茵蔯蒿は清利湿熱、利胆退黄の効能から、黄疸尿少、湿温暑湿、湿瘡搔痒に応用されます。
茵蔯蒿
気味:苦 涼
帰経:脾・胃・肝・胆
茵蔯蒿の入った漢方薬は?
茵蔯は茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散、一加減正気散、鎮肝熄風湯などにつかわれています。
茵蔯蒿の働きとは?
茵蔯蒿は『金匱要略』では茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散につかわれ、黄疸につかう代表的な生薬です。
香りも良く、黄疸に対する重要な生薬ですが、黄疸がないと使えないわけではありません。
『温病条弁』の一加減正気散の条文をみてみましょう。
「三焦湿鬱、昇降失司、脘連腹脹、大便不爽、一加減正気散主之」
『温病条弁』
一加減正気散は、湿熱にて中焦の気機が阻滞され、上下の昇降ができず、お腹が張ったり、軟便ですっきりしない状態を呈している状態です。
中焦の湿熱を解くために一加減正気散をつかいます。
黄疸がなくても、湿熱があれば茵蔯蒿は使うことができます。
お腹に湿熱があれば下痢になり、皮膚に湿熱があればかゆみになります。
茵蔯蒿は利胆の働きがあり、黄疸に対する重要な生薬です。黄疸がなくても、中焦に湿熱がくすぶっているときにも使えます。
清熱除湿・利胆退黄
茵蔯蒿は『金匱要略』に記載のある茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散に入っていることからも黄疸に使う代表方剤であり、清熱除湿の生薬です。
黄疸は現代ではビリルビンの血中濃度が非常に高くなったときに生じ、皮膚や目が黄色くなることをいいます。
『金匱要略』の書かれた1800年前にビリルビンの存在は知られてないので、この時代の黄疸という概念は現代と異なっています。
当時は“湿”が燻ることによって黄疸が発症していたと考えられていたようです。
湿でも湿熱鬱滞の“実熱”から発症するものと、脾虚寒湿からの“虚寒”から生じるもののパターンもあります。
『金匱要略』では黄疸のいくつかの種類が紹介されています。
『金匱要略』には黄疸につかう漢方薬として茵蔯蒿湯、茵蔯五苓散の他にも梔子大黄湯、大黄硝石湯の記載があります。
中国と日本では茵蔯蒿の使用部位が異なります。
日本では秋の果穂(かすい)といわれる穂状にみえるほど集まっている花をつかっていますが、中国では幼苗をつかっており、綿状にみえることからも綿茵蔯といわれます。
綿茵蔯は春に収穫する幼苗であり、肝の季節である春の性質を受けています。
黄疸というのは胆汁の鬱滞した病態、つまり肝胆の病気で、肝の季節は春です。
肝胆の病気には春の性質をもった綿茵蔯の方が効果が勝るといわれるのは納得ができますね。
葉天士解本草
気味:苦 平・微寒
帰経:肺・膀胱・心
葉天士解本草
気平。微寒。味苦。無毒。主風湿寒熱邪気。熱結黄疸。久服輕身益気。耐老。面白悦。長年。
茵陳気平微寒。稟天秋平冬寒金水之気。入手太陰肺経、足太陽寒水膀胱経。味苦無毒。得地南方之火味。入手少陰心経。気味俱降。陰也。
風為陽邪。湿為陰邪。風湿在太陽。陽邪発熱。陰邪発寒也。其主之者。気寒清熱。味苦燥湿也。
心為君火。火鬱太陰。則肺不能通調水道。下輸膀胱。而熱與湿結矣。太陰乃湿土之経。所以蒸土色於皮毛而成黄疸也。其主之者。苦平可以清心肺。微寒可以解湿熱也。
久服則燥勝。所以身軽。平寒清肺。肺主気。所以益気。心主血。味苦清心。清則血充華面。所以耐老。而面白可悦也。心為十二官之主。心安十二官皆安。所以長年也。
気平。微寒。味苦。無毒。
茵陳気平微寒。稟天秋平冬寒金水之気。入手太陰肺経、足太陽寒水膀胱経。味苦無毒。得地南方之火味。入手少陰心経。気味俱降。陰也。
主風湿寒熱邪気。
風為陽邪。湿為陰邪。風湿在太陽。陽邪発熱。陰邪発寒也。其主之者。気寒清熱。味苦燥湿也。
熱結黄疸。
心為君火。火鬱太陰。則肺不能通調水道。下輸膀胱。而熱與湿結矣。太陰乃湿土之経。所以蒸土色於皮毛而成黄疸也。其主之者。苦平可以清心肺。微寒可以解湿熱也。
久服輕身益気。耐老。面白悦。長年。
久服則燥勝。所以身軽。平寒清肺。肺主気。所以益気。心主血。味苦清心。清則血充華面。所以耐老。而面白可悦也。心為十二官之主。心安十二官皆安。所以長年也。