気
気という言葉自体はよく聞きますよね。
元気がない、気力がある、勇気がいるなど。
漢方の世界では形のないエネルギーであり、物質のこと。
イメージしづらいと思うのでまずは気の働き・機能について解説します。
気の働き
・推動
血や水をめぐらせる能力のこと。水の流れが滞ると浮腫みますよね。その場合はもちろん水の流れが悪いのですが、水ではなく、気の流れをよくすることでも浮腫みが解消されることがあります。気の巡りをよくすることで、その流れに水が付随し、水自体の巡りがよくなるからです。気が動くことで一緒に水と血が動く働きのことを推動と表現します。
・温煦(おんく)
「気はこれを煦(あたためる)を主(つかさど)る」
気の熱源としての能力を表しています。気が不足すると冷えを感じますし、五蔵も温められず、機能失調します。
・防御
身体の表面を流れている気を“衛気”と表すのですが、衛気がバリア機能を発揮し、外邪が身体に侵入することを防いでいます。気が不足し、調子が悪いときは風邪をひきやすいというように普段の生活でも実感しますね。
・固摂(こせつ)
漏れ出ないようにする働きのこと。汗からこの働きについて説明します。漢方の世界では汗をかきやすいときは気虚と表現することが多いです。汗っかきな人は元気な人のイメージがありますが、違うのです。気が足りていないと汗をかく穴(腠理)を閉じることができないという考え方です。防已黄耆湯という漢方薬の添付文書の効能又は効果に“汗をかきやすい人で、、、”と記載されています。反対に考えると気が充分にあるときは漏れ出ないように汗がでる穴(腠理)を閉じることができます。汗だけでなく、血が漏れ出てれば出血になります。必要なときには出し、不必要なときには出ないようにするのが気の働きの1つです。
・気化
物質の転化作用のこと。気、血、津液は互いに変化することができ、気の働きによって変換されます。
冷え性の原因はさまざまありますが、ここでは気に絞って考えてみます。気の働きの1つに温煦という温める働きがあります。気が不足していると温める力が弱いため冷えて感じます。つまり気の不足、“量”の問題が冷え性の原因の1つといえることができます。しかしそれだけではありません。冷え性の要因はほかにどういうことが考えられるでしょうか。“流れ”の問題です。気が充分にあるのに冷えを感じることがあります。何らかの原因で気の流れが遮られている(さえぎられてる)ときです。気が四肢末端まで届けられず、冷えを感じます。そのような状態のときは気を補っても意味がなく、流れをよくする必要があります。『傷寒論』では四逆散が使用されています。
・気のつくられ方
気の生成は腎からはじまります。腎には生まれもった先天の精があること、また肺から降りてきた気を納める場所(納気)でもあるためです。その腎から気(腎陽)の働きによって、脾胃(現代でいうなら消化器)が活動します。脾胃にて食べ物からの気(水穀の精微)を取り込み、肺で取り込んだ清気が合わさり、気がつくられます。気の生成には脾胃だけでなく、腎も肺も関わっています。
漢方の勉強をしていると気虚という言葉を聞くと思います。気が虚している、つまり足りていないという状態です。そういった場合はどこの調子が悪いと考えられますか?たいていの場合は消化器の調子が悪く、食べ物からの吸収が悪い。だから人参が入った六君子湯や補中益気湯がいいのかなと考えがちです。実際疲れやすいときに補中益気湯が処方されているのをよく目にします。気のつくられ方の説明でもあるように気の生成は腎からはじまります。腎の陽気よって脾胃が働きます。腎が脾胃の働きに関わっています。例えるなら蒸気機関車です。水を石炭の火力で温め、蒸気にします。その蒸気の力によってピストンが働き、機関車が動きます。まずは十分な火力がないと動くことができないのです。気の生成において、脾胃だけでなく、腎も大切です。真武湯に胃腸疾患、胃腸虚弱症などの効能効果があることも納得できます。
睡眠不足などで腎は疲れるため、睡眠不足が続くと元気がなくなるものをわかりますね。食事をとらなければ元気がなくなるのも脾胃から気がつくることができなくなるので納得できます。気は脾胃、腎、肺などを経由し、つくられています。
その他のワード
「衛は下焦より出づ」
気のつくられ方でも説明しましたが、腎の先天の精から気がつくられるということです。
「衛は脈外にあり」
営気は脈中にあるのに対し、衛気は脈の外側にあります。
「(衛は)その気は慓疾滑利」
衛気は軽く、すばしっこいことを表しています。そのため脈のなかにとどめておくことができません。