化膿・じんましん・湿疹などの皮膚トラブル初期にはどんな漢方薬がいいの?【十味敗毒湯】

じんましんや湿疹などに皮膚症状において幅広く使われる漢方薬です。にきびにも使用している研究もあり、皮膚疾患全般に用いられます。薬理効果としても“ヒト由来の好中球において、”好中球遊走能及び好中球貪食能を促進した”、“活性酸素(O2-、H2O2、OH・)産生を抑制した”という報告もあります。

目次

効能又は効果は?

ツムラの添付文書には「化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、じんましん、急性湿疹、水虫」と記載があります。

何が入っているの?

独活・荊芥・防風・柴胡・川芎・桔梗・桜皮(または樸樕)・茯苓・甘草・生姜の10種類です。ツムラは樸樕を使用し、コタロー、クラシエは桜皮を使用しています。

独活:祛風寒湿

独活は袪風勝湿の生薬であり、麻黄・桂枝と異なり、燥性で湿が関連している場合につかわれます。辛味のある香りで微温にて風寒湿を追い払います。十味敗毒湯の場合は皮膚症状に使用されていますが、風寒湿によって関節痛が生じていれば独活は独活寄生湯や大防風湯として用いられ、風寒湿によって風邪のような症状がでているときには荊防敗毒散として使用されることもあります。

荊芥:袪風解表・透疹

消風散という漢方薬があることからもじんましんや急なかゆみの原因は風によるものです。消風散は“風”を消すことで強いかゆみにつかれます。荊芥は消風散にもはいっており、この十味敗毒湯でも同じように袪風・透疹することでかゆみに使用されています。

防風:散風解表

その字の通り“風の病気を防ぐ”生薬です。風を散じることで頭痛、発熱、関節痛などに使われます。大抵の袪風薬は辛・温の生薬であり、辛味にて風を発散し、温薬であるため燥性がありますが、防風は辛・“甘”・温であり、辛味と甘味を兼ねます。甘味があるため防風は燥性に偏りません。

柴胡:透表泄熱

小柴胡湯にも入っているように柴胡は邪を表に出す生薬です。十味敗毒湯は風寒湿邪が身体に停滞している状態であるため、葛根湯・麻黄湯のように麻黄や桂枝の強い発汗薬ではなく、柴胡をつかい透表します。

川芎:活血袪風

川芎は四物湯にもはいっているように活血の印象が強いですが、袪風の作用もあり、頭痛で使用される川芎茶調散にもはいっています。

桔梗:排膿

桔梗は排膿の生薬であり、排膿散及湯にも入っています。

桜皮:排膿解毒

樸樕:活血化瘀

効果のまとめ

独活・荊芥にて風寒“湿”を散じ、防風・柴胡・川芎にて風を散じるのを助け、桔梗にて排膿を助けることで風寒湿による化膿性皮膚疾患、じんましん、急性湿疹に用いられます。

ほかの漢方薬との違いは?

十味敗毒湯は、人参敗毒散という漢方があり、それの加減法の1つです。人参敗毒散というのは風寒湿によって生じた子供のかぜに使う漢方薬です。人参敗毒散の加減法には十味敗毒湯だけでなく、荊防敗毒散というのもあります。

皮膚疾患で使用される漢方薬は十味敗毒湯のほかに荊防敗毒散、消風散、黄連解毒湯、清上防風湯、温清飲、当帰飲子、桂枝茯苓丸加薏苡仁、治頭瘡一方、荊芥連翹湯、柴胡清肝湯、排膿散及湯、紫根牡蠣湯、千金内托散があります。

詳細(漢方との違い)↓

荊防敗毒散

十味敗毒湯と荊防敗毒散は名前が似ているようにどちらも人参敗毒散の派生処方です。

荊防敗毒散=十味敗毒湯―桜皮(樸樕)・生姜+羌活・前胡・枳殻

前胡にて風熱を散じ、羌活にて独活とともに風湿を発散し、枳殻と桔梗の組み合わせにて一昇一降し、肺気を通じ、痰湿をさばきます。十味敗毒よりも袪風熱・祛風寒湿の生薬が十増えているためかゆみや湿疹の症状をより強力に緩和します。

消風散

消風散もよく使用される漢方薬で、名前の通り“風”を消すことに特化した方剤です。ツムラの添付文書にも「分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)」とあり、“かゆみが強い”と記載があります。蝉退・防風・荊芥・牛蒡子にて風熱を散じ、当帰・生地黄・知母・苦参・胡麻仁・石膏にてかゆみの原因になっている血の熱をとるとともに、清熱します。

黄連解毒湯

黄連解毒湯は医療用においてはカプセル剤があるということで使いやすく皮膚科で頻用の処方です。黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子という苦味で清熱の生薬から構成されていることからも赤みが強いときに使われます。清熱の作用が強いため赤みでも鮮やかな赤みです。時間が経過し、くすんだ赤みであれば血のめぐりにも影響しているため別の漢方薬が適当と考えられます。十味敗毒湯や消風散のように熱を発散させるのではなく、黄連解毒湯は強力に熱を冷ます方剤です。何を言いたいのかというと黄連解毒湯には熱の逃げ道をつくる生薬が配合されていないため、熱に蓋をする形になり、長期服用には向いていないと考えられます。黄連解毒湯の生薬は苦寒の生薬で燥性があります。長期服用にて乾燥が進み、虚熱を生じ、熱を助長する恐れがあるので注意が必要です。

清上防風湯

清上防風湯は黄連解毒湯に風熱を散じる生薬を加味したものです。

清上防風湯=黄連解毒湯―黄柏+防風・荊芥・連翹・薄荷・川芎・白芷・桔梗・枳殻・甘草

ざっくりいえば清上防風湯は黄連解毒湯に荊防敗毒散を合わせたような構成です。黄連解毒湯でしっかり清熱し、防風・荊芥・連翹・薄荷・川芎・白芷にて風熱を散じ、桔梗・枳殻にて一昇一降し、循環をつくります。連翹・薄荷は寒性の生薬であり、風熱を発散します。白芷は温性の生薬で清上防風湯のような熱が強いときには不適に思えますが、ほかの生薬が寒性であるため、その温性が打ち消され、風熱を導いていく引経薬としてつかわれています。適応は“にきび”となっており、にきびのなかでも赤みが強いものに適しています。くすんだ色のにきびは熱よりも血のめぐりの問題になるため桂枝茯苓丸加薏苡仁などが適当です。

温清飲

温清飲は黄連解毒湯に養血の四物湯をあわせたものです。“皮膚の色つやが悪い”ときに用いられます。市販の温清飲には“皮膚がかさかさして色つやが悪く”“湿疹・皮膚炎”と記載があります。そういった疾患の1つにアトピー性皮膚炎があり、論文を検索するとアトピー性皮膚炎に温清飲をつかっている報告がいくつもあります。湿疹・炎症を繰り返すことで皮膚を掻きむしり、浸出液や血がでていきます。皮膚はどんどん血を失っていくと同時に熱がこもっていきます。温清飲は四物湯によって失われた血を補い、黄連解毒湯にて清熱することで症状に対応します。温清飲はアトピー性皮膚疾患につかうことはありますが、アトピー全般に温清飲がつかえるわけではありません。熱が強ければ、より一層熱をとる必要がありますし、浸出液が多ければ水湿を取る必要があります。“皮膚がかさかさして色つやが悪く”のときが温清飲です。

当帰飲子

当帰飲子は四物湯に風を散じる生薬をあわせたものです。

当帰飲子=四物湯+蒺藜子・防風・荊芥・何首烏・黄耆・炙甘草

当帰飲子は養血の四物湯・何首烏が構成に入っており、血を補ってくれるため、ツムラの添付文書にも適応は“冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ”とあります。風を散じる生薬は荊防敗毒散、清上防風湯にもさまざま使用されていますが、蒺藜子がはいっているのは当帰飲子だけです。当帰飲子をつかうときには血の虚が背景にあります。そのため風を散じる生薬は蒺藜子、ほかに防風・荊芥がはいっています。黄耆は三焦脂膜を養う生薬であり、腠理を調えるため托瘡生肌の生薬で、化膿した状態につかう托裏消毒飲にもはいっています。血虚で皮膚が乾燥し、かゆみがあるときは当帰飲子です。

桂枝茯苓丸加薏苡仁

桂枝茯苓丸加薏苡仁は桂枝茯苓丸にイボでよく使用される薏苡仁(よくいにん)を加えたものです。

桂枝茯苓丸加薏苡仁=桂枝茯苓丸+薏苡仁

桂枝茯苓丸は瘀血という血の滞りを改善する方剤として婦人科でよく使用されます。添付文書にも“にきび、しみ、手足のあれ”と記載があります。清上防風湯、桂枝茯苓丸加薏苡仁はどちらも同じにきびですが、にきびの状態は異なります。清上防風湯は清熱の力が強いため赤く、熱をもったタイプに、桂枝茯苓丸加薏苡仁は生理不順にも使用でき、血を動かす漢方薬であり、くすんだ色のタイプが適しています。

治頭瘡一方

治頭瘡一方は連翹・蒼朮・川芎・防風・忍冬藤・荊芥・甘草・紅花・大黄から構成され、風湿邪が血分に付着している状態です。荊芥・防風にて袪風、連翹・忍冬にて清熱・解毒、蒼朮にて祛湿、川芎にて活血袪風、紅花・大黄にて血滞を除きます。「清上防風湯は清熱を主とし、この方は解毒を主とするなり」。治頭瘡一方は湿疹、くさ、乳幼児の湿疹に使用されます。

荊芥連翹湯

荊芥連翹湯は温清飲+連翹・荊芥・防風・薄荷・枳殻・甘草・柴胡・桔梗・白芷の構成になっています。柴胡疎肝湯と似ているとのところもありますが、荊芥連翹湯の方が荊芥・防風・白芷がはいっているため、袪風・排膿の能力が高く、“蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきび”につかわれます。

柴胡清肝湯

柴胡清肝湯は温清飲+柴胡・連翹・桔梗・牛蒡子・栝楼根・薄荷・甘草の構成になっており、柴胡の量が荊芥連翹湯と比較するとやや多くなっているため、適応に“神経症、慢性扁桃腺炎”と“湿疹”の記載があります。

排膿散及湯

排膿散及湯は排膿散(枳実・芍薬・桔梗)と排膿湯(甘草・桔梗・生姜・大棗)をあわせ、排膿に重点をおいた漢方薬です。“患部が発赤、腫脹して疼痛をともなった化膿症、瘍、せつ、面疔、その他せっ腫症”に使用されます。

紫根牡蠣湯

紫根牡蠣湯は当帰・芍薬・川芎・大黄・升麻・牡蠣・黄耆・紫根・甘草・忍冬から構成されています。化膿や皮膚疾患があるときは身体の表面まで気を持ち上げることができていない状態であるため、黄耆にて三焦脂膜を潤し、気を表層へもちあげます。化膿性疾患に用いられる漢方薬のほとんどに托裏として黄耆が使用されています。当帰・芍薬・川芎にて養血、升麻・大黄にて一昇一降し、大黄にて清熱、紫根・忍冬は清熱解毒排膿にて悪瘡を治します。牡蠣は消瘰丸(玄参・貝母・牡蠣)にはいっているように軟堅散結の作用があり、リンパの凝り固まったものをほぐします。当帰飲子は血虚・かゆみに対し、紫根牡蠣湯は血虚でリンパ・乳腺の 腫物、膿瘍のときに使用されます。適応も“乳腺の痛み、痔の痛み、湿疹・皮膚炎、貧血、疲労倦怠”となっています。

千金内托散

千金内托散は黄耆・人参・甘草・桔梗・白芷・川芎・当帰・桂皮・防風・金銀花・厚朴から構成されています。托裏透膿湯に似た構成になっています。“托”という字には“支える”という意味があり、内側(裏)を支えることで表層へ気血を持ち上げるという意味合いになります。膿や皮膚疾患があるときは身体の表面まで気を持ち上げることができていない状態であるため、黄耆にて三焦脂膜を潤し、気を表層へもちあげます。化膿性疾患に用いられる漢方薬のほとんどに托裏として黄耆が使用されています。桂枝も陽気を表へもっていきます。人参・甘草にて内側を固めます。桔梗にて排膿、白芷・川芎・防風・金銀花にて散風解毒、当帰・川芎にて養血活血します。紫根牡蠣湯は血虚でリンパ・乳腺の 腫物、膿瘍の塊があるときに対し、千金内托散も虚を補い、解毒に重点をおいています。治りの悪い化膿性疾患や褥瘡などに使用されます。

風寒湿の湿疹であれば十味敗毒湯

風寒湿の症状が強ければ荊防敗毒散

かゆみが強ければ消風散

熱盛であれば黄連解毒湯

熱・風熱であれば清上防風湯

熱・血虚であれば温清飲

血虚・かゆみであれば当帰飲子

血滞・湿であれば桂枝茯苓丸加薏苡仁

風湿・血分であれば治頭瘡一方

熱・血虚・風であれば荊芥連翹湯

熱・血虚・気滞であれば柴胡清肝湯

化膿証であれば排膿散及湯

血虚・腫瘍であれば紫根牡蠣湯

血虚・毒であれば千金内托散

処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?

処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。

ツムラ5 7.5g(3包)中には、、、

キキョウ   3.0g
サイコ    3.0g
センキュウ    3.0g
ブクリョウ  3.0g
ボクソク   3.0g
ドクカツ   1.5g
ボウフウ   1.5g
カンゾウ   1.0g
ケイガイ   1.0g
ショウキョウ 1.0g

医療用のメーカーごとの違いは?

大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)の生薬量を比較してみました。3社ともも生薬量が異なっています。クラシエ、コタローでは桜皮のところをツムラは樸樕(ボクソク)になっています。またコタローでは防風が浜防風となっています。防風と浜防風は植物から異なり、通常の防風は疎散風熱に働くのに対し、浜防風は沙参ともいわれ、補気の作用が強くなっています。

ドラッグストアで購入できるものとの違いは?

ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。

ツムラ漢方

一般用医薬品のツムラです。生薬の1日量では医療用の半分となっています。

クラシエ

クラシエからは顆粒タイプと錠剤タイプがあります。顆粒と錠剤では生薬量が若干異なっています。さらに錠剤タイプには連翹が加味されており、風熱を散じる作用を付加してあり、かゆみなどの症状が強いときには向いています。顆粒が苦手な方は錠剤タイプの方が飲みやすいです。

JPS

市販の十味敗毒湯のなかでは一番生薬量が多いです。防風に関しては医療用のツムラよりも配合されています。さらに錠剤タイプであるため漢方の味が苦手な人にもオススメです。生薬量をしっかり飲みたいという方にはJPS十味敗毒湯が向いています。

化膿・じんましん・湿疹には十味敗毒湯です。

 

 

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