麻杏甘石湯
喘息のように咳き込むときに使用される漢方薬です。即効性もある漢方薬なので、咳き込むときのためにお守りとして持ち歩く方もいます。配合されている生薬をみても苦いものは少なく、比較的飲みやすい漢方薬です。痔の発作で腫れがあるときにもその腫れを抑える意味で使用されることもあります。
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「小児ぜんそく、気管支喘息」と記載されています。
何が入っているの?
その字の通り、麻黄、杏仁、甘草、石膏が配合されています。
麻杏甘石湯=麻黄+杏仁+甘草+石膏
麻黄:利水作用(水の偏在を調節する)
マオウ科の植物の地上茎。強い発汗作用を持ち、桂皮と一緒に使用されることでより強い発汗作用を発揮します(麻黄湯)。麻杏甘石湯では利水作用を目的として配合されています。麻黄と石膏が組むことで、溜まっている水を内側に引き込みます。喘息は気管が炎症を起こして浮腫んでいる状態のことですので、水を内側に引き込み、気管支の浮腫みをとります。
石膏:熱を冷ます
天然で採取された硫酸カルシウムの塊。石膏には強力に熱を冷ます作用があります。高熱のときや、脱水状態のときに使用される白虎加人参湯にも配合されています。肺の炎症を抑え、咳を抑える作用もあります。熱を冷ます作用があるため、熱性の湿疹やアトピーに使用されることもあります。
杏仁:咳止め
バラ科アンズの種子。杏仁といえば杏仁豆腐ですよね?杏仁豆腐はアンズの種子の皮を取り除いたものを使用しています。またシロップのお薬でキョウニン水というものがあります。キョウニン水というのは咳止めとして現在でも使われているお薬です。このシロップ剤からも杏仁は咳止め薬ということがわかります。「仁」というのは種子という意味で、種子には油が多く入っていることから便通をよくする作用もあります。
効果のまとめ
麻黄、石膏が組み、熱を強力に冷まし、咳を抑えます。喘息は気管支に炎症があり、浮腫みがある状態ですので、水を内側に引き込むことで気管支の浮腫みを緩和します。杏仁で鎮咳作用をサポートします。
似た漢方薬との違いは?
・五虎湯と麻杏甘石湯
五虎湯も麻杏甘石湯も咳があるときに使用される漢方薬です。実は五虎湯は麻杏甘石湯に桑白皮という痰切りの生薬を足したものです。
五虎湯=麻杏甘石湯+桑白皮(痰切り)
咳があって、痰もあるときは麻杏甘石湯よりも五虎湯が向いています。
・麦門冬湯と麻杏甘石湯
麦門冬湯も麻杏甘石湯も咳があるときに使用される漢方薬です。麻杏甘石湯は気管支の浮腫みをとり、咳を抑えるのに対し、麦門冬湯は乾いた気管支を潤すことで咳を抑えます。ご年配の方に多いのですが、身体やのどが乾いてしまい、日常的に咳がでる方がいます。麦門冬湯は潤いしてくれる漢方薬なのでそういった方に向いています。潤す漢方薬のため、麦門冬湯は日常的に口が乾く方、ドライアイの方にも使用されることがあります。
・神秘湯と麻杏甘石湯
神秘湯も咳で使用される漢方薬です。神秘湯には咳を抑える生薬だけでなく、柴胡、陳皮、厚朴、蘇葉の気を整える生薬も配合されています。そのため咳があるが、痰はなく、肋骨の下のところが張って苦しい症状、精神的にも参っているときに使用されます。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ55 7.5g(3包)中には、、、
日局セッコウ 10.0g
日局キョウニン 4.0g
日局マオウ 4.0g
日局カンゾウ 2.0g
医療用のメーカーでの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)で使用されている生薬量を調べてみました。クラシエでは取扱いはなく、販売があるのはツムラとコタローでした。どちらも使用されている生薬量に違いはありませんでした。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られているものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ漢方
1日量中に日局セッコウ5.0g、日局キョウニン2.0g、日局マオウ2.0g、日局カンゾウ1.0gが配合されています。医療用の半分の量です。
マツウラの漢方薬
こちらも1日量では医療用の生薬の半分量しか配合されていません。
麻杏甘石湯エキス錠 ジェーピーエス製薬
日局マオウ 3.2g 日局キョウニン 3.2g日局カンゾウ 1.6g 日局セッコウ 8.0gと医療用の80%の成分が配合されています。市販されているものの中では生薬量が多いため、量が気になる方はこちらがいいです。さらにこちらは錠剤タイプとなっているため、漢方薬の粉が苦手な方にもおすすめです。
気管に炎症があって咳き込むときに使用される麻杏甘石湯です。