黄連解毒湯
皮膚科などでよく使用される黄連解毒湯は湿疹・皮膚のかゆみ、のぼせ、二日酔い、口内炎などでつかわれる漢方薬です。黄連解毒湯の性質を一言でまとめると清熱です。強い苦味にて熱を冷ます漢方薬です。赤みのある湿疹・のぼせに使用され、胃の熱による二日酔い・口内炎にもつかわれます。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「比較的体力があり、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらする傾向のある次の諸症:鼻出血、高血圧、不眠症、ノイローゼ、胃炎、二日酔、血の道症、めまい、動悸、湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症」と記載があります。
何が入っているの?
黄連・黄芩・黄柏・山梔子の4種類です。
黄連:清熱燥湿
黄連の苦味にて清熱します。清営湯にもつかわれているように黄連は心の血分の深くに作用します。赤みでも肌肉の気分の領域は石膏で清熱し、より深い血分の領域を黄連が清熱します。
黄芩:清熱燥湿
黄芩も黄連と同じく清熱燥湿します。黄連の方が苦味が強く、切れ味がするどく下ベクトルへ清熱するのに対し、黄芩は横に働き、膈周辺を清熱します。
黄柏:清熱燥湿
黄柏も清熱燥湿します。二妙散にもはいっているように下焦の湿熱をとる性質が強い。
山梔子:清熱瀉火
山梔子もほかの生薬と同じように清熱します。『葉天士解本草』には黄連の帰経を少陰腎経、山梔子は太陽膀胱経と記載があり、梔子豉湯で虚煩に使用されていることからも清熱でも三焦の熱をとります。
効果のまとめ
黄連解毒湯に配合されている黄連・黄芩・黄柏・山梔子は全て清熱の生薬であり、熱をとる作用が強い構成となっています。黄連がつかわれていることからも熱をとる部位は、石膏の肌肉ではなく、より深い血分に近い領域に作用します。苦味が強いことからも長期で服用すると胃にこたえる漢方薬ともいわれます。
また黄連・黄芩・黄柏・山梔子は苦味で清熱の性質と“燥湿”の性質をあわせもっています。熱を去るとともに湿も取り除きます。湿疹・皮膚のかゆみで使用されることが多いですが、赤みが強い時期にはとてもいい漢方薬ですが、長く服用することによって乾燥し、虚熱を生じる恐れがあるため、注意が必要です。
ほかの漢方薬との違いは?
二日酔いでつかわれる場合
二日酔いでつかわれる漢方薬には黄連解毒湯と五苓散があります。よく使用されるのは五苓散です。
五苓散
五苓散は利水の漢方薬といわれます。身体の水の偏りを治してくれます。二日酔いの状態というのはアルコールによって水が抜かれた脱水状態と考えられます。脱水状態から吐き気・むかつきが生じます。五苓散をつかうことで水の偏りをなくし、二日酔いの症状に効果を発揮します。
黄連解毒湯
黄連解毒湯は清熱の漢方薬です。そのため二日酔いでも熱感が強く、熱によって生じる吐き気であれば黄連解毒湯が適当です。実際は水の偏在によって生じる二日酔いが多いため、五苓散をオススメします。
五苓黄解
五苓散+黄連解毒湯です。五苓散と黄連解毒湯のいいとこどりをした漢方薬であるため、症状に悩んだときはこちらがオススメです。
湿疹、皮膚のかゆみで使われる場合
皮膚疾患で使用される漢方薬は黄連解毒湯のほかに温清飲、十味敗毒湯、消風散があります。
黄連解毒湯
黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子という苦味で清熱の生薬から構成されていることからも赤みが強いときに使われます。清熱の作用が強いため赤みでも鮮やかな赤みです。時間が経過し、くすんだ赤みであれば血のめぐりにも影響しているため別の漢方薬が適当と考えられます。
温清飲
温清飲は黄連解毒湯に養血の四物湯をあわせたものです。“皮膚の色つやが悪い”ときに用いられます。市販の温清飲には“皮膚がかさかさして色つやが悪く”“湿疹・皮膚炎”と記載があります。そういった症状の疾患の1つにアトピー性皮膚炎があり、論文を検索するとアトピー性皮膚炎に温清飲をつかっている報告がいくつもあります。湿疹・炎症を繰り返すことで皮膚を掻きむしり、浸出液や血がでていきます。皮膚はどんどん血を失っていくと同時に熱がこもっていきます。温清飲は四物湯によって失われた血を補い、黄連解毒湯にて清熱することで症状に対応します。温清飲はアトピー性皮膚疾患につかうことはありますが、アトピー全般に温清飲がつかえるわけではありません。熱が強ければ、より一層熱をとる必要がありますし、浸出液が多ければ水湿を取る必要があります。“皮膚がかさかさして色つやが悪く”のときが温清飲です。
十味敗毒湯
十味敗毒湯は風寒湿をとりのぞく漢方薬です。独活・荊芥にて風寒“湿”を散じ、防風・柴胡・川芎にて風を散じるのを助けます。風と湿を発散する作用が強いため十味敗毒湯は化膿性皮膚疾患、じんましん、急性湿疹に用いられます。
消風散
消風散もよく使用される漢方薬で、名前の通り“風”を消すことに特化した方剤です。ツムラの添付文書にも「分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)」とあり、“かゆみが強い”と記載があります。蝉退・防風・荊芥・牛蒡子にて風熱を散じ、当帰・生地黄・知母・苦参・胡麻仁・石膏にてかゆみの原因になっている血の熱をとるとともに、清熱します。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ15 7.5g(3包)中には、、、
日局オウゴン 3.0g
日局オウレン 2.0g
日局サンシシ 2.0g
日局オウバク 1.5g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)の生薬量を比較してみました。ツムラが黄連の量がクラシエ、コタローよりも0.5g多くなっています。ほかの生薬は同じ量が使用されています。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ漢方
こちらは一般用医薬品のツムラです。生薬の1日量では医療用の半分となっています。
クラシエ漢方
市販用のクラシエ漢方です。医療用のクラシエの半分の生薬量になっています。パッケージがいくつか種類がありますが、使用されている生薬量は同じです。
JPS神農黄連解毒湯
こちらはパッケージにも書いてあるように満量処方となっております。市販されているなかで一番生薬量が多くなっています。黄連解毒湯は苦い漢方薬ですが、こちらは錠剤タイプになっており、苦いものが苦手な方でものみやすくなっています。
のぼせ、湿疹・皮膚のかゆみ、二日酔い、口内炎には黄連解毒湯