漢方においては百合(びゃくごう)と読みます。一般的には百合(ユリ)と読むことがほとんどだと思います。
漢方では百合はユリの鱗茎の鱗片であり、いわゆる“ユリ根”といわれるものになります。ユリ根は食べられたことある方もいると思います。ユリ根は漢方でもつかわれています。
百合の入っている漢方薬としては辛夷清肺湯、百合固金湯があり、主に肺を潤す薬として咳に使うものに入っています。
百合知母湯や百合地黄湯のように清心安神の生薬としても使われます。
現代中医学
気味:甘 微寒
帰経:心・肺
効能:鎮咳去痰、鎮静、滋陰潤肺に応用される。
古典
気味:甘 平<神農本草経>
帰経:肺・脾<葉天士解本草>
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百合の働きについて『神農本草経』と葉天士がそれを解説した『葉天士解本草』から考えたいと思います。
『神農本草経』
気平。味甘。無毒。主邪気腹脹心痛。利大小便。補中益気。
『葉天士解本草』
百合気平。稟天秋平之金気。入手太陰肺経。味甘無毒。得地中正之土味。入足太陰脾経。気降味和。陰也。
肺主気。気逆則腹脹心痛。謂之邪者。蓋非其位則為邪也。気平下降。所以主之。
膀胱者州都之官。津液気化則出。肺主気。而與大腸為合。脾者又為胃行津液者也。百合甘平。平則気降。気化及於州都。則小便利。甘則脾潤。脾行胃之津液。則大便利也。
脾為中州。補中者味甘益脾也。肺主気。益気者気平粛肺也。
↓にて『神農本草経』と『葉天士解本草』の条文を並べ、百合の働きついて考えたいと思います。
気平。味甘。無毒。
百合気平。稟天秋平之金気。入手太陰肺経。味甘無毒。得地中正之土味。入足太陰脾経。気降味和。陰也。
百合は気平であり、秋平の気をもり、太陰肺経に入ります。味は甘味で太陰脾経に入ります。
主邪気腹脹心痛。
肺主気。気逆則腹脹心痛。謂之邪者。蓋非其位則為邪也。気平下降。所以主之。
肺は気を主ります。気逆を起こすことでお腹が張り、心痛を生じます。百合は気平にて気を降ろすことで主邪気腹脹心痛につかわれます。百合は『金匱要略』百合狐惑陰陽毒病篇
を読んでいるとよく目にする生薬です。百合病は心肺の陰虚内熱によるものだと考えられ、食欲がなく、ただ黙り、じっと横になろうとしても、落ち着かず横になることができない、歩こうとしても歩くことができず、食事をしておいしいと感じるときもあれば、臭いで気分が悪くなることもあり、寒のようで寒ではなく、熱があるようで実際に熱はない、という様々な症状を呈し、百合知母湯や百合地黄湯がつかわれています。まさに“主邪気腹脹心痛”の生薬といえます。
利大小便。
膀胱者州都之官。津液気化則出。肺主気。而與大腸為合。脾者又為胃行津液者也。百合甘平。平則気降。気化及於州都。則小便利。甘則脾潤。脾行胃之津液。則大便利也。
膀胱は州都之官といわれ、水が州都のようにあつまってくる腑です。膀胱にて津液が気化されることで排尿となります。肺気は気を主り、表裏を大腸としています。脾は胃が燥に傾きすぎないように津液をめぐらせています。百合は甘平であり、平にて気を降ろし、州都之官の膀胱にて気化されることで利小便になります。百合の甘味にて脾を滋潤し、脾は胃へ津液を送ることができるようになり、大便が通じるようになります。『傷寒論』に「陽明之為病、胃家実是也」とあるように胃家(胃腸を含めた消化器官のこと)が実することで便秘になることがわかります。
補中益気。
脾為中州。補中者味甘益脾也。肺主気。益気者気平粛肺也。
脾は中州を主るというように五臓六腑の中央に位置しています。百合の甘味にて益脾し、補中し、気を主る肺を平粛することで益気します。