胃が弱い、胃もたれ、消化不良、機能性ディスペプシア

胃が弱くなったと感じることはないですか?

今回は胃の働きを改善するお薬について説明します。

胃の疾患に胃炎、胃潰瘍、胃がんなどありますが、ここでは胃カメラ検査をしてもそういった異常がみられなかったときについて考えていきたいと思います(最近では検査しても異常は見つからないのに胃もたれ、胃の痛みなどの症状が続くことを機能性ディスペプシアといいます)。

Q1
気になる症状は?
目次

目次

  1. 胃酸分泌抑制薬とは?
  2. 消化運動改善薬とは?
  3. 漢方での消化・吸収
  4. 胸やけ、みぞおちのつかえた感じ、胃弱、消化不良の方
  5. 胃腸が弱い、消化不良、食欲不振の方
  6. 胃・お腹がキリキリ痛む、胃もたれ、冷えるとが悪くなる方
  7. 胃腸が弱く、慢性的につづく下痢もある方

現在よく使われるお薬

胃薬は大きく胃酸分泌抑制薬と消化運動改善薬の2つにわけられます。

胃酸分泌抑制薬とは?

胃酸の過剰分泌によって胃粘膜が傷ついたり、胃痛が生じたりすることがあります。

胃酸の出すぎが原因なので胃酸分泌を抑える薬が使われます。

車で例えると、胃酸が出すぎているのはアクセルが過剰にかかっている状態です。お薬で強制的にブレーキをかけてあげることでアクセルが空ぶかしになるのを防ぎます。

有名なものにファモチジン(ガスター)、ランソプラゾール(タケプロン)、エソメプラゾール(ネキシウム)、タケキャブ(ボノプラザン)などがあります。逆流性食道炎でもよく使用されます。

胃酸を抑える強さ ボノプラザン>エソメプラゾール、ランソプラゾール>ファモチジン

これらの薬は胃酸を強く抑えるブレーキの役割となります。

しかし人間の体はよくできており、本来は胃酸を出すアクセルがかかっているはずなのに、お薬によってブレーキが踏まれていると身体はどんな反応をするでしょうか?

出ているべき胃酸が分泌されていないため、より過剰にアクセルを踏み胃酸を出そうとします(高ガストリン血症)。それでもお薬によって強力なブレーキがかかっているため、体の中ではアクセルが踏み込まれていても胃酸の分泌はされません。

お薬をずっと飲んでいれば問題ありませんが、アクセルを踏み切った体の状態でブレーキとなるお薬をやめるとどうなるでしょうか?

ブレーキがなくなると、より一層過剰に胃酸が分泌されることが予想できます。この流れでお薬をやめれなくなるスパイラルに陥ります。

実際に胃酸分泌薬抑制の添付文書を見ると、タケプロンの効能効果には“胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制”とあり、胃もたれ・胃弱・消化不良などの文字はなく、潰瘍という胃粘膜のただれがあるときに飲むべき薬だとわかります。

消化運動改善薬とは?

モサプリド(ガスモチン)、アコチアミド(アコファイド)、イトプリド(ガナトン)、ドンペリドン(ナウゼリン)、メトクロプラミド(プリンペラン)、トリメブチン(セレキノン)などがあります。

胃腸の働きは副交感神経によって支配されています。細かい作用機序はそれぞれ異なりますが、副交感神経の働きを活発にすることで胃腸の動きを改善します。



漢方での消化・吸収

“胃は受納を主る”といい、食べたものを受け入れる部位となります。

“胃は腐熟を主る”といい、簡単な食べ物の分解をしていることを示しています。

“胃は降を以って順となす”といい、胃から次の臓腑へ分解したもの下向きへ送っていることです。嘔吐・吐き気、逆流性食道炎は降りるべき胃の働きが失調しているため生じていいると捉えることができます。

漢方において脾は西洋の脾”臓”と異なり、広い意味では消化吸収機能のことをあらわし、狭い意味では膵臓をあらわしているといわれています。

“脾は運化を主る”といい、食べたものを吸収し、全身へ栄養を送っていることを示しています。

脾の働きが失調すると食べ物を消化吸収することができず、下痢・軟便となります。

胆は中精之腑・中正之官ともいいます。精汁を貯蔵しており、精汁とは胆汁のことです。精汁によって脾の運化を助けるのは現在の考え方と同じです。

小腸

“小腸は受盛之官、化物出づ”といい、胃・十二指腸から降りてきたものを受け入れる腑であり、物を化する、つまり吸収し、栄養にしていることをあらわしています。

小腸の働きは“清濁の泌別を主る”とあり、栄養となる清らかなものと、糟粕(残りかす)の濁を分けています。現在でも小腸は主に栄養を吸収する腑であることは同じ認識です。

大腸

“大腸は伝導之官、変化出づ”といい、大腸は糟粕(残りかす)を伝導し、外に糞便として排出します。

以上の流れからも胃・脾・胆・小腸・大腸の働き(広い意味での脾)が正常に機能しないと、消化・吸収できません。

消化・吸収に関わるほかの臓腑

肝と脾は働きを密にしており、肝は筋肉の細かい動きをコントロールし、腸管の動きに関わっています。肝の疏泄が正常でなければ胃腸は連動しません。

腎は“胃者,腎之関也”といい、腎は胃酸の分泌をコントロールしています。また脾胃は腎陽の陽気によって温められ、動くことができるので腎陽のエネルギーも不可欠です。

胸やけ、みぞおちのつかえた感じ、胃弱、消化不良の方

胃は下向きにものを送っています。胃の働きが悪くなり、胃に熱がこもると胃は下向きベクトルへ機能しなくなります。胃が上向きに働くと、胃液の逆流・胸やけ・吞酸・胃酸の上昇などが起こります。

胃と脾は表裏の関係になっており、胃と脾は連動して機能することで食べ物を消化・吸収します。胃に熱がこもり、脾がそれを冷すことができないときは脾胃の協調がうまくいっていません。>胃の熱、脾の冷えがせめぎ合うことで、胸・みぞとちのつかえ、下痢・軟便となることもあります。

半夏瀉心湯には黄連が入り、胃の熱をとってくれます。
乾姜が入り、お腹を温めてくれます。
黄連の苦味と乾姜の辛味にて辛開苦降し、胸・みぞおちのつかえをとり、胃腸の調子を正常に戻します。

半夏瀉心湯は黄連・乾姜が入ることで、胸・みぞおちのつかえ、胸やけ・胃酸の逆流のある胃弱の方に向いています。半夏瀉心湯は寒熱のバランスのとれた漢方薬であるため、冷えの症状があっても、熱感の症状があっても使うことができ、使いやすい漢方薬といえます。

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胃腸が弱い、消化不良、食欲不振の方

漢方の考えでは脾胃が消化吸収をつかどっています。脾胃の働きが弱ければ消化吸収ができず、消化不良となります。六君子湯は脾胃の気を補ってくれる代表的な漢方薬です。

六君子湯に消化管運動亢進作用、食欲増進作用があることは研究で解明されており、漢方薬のなかでも効果発現の作用機序がきちんとわかっています。

六君子湯には人参が入っており、気を強く補ってくれます。
陳皮・半夏という生薬も入っていることから六君子湯は日本人に向いた漢方薬といわれています。

日本は湿度が高く、ジメジメしており、その影響を身体が受けます。六君子湯には陳皮・半夏という湿気を追い出す生薬が入っています。胃に水が溜まってチャポチャポとなる、水が多い状態には六君子湯が向いています。

胃腸の弱い、消化不良、食欲不振によく使用されるのが六君子湯です。人参が入った漢方薬で気を補う漢方薬として代表的なものになります。胃腸の弱い方で、食欲がなく、疲れ易く、貧血性で手足が冷えやすい方の胃炎、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛には六君子湯です。

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胃・お腹がキリキリ痛む、胃もたれ、冷えるとが悪くなる方

冷えがお腹に入り込むことで胃腸の調子が悪くなることがあります。
冷えが原因であればお腹を温める安中散を使います。

大正漢方胃腸薬や太田漢方胃腸薬は安中散がベースになったものです。
CMで見たことがある人もいるかもしれません。

安中散は温める生薬が多く入っています。
桂皮・延胡索・茴香・縮砂・良姜はお腹を温めてくれます。
牡蛎は胃酸を中和し、むかつきを緩和します。

安中散には温める生薬と胃酸を中和する生薬が入っていることからキリキリとお腹が痛む、冷えると胃腸が痛くなるときは安中散が適しています。

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胃腸が弱く、慢性的につづく下痢もある方

胃腸の弱さ、食欲がないこと、食べすぎ・油もので下痢・軟便になるときは脾の力が弱っているかもしれません。

脾というのは漢方において消化・吸収能力機能全般のことを示しています。

脾の力が弱っていると、食欲がわきにくくなります。ちょっと食べすぎたり、冷たいものを食べたりしただけで消化・吸収できないため下痢・軟便となります。

脾が弱いと消化・吸収ができないだけでなく、痰湿(余分な水)を身体から出すこともできなくなります。余分な痰飲によって、胃腸の働きは一層弱くなり、下痢・軟便の連鎖となります。

参苓白朮散には胃腸の働きを良くする生薬が多く入っています。
人参によって脾の働きを高めます。
白朮・茯苓によって余分な水を追い出し、健脾します。
山薬、薏苡仁、白扁豆、蓮肉によって胃腸の働きを整え、止瀉(下痢を緩和)します。

参苓白朮散は胃腸の働きを高め、下痢の原因となる水湿を追い出し、止瀉作用のある生薬が多く入っているため、疲れやすくて食欲がない、ちょっと食べ過ぎたり、油ものを食べたりすると下痢をするような胃腸が弱い方に適しています。

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