり、くり返し腹痛を伴う下痢・軟便の方

お腹がすっきりせず、腹痛もあるときは肝と脾の働きが連動できていないことが考えられます。

 

肝は細かい筋肉の動きをコントロールしており、肝が正常に機能しなければ筋肉が拘急し、腹痛・お腹が緩くなります(足で同じことが起こればこむら返りになるイメージです)。

 

お腹の筋肉がスムーズに動くことができていないため、便も排出しきれず残便感となります。

桂枝加芍薬湯には芍薬が多く入っており、肝の働きを平らにしてくれ、腹痛とともに下痢・軟便を緩和します。

 

残便感があり、くり返し腹痛を伴う下痢・軟便には桂枝加芍薬湯が適しています。

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ストレスの蓄積からくる胃痛・腹痛・不眠の方

漢方においてストレスは肝鬱などと表現されます。肝鬱が積もり積もってくると肝から脾へ悪い影響を与えます(木克土)。漢方でも2000前からストレスとお腹の調子に関係があることがわかっていました。

 

ストレス(肝鬱)によって自律神経の乱れ不眠、イライラ・不安となり、ストレスが胃腸に波及し、胃痛、胸やけ、胃酸の逆流、胸・みぞおちのつっかえ、下痢・軟便となります。

 

四逆散には柴胡・枳実・芍薬という気に働く生薬が多く入っており、気の鬱滞を解いてくれます。

 

ストレスからくる自律神経の乱れ、不眠、イライラ・不安、胃痛、胸やけ、胃酸の逆流、下痢・軟便のあるときは四逆散が適しています。

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急性胃腸炎、水っぽい下痢の方

急性胃腸炎などの邪の侵入によって身体の水のめぐりが悪くなり嘔吐・下痢となっています。

邪を追い出し、水のめぐりを改善するためには五苓散が使われます。

さらに胃の調子も悪ければ五苓散と平胃散のあわさった胃苓湯が使われます。

夏かぜによる下痢・軟便には藿香生気散が使われます。

急な腹痛のときの漢方薬

急にお腹が痛くなるときありますよね?

ストレスや緊張など原因はさまざまあると思います。

 

そういった急な腹痛の時には芍薬甘草湯が適しています。

 

芍薬甘草湯はこむら返りに使うことで有名な漢方薬です。

こむら返りというのは足の筋肉が急に収縮し、痛みが生じる状態です。

そういったときに芍薬甘草湯が筋肉の拘急を緩和し、足のつりを治します。

 

急にお腹が痛む時はそれと同じことがお腹でも起こっています。

 

肝の筋肉をスムーズに動かす作用が正常に機能せず、お腹の筋肉を過剰に収縮させ、腹痛が生じます。

 

芍薬甘草湯によって筋肉をゆるめ、お腹の痛みを緩和します。

急にくる腹痛には芍薬甘草湯が向いています。

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