麦門冬湯
“乾いた”咳・痰のある方によくつかわれる漢方薬です。潤す生薬が多くはいっており、痰のなかでも乾いた粘っこい痰に向いています。潤す漢方薬であることからシェーングレン症候群などの口腔乾燥症、口が乾く症状でもつかわれることがあります。
もともとは『金匱要略』肺痿肺癰欬嗽上気病篇に記載のある漢方薬です。
『金匱要略』での使われ方↓
「大逆上気、咽喉不利、止逆下気者、麦門冬湯主之。」
陰虚内熱による咳の症状です。虚熱が上昇し、大逆上気・咽喉不利と咳が激しい様子をあらわしています。陰虚内熱による激しい咳には麦門冬湯をつかいます。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく」と記載があります。
何が入っているの?
麦門冬湯は麦門冬・半夏・人参・甘草・粳米・大棗の6薬から構成されています。
麦門冬:潤肺
麦門冬は甘・寒の生薬であり、その甘味で肺を潤し、咳を抑えます。
半夏:燥湿化痰
半夏は温燥の生薬です。半夏は痰をとる作用があります。半夏は温燥の生薬であるため、肺が乾いている状態の麦門冬湯証には一見不適だと思われます。しかし麦門冬湯に入っている他の生薬は潤すものばかりで半夏の燥性を相殺し、袪痰の作用のみが働きます。
人参・粳米・甘草・大棗:補気滋潤
人参は気を補うだけでなく、生津作用があります。粳米・甘草・大棗は全て甘味であり、脾胃を補いつつ、津液をつくる態勢をととのえます。
効果のまとめ
麦門冬湯は麦門冬・人参・甘草・粳米・大棗の甘味で肺を潤す生薬と半夏の燥性の痰を取り除く生薬から構成されています。肺が乾くことで激しい咳になったり、出しにくい固まった痰になったり、口が乾くなどの症状に対応しています。使用の目安に舌が赤くなっている、です。
ほかの漢方薬との違いは?
麦門冬湯は咳・胆につかわれることが多く、そのときに使われるほかの漢方薬についても解説します。
麦門冬湯
多くは甘い生薬から構成されており、乾燥による咳・痰の症状があるときは麦門冬湯です。
麻杏甘石湯・五虎湯
熱飲による咳であり、一般的に気管支喘息といればこちらがよく使用されます。痰の症状があれば五虎湯が向いています(麻杏甘石湯に祛痰の桑白皮が加わったものが五虎湯)。
柴陥湯
柴陥湯も痰・咳による症状ですが、さらに痛みがあり、症状がひどいときにつかわれます。咳喘息につかわれることもあります。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ29 7.5g(3包)中には、、、
日局バクモンドウ 10.0g
日局コウベイ 5.0g
日局ハンゲ 5.0g
日局タイソウ 3.0g
日局カンゾウ 2.0g
日局ニンジン 2.0g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手2社(ツムラ、コタロー)の生薬量を比較してみました。生薬量に違いはありませんでした。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラの漢方
市販用のツムラの漢方薬です。医療用でつかわれる量の半分になっています。
クラシエの漢方
クラシエは医療用の3/4分の量が入っています。
PHARMA CHOICE
満量処方となっており、市販されているなかで一番生薬量が多くなっています。
こちらはAmazonのみで販売されています。
乾いた咳、痰には麦門冬湯