黄疸には茵蔯蒿湯

茵蔯蒿湯

茵蔯蒿湯は黄疸に使う代表方剤であり、『傷寒論』陽明病期、『金匱要略』黄疸病篇にも記載のある漢方薬です。

『傷寒論』にでてくる黄疸の漢方薬、茵蔯蒿湯を含め3処方解説します。

目次

茵蔯蒿湯

「陽明病、発熱、汗出者、此為熱越、不能発黄也。但頭汗出、身無汗、剤頸而還、小便不利、渇引水漿者、此為瘀熱在裏、身必発黄、茵蔯蒿湯」

「小便当利、尿皂莢汁状、色正赤、一宿腹減、黄従小便去也」

「傷寒七八日、身黄如橘子色、小便不利、腹微満者、茵蔯蒿湯主之」

茵蔯蒿湯が使用される湿熱の状態をあらわしています。陽明病は熱邪によるものであるため発熱し、汗をかくため津液と熱が外へ放出されているため、発黄・黄疸があらわれません。『傷寒論』では湿熱ではなく瘀熱と表現していますが、湿熱が滞り、気機の昇降が失調し、胆汁も閉塞し、あふれ出し黄疸となります。そのため汗が出ず、水の巡りが悪くなり小便不利になります。熱も外にでることができず、熱気がこもり、水を飲むようになります。便も滞り、便秘になり、腹微満となります。湿熱が溜まり、胆汁の流れも阻滞されてしまうため、結果として黄疸があらわれます。そのときには茵蔯蒿湯を使用します。添付文書にも「尿量減少、やゝ便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症 黄疸、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎」と記載があり黄疸は当然として、陽明病であるため便秘について書いてありますし、発黄したときは小便不利であるため、尿量減少の文言が入っています。

茵蔯蒿湯は茵蔯蒿・山梔子・大黄の3薬から構成されています。茵蔯蒿は春の生気を得て育ち、色も青く、肝胆に入り熱を清し、獺肝の鬱を達します。茵蔯蒿にて清熱除湿・退黄し、湿熱を尿として排出します。山梔子にて清熱利湿、大黄にて清熱瀉火します。「黄従小便去也」と溜まった湿熱が最終的には尿として排出されることで黄疸が改善されると記載されています。

実は茵蔯蒿湯での大黄の使われ方は興味深いです。大黄は基本的には血分の熱を取り、それを便に出すイメージがありますが、茵蔯蒿湯での湿熱の逃げ道は尿です。服用すれば湿熱は尿に排出され、皂莢汁のように赤い尿がでます。大便ではありません。ここからも大黄は気分の熱を尿にもっていく作用があることが考えられます。大黄を服用すると小便の色も変わることからも大黄が利尿へはたらくことがわかります。実際に葉天士の『葉天士解本草』に大黄の帰経は太陽寒水小腸経、少陰心経、手少陽相火三焦経と記載があります。大黄は三焦にも入るため気分の熱にも効果があります。

梔子柏皮湯

「傷寒身黄発熱、梔子柏皮湯主之」

茵蔯蒿湯のときと比較し、陽明病の便秘の症状はみられません。発熱があり、黄疸があるという状態です。このときは梔子柏皮湯をつかいます。梔子柏皮湯は山梔子・甘草(炙)・黄柏の3薬から構成されています。便秘の症状がないため大黄が入らず、湿熱よりも発熱の症状が強いため清熱薬として山梔子・黄柏がはいっています。三焦に湿熱がある状態であるため、山梔子にて上焦の湿熱に対応し、黄柏にて下焦の湿熱に対応しています。甘草は甘平であり、山梔子と黄柏の清熱作用を中焦にも行き渡らせます。黄連・黄芩では清熱の作用が強く、湿熱に対応するためにこのような構成になっていると考えられます。

麻黄黄連軺赤小豆湯

「傷寒瘀熱在裏、身必黄、麻黄黄連軺赤小豆湯」

太陽病の表証があり、また裏に瘀熱があるため発黄になっている状態です。太陽病を解表する必要があり、裏の湿熱にも対応する麻黄黄連軺赤小豆湯を使用します。

麻黄黄連軺赤小豆湯は麻黄・連軺・杏仁・赤小豆・大棗・生梓白皮・生姜・甘草(炙)から構成されています。麻黄・杏仁・甘草は麻黄湯(あと桂枝が入れば麻黄湯になります)の構成であり、発汗解表します。連軺は、現在ではあまり使用されていませんが、連翹の根です。連翹よりも発表の力は劣りますが、利水の作用が強いです。連軺は連翹で代用されることが多いですが、利水作用が弱くなるため滑石とあわせて使うこともできます。赤小豆はあずきのことで清熱利湿します。梓白皮も催吐作用があるため現代は使われておらず、桑白皮が代用となり、利湿します。麻黄・杏仁・甘草にて表に対応し、連軺(連翹)・赤小豆・生梓白皮(桑白皮)にて裏の湿熱に対応しています。

 

発黄し、湿熱気分にて鬱しているときには茵蔯蒿湯を使います。熱がこもり、熱によって湿が蒸しあげられ発黄する場合は『傷寒論』に記載のある麻黄連軺赤小豆湯をつかい、湿を表から排出します。

効能又は効果は?

ツムラの添付文書には「尿量減少、やゝ便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症

黄疸、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎」とあります。

 

 

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