夏バテには清暑益気湯

清暑益気湯

暑気あたり、つまり夏バテで食欲がなく、体力が落ち着いているときにつかわれる清暑益気湯です。

『中医臨床のための方剤学』で清暑益気湯を調べると3種類記載があります。

・『温熱経緯』の清暑益気湯

・『脾胃論』の清暑益気湯

・『医学六要』の清暑益気湯

同じ清暑益気湯でも本によって配合されている生薬が異なります。日本のエキスでは『医学六要』の清暑益気湯が採用されています。

目次

『温熱経緯』の清暑益気湯

西洋参・石斛・麦門冬・黄連・竹葉・荷梗・知母・炙甘草・粳米・西瓜皮から構成されています。西洋参・黄連が入っていることからも清熱の作用が強く、荷梗・西瓜皮にて解暑の作用が強い構成となっています。

『脾胃論』の清暑益気湯

黄耆・蒼朮・升麻・人参・神麴・陳皮・白朮・麦門冬・当帰・炙甘草・青皮・黄柏・葛根・沢瀉・五味子から構成されています。『温病条弁』でも記載のあるように暑湿の邪にやられ、湿熱が身体にこもっている状態につかわれます。

『医学六要』の清暑益気湯

黄耆・人参・麦門冬・白朮・当帰・五味子・陳皮・黄柏・炙甘草から構成されています。人参・麦門冬・五味子は生脈散の組み合わせであることからも気陰両虚に対する組み合わせになっています。寒性の生薬は黄柏のみで、熱を冷ますという点ではほかの清暑益気湯に劣ります。

効能又は効果は?

ツムラの添付文書には「暑気あたり、暑さによる食欲不振・下痢・全身倦怠、夏やせ」とあります。

ツムラの生薬量は?

日局ソウジュツ  3.5g
日局ニンジン   3.5g
日局バクモンドウ 3.5g
日局オウギ    3.0g
日局チンピ    3.0g
日局トウキ    3.0g
日局オウバク   1.0g
日局カンゾウ   1.0g
日局ゴミシ    1.0g

 

『金匱要略』『温病条弁』での清暑益気湯

『金匱要略』では暍病という夏バテ症状を呈するときにつかう方剤が記載されていません。

『温病条弁』の呉鞠通によると暍病には『脾胃論』の清暑益気湯がいいと書いてあるので、それを説明します。

『温病条弁』上焦暑湿篇23条

「《金匱》謂、「太陽中暍、発熱悪寒、身重而疼痛、其脈弦細芤遅、小便已洒然毛聳、手足逆冷、小有労、身即熱、口開前板歯燥、若発其汗、則悪寒甚、加温針則発熱甚、数下則淋甚、可与東垣清暑益気湯」

ここでは『金匱要略』に記載の条文を引用してあります。“太陽中暍~数下則淋甚”までが『金匱要略』からの引用で“可与東垣清暑益気湯”が付け足されています。『金匱要略』では中暍という今でいう夏バテの症状の説明の条文なのですが、ここでは中暍があるときにどんな薬を使うべきかの説明がありません。そこで呉鞠通が引用し、李東垣の清暑益気湯がいいのではないかといっているのです。

中暍というのは2つの側面があります。1つは陽虚内湿です。暑邪により陽気が傷つけられ、脾の機能が落ちているため湿を捌くことができません。湿が溜まりやすく、外暑内湿であるため湿邪により身体が重たく、疼痛するという陽虛による内湿の状態があります。小便して毛が聳えるというのは、排尿後にブルッとふるえることです。この症状や手足の冷えからも陽虛がうかがえます。

2つめは暑邪による陰虚です。暑邪によって津液が損傷されるため口が乾燥するなどの症状もあらわれます。

陽虛と陰虚の状態が脈にも弦細芤遅としてあらわれています。陽気が虚しているところをさらに発汗してしますと、陽虚が進み、寒気がひどくなります。温針すると陰を損傷するため発熱がひどくなります。下してしまうと下焦が虚してしまい、邪が内陥すると淋病、つまり尿路系の病気になります。ここに暑病の治療の難しさがあります。暑温の治療にあたっては治療法を間違えないようにしっかり見極める必要があります。

暑邪による陰虚、陽虚、内湿に対応するために李東垣の辛甘化陽・酸甘化陰の清暑益気湯をつかいます。陰を傷つけられているため生津する必要があるが、湿にも対応する必要があり、暑の熱も意識しないといけないため生薬数が多くなっています。エキスに採用されている清暑益気湯は張三錫が考えたもので、この方剤とは異なります。清暑益気湯はそれ以外にも王孟英『温熱経緯』の清暑益気湯もあります。

李東垣の清暑益気湯は黄耆・黄柏・麦門冬・青皮・白朮・升麻・当帰・炙甘草・神麴・人参・沢瀉・五味子・陳皮・蒼朮・葛根・生姜・大棗の17薬から構成されています。

麦門冬・人参・五味子・葛根にて生津。黄耆・人参・当帰・炙甘草・生姜・大棗にて益気。青皮・白朮・神麴・沢瀉・陳皮・蒼朮にて理気化湿。黄柏にて清熱燥湿、升麻にて昇陽散邪します。

 

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