貝母は清熱潤肺、化痰止咳、泄熱散結の働きがあります。
貝母とは?
貝母は“貝の母”と書きますが、ユリ科の植物の鱗茎です。貝母は化痰薬ではありますが、半夏とは性質が全く異なります。
去痰薬として有名な半夏(麦門冬湯など)は温燥の生薬であり、痰を温め、乾かしながら痰をとります。小青竜湯、小柴胡湯のようなかぜ薬に半夏が入っているのは相性がいいといえます。反対に熱化している痰、乾いて固まっている痰には不適です。
麦門冬湯はご年配の方の乾燥した痰に使い、本来は半夏と乾いた痰は相性が悪いのですが、これには構成の技があります。麦門冬湯は半夏以外に麦門冬・粳米・大棗・人参・甘草が入っており、これらの甘味の生薬の潤す働きにて半夏の燥性を打ち消し、去痰の働きだけを残すように構成されています。
半夏が温燥に対し、貝母は寒性で、痰を潤しながら去痰に働きます。そのため熱によって生じた痰、熱で乾いた痰につかうことができます。三物白散、月華丸、百合固金湯などに貝母が入っています。貝母と似た性質の生薬に栝楼仁、竹筎などもあります。
貝母は『神農本草経』には辛味の生薬と記載され、辛味の散結する作用からリンパの塊に使う消瘰丸(玄参・貝母・牡蛎)にも入っています。
現代中医学
気味:苦 寒
帰経:心・肺
効能:清化熱痰、潤肺止咳、泄熱散結
古典
気味:辛 平<神農本草経>
帰経:肺・大腸<葉天士解本草>
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『神農本草経』
気平。味辛。無毒。主傷寒煩熱。淋瀝邪気。疝瘕。喉痺。乳難。金瘡。風痙。
『葉天士解本草』
貝母気平。稟天秋平之金気。入手太陰肺経。味辛無毒。得地西方之金味。入手陽明燥金大腸経。気味降多於升。陰也。
其主傷寒煩熱者。傷寒有五。風寒湿熱温。而風與熱。乃陽盛之症。陽盛所以煩熱也。貝母気平則清。味辛潤散。故主之也。
淋瀝者膀胱有熱也。邪気者熱邪之気也。膀胱以気化為主。貝母味辛潤肺。肺乃主気之蔵。肺化則気潤及於州都。小便通而不淋瀝矣。
其主疝瘕者。肺気不治。則不能通調水道。下輸膀胱。因而湿熱之邪。聚結成疝成瘕。貝母気平。可以通調水道。味辛可以散熱結也。
大陽之脈。其正者上循咽喉。火発於標。乃患喉痺。痺者閉也。其主之者。味辛気平。能解大腸之熱結也。肺乃律液之府。
主乳難者。味辛能潤。潤則乳自通也。
肺主皮毛。味辛気平。則肺潤而皮毛理。可癒金瘡也。
風痙者。風湿流於関節。致血不能養筋而筋急也。貝母味辛。辛則散風湿而潤血。且貝母入肺。肺潤則水道通而津液足。所以風湿逐而筋脈舒也。
気平。味辛。無毒。
貝母気平。稟天秋平之金気。入手太陰肺経。味辛無毒。得地西方之金味。入手陽明燥金大腸経。気味降多於升。陰也。
主傷寒煩熱。
其主傷寒煩熱者。傷寒有五。風寒湿熱温。而風與熱。乃陽盛之症。陽盛所以煩熱也。貝母気平則清。味辛潤散。故主之也。
淋瀝邪気。
淋瀝者膀胱有熱也。邪気者熱邪之気也。膀胱以気化為主。貝母味辛潤肺。肺乃主気之蔵。肺化則気潤及於州都。小便通而不淋瀝矣。
疝瘕。
其主疝瘕者。肺気不治。則不能通調水道。下輸膀胱。因而湿熱之邪。聚結成疝成瘕。貝母気平。可以通調水道。味辛可以散熱結也。
喉痺。
大陽之脈。其正者上循咽喉。火発於標。乃患喉痺。痺者閉也。其主之者。味辛気平。能解大腸之熱結也。肺乃律液之府。
乳難。
主乳難者。味辛能潤。潤則乳自通也。
金瘡。
肺主皮毛。味辛気平。則肺潤而皮毛理。可癒金瘡也。
風痙。
風痙者。風湿流於関節。致血不能養筋而筋急也。貝母味辛。辛則散風湿而潤血。且貝母入肺。肺潤則水道通而津液足。所以風湿逐而筋脈舒也。