人参養栄湯
疲れ、疲労感、体力の低下のときによく使用される人参養栄湯です。体力を補う漢方薬のなかで代表的なものの1つです。ほかに気を補う漢方薬で有名なものには補中益気湯や十全大補湯があります。補中益気湯は補気昇提、十全大補湯は気血双補、人参養栄湯は気血双補・寧心安神で使い分けます。
薬効薬理では以下のことがわかっています。
骨髄造血系細胞に対する作用(マウスの末梢血白血球数、脾細胞数と骨髄多能性幹細胞 (CFU-S) の数を増加した。)
感染防御作用(シクロフォスファミドあるいは5-フルオロウラシルを投与したマウスの骨髄多能性幹細胞 (CFU-S) 回復促進作用ならびに白血球減少回復促進作用を示し、同マウスの緑膿菌感染致死を防御した。)
効能又は効果は?
ツムラの添付文書には「病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血」と記載があります。
何が入っているの?
人参・白朮・茯苓・甘草・地黄・当帰・芍薬・黄耆・桂皮・遠志・五味子・陳皮の12薬から構成されています。
人参養栄湯=十全大補湯―川芎+遠志・五味子・陳皮
人参・白朮・茯苓・甘草:補気
これら4薬の組み合わせは四君子湯になり、すべて気を補う生薬となっています。
地黄・当帰・芍薬:養血
これら3薬はすべて血分に働く生薬であり、養血し、血を巡らせます。
黄耆:補気昇陽
気を表へ持ち上げます。
桂皮:温陽
桂皮には気を温め、気血の流れを通調する作用があります。また補腎の効果もあります。
遠志:安神
遠志は心腎交通させ、安神します。遠志は単味で第三類医薬品で“物忘れの改善”に販売されており、その点でもご年配の方に向いた漢方薬です。
五味子:収斂
五味子は酸味の生薬で収斂し、益気生津します。腎陰を収渋作用もあります。
陳皮:化痰
陳皮にて理気化痰します。
効果のまとめ
人参養栄湯は気血双補・寧心安神する漢方薬です。人参・白朮・茯苓・甘草の四君子湯の組み合わせで補気し、地黄・当帰・芍薬の組み合わせで血を補います。黄耆・桂皮にて気を補うとともに陽気を巡らせます。遠志には安神作用があり、重要な生薬です。安神作用があるため、ご年配の方の体力虚弱に適します。五味子にて収斂し、陳皮にて化痰します。
ほかの漢方薬との違いは?
体力を補う目的で使用される漢方薬の違いについて説明します。
六君子湯
六君子湯は人参が入っており、気を補う作用だけでなく、陳皮・半夏という湿をさばく生薬が入っています。日本は湿気が多い気候で食事も脂っこくなってきており、身体に湿をため込みやすい環境です。胃のムカムカ、もたれがあるときは六君子湯です。
補中益気湯
補中益気湯は気を補い、気を上に持ち上げる漢方薬です。そのため疲れやすさ、食欲不振などの気の落ち込みが関連する状態のときには補中益気湯です。
十全大補湯
十全大補湯は四君子湯+四物湯+黄耆・桂皮から構成されています。そのため補中益気湯よりも血を補う作用が強くなっています。目のかすみ、筋肉のひきつり、顔色が蒼白など血虚の症状があれば十全大補湯が適しています。補中益気湯よりも血分の深いところを補う作用もあるため、補中益気湯で効果がなければ十全大補湯を考慮にいれてください。
人参養栄湯
人参養栄湯は十全大補湯から川芎を抜き、遠志・五味子・陳皮を加えた構成になっています。五味子にて収斂、陳皮にて化痰、遠志にて心腎交通する作用が強化されています。遠志は“もの忘れの改善”の作用でも販売されています。人参養栄湯はご年配の方であれば全般に使用できます。年齢とともに気血も不足し、心神不寧の症状があれば人参養栄湯です。
処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?
処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
ツムラ108 9.0g(3包)中には、、、
日局ジオウ 4.0g
日局トウキ 4.0g
日局ビャクジュツ 4.0g
日局ブクリョウ 4.0g
日局ニンジン 3.0g
日局ケイヒ 2.5g
日局オンジ 2.0g
日局シャクヤク 2.0g
日局チンピ 2.0g
日局オウギ 1.5g
日局カンゾウ 1.0g
日局ゴミシ 1.0g
医療用のメーカーごとの違いは?
大手3社(ツムラ、クラシエ、コタロー)の生薬量を比較してみました。どのメーカーも同じ生薬量がつかわれていました。
ドラッグストアで購入できるものとの違いは?
ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。
クラシエの漢方 漢方セラピー
市販用のクラシエです。医療用の半分の生薬量になっています。
疲れて身体がだるいときに人参養栄湯