葛根湯加川芎辛夷
鼻づまりのある風邪や蓄膿症に使われる漢方薬です。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書の効能効果に「鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎」と記載があります。
何が入っているの?
この漢方薬は文字の通り葛根湯に川芎、辛夷が加わったものです。
葛根湯加川芎辛夷=葛根湯(桂枝、芍薬、生姜、大棗、甘草)+川芎+辛夷
麻黄:強い発汗作用
辛苦・温。マオウ科の植物の地上茎。強い発汗作用を持ち、桂皮と一緒に使用されることでより強い発汗作用を発揮します。ほかにも交感神経を活性化する作用があるため、咳を抑える作用もあります。利水作用(体の水のバランスを整える)もあり、関節の腫れに使用されることもあります。
葛根:筋肉を緩める、肩こり
甘辛、平。マメ科クズ(葛)の根のことです。葛根にも発汗作用があり、潤し、筋肉を緩める作用があります。肩こりでも使用されるには葛根が入っているからです。
桂皮:発汗作用
辛甘・温。シナモンの仲間ですね。桂枝茯苓丸など、桂皮の配合された漢方薬を嗅ぐとシナモンいいの香りがします。この桂皮には発汗解表作用、気を降ろす作用などがあります。発汗作用があるため、風邪ひいたときに邪を表面から追い出します。気を降ろす作用があるので桂枝茯苓丸にも使用されています。
芍薬:過剰な発汗を抑える
苦酸・涼。芍薬はきれいな花で有名なシャクヤクの根を使用しています。芍薬には筋肉や節々の痛みを抑える作用もありますが、桂枝湯では過剰な発汗を予防するために使用されています。
生姜:発汗作用、胃薬
辛・温。生姜はそのままショウガのことです。日本では乾燥させたショウガのことです。生姜には発汗作用があり、芳香性健胃薬としての作用があります。
大棗:胃薬
甘・温。ナツメの果実を乾燥させたものです。簡単にいえばドライフルーツです。大学の授業で食べましたが、おいしかったです。脾胃を補う胃薬としての作用があります。甘いものを食べると落ち着くように大棗には精神安定作用があります。
甘草:胃薬
甘・平。マメ科カンゾウの根のことです。名前の通り、この生薬は甘いです。実はお菓子の甘味料としてもよく使用されています。桂枝湯では脱水を予防し、胃薬として配合されています。この生薬にはグリチルリチン酸という抗炎症成分が入っており、咽頭痛を抑える作用もあります(桔梗湯)。
川芎:頭痛緩和、血流改善
辛・温。セリ科の植物センキュウの根茎を湯通ししたものです。気を発散し、風邪による頭痛を治します。また血流を改善するため、生理不順や生理痛などを改善する作用もあり、川芎と当帰が組むことでより効果を発揮します。当帰芍薬散は後者の作用を目的とし、配合されています。葛根湯加川芎辛夷の場合は前者の頭痛のために配合されています。
辛夷:鼻づまり改善
辛・温。モクレン科の植物コブシなどのつぼみです。鼻粘膜血管収縮作用があり、鼻づまりを治す作用があります。こちらにも感冒による頭痛にも効果があります。
効果のまとめ
葛根湯で風邪に対応しているだけでなく、さらに川芎・辛夷を配合することで頭痛や、鼻づまりがひどい方により効果を発揮します。
そのため、効能効果が「鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎」となっています。
他の漢方薬との違い
蓄膿症でよく使用される漢方薬に辛夷清肺湯があります。葛根湯加川芎辛夷との違いについて解説します。
それぞれの漢方薬が温めるタイプか、冷やすタイプが表にまとめました。
表から葛根湯加川芎辛夷は“温める漢方薬”、辛夷清肺湯は“冷やす漢方薬”というのがわかります。漢方薬では、濁っていれば熱がこもっており、白っぽければ冷めている状態だと考えられています。蓄膿症の濃い膿がでている状態では熱がこもっているため、辛夷清肺湯で冷やすのがいいかもしれません。実際、市販で蓄膿症の漢方薬で販売されているのはほとんど辛夷清肺湯が配合されています。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ2 7.5g(3包)中には、、、
日局カッコン 4.0g
日局タイソウ 3.0g
日局マオウ 3.0g
日局カンゾウ 2.0g
日局ケイヒ 2.0g
日局シャクヤク 2.0g
日局シンイ 2.0g
日局センキュウ 2.0g
日局ショウキョウ 1.0g
メーカーごとの違い
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ漢方
こちらは処方箋でもらうツムラではなく、市販で販売しているツムラの商品
医療用の半分の量の生薬しかはいっていないことがわかります。
クラシエ
こちらは錠剤タイプ!!粉が苦手な方にはこちらがおすすめです!
カッコン・マオウ各2.0g、タイソウ・センキュウ・シンイ各1.5g、ケイヒ・シャクヤク・カンゾウ各1.0g、ショウキョウ0.5gより抽出)と、こちらも半分の量になっています。
本草葛根湯加川芎辛夷エキス顆粒
生薬量が医療用の3分の2の量になっており、一般で買える漢方薬のうち、一番生薬の成分が多いです。
葛根湯に川芎と辛夷が加わることで鼻づまりのある風邪、蓄膿症、慢性副鼻腔炎に使用される漢方薬です。