陳皮(ちんぴ)

陳皮の働きを『神農本草経』から考えたいと思います。

陳皮は香蘇散、参蘇飲、滋陰至宝湯、痛瀉要方、滋陰降火湯、五積散、六君子湯、補中益気湯、人参養栄湯、神秘湯、通導散、釣藤散、平胃散、分消湯、藿香生気散、九味檳榔湯、疎経活血湯、二朮湯、二陳湯、温胆湯、清肺湯、半夏白朮天麻湯などの多くの漢方薬につかわれています。

陳皮に似たものに橘皮、青皮があります。

青皮は未成熟な果皮をつかっているため、味の峻烈であり、気を動かす力も強いです。

橘皮と陳皮はどちらも成熟した果皮です。橘皮を長く保管しておいたものが陳皮となります。古い方が優れたものとされるため、橘皮よりも陳皮の方が作用が勝ります。



目次

現代中医学

気味:辛・苦 温

帰経:脾・肺

効能:理気健脾、燥湿化痰の効能から腹部膨満、食少吐瀉、欬嗽痰多に応用される。

古典

気味:辛・苦 温<神農本草経>

帰経:肝・心・肺<葉天士解本草>

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『神農本草経』とそれを葉天士が解説した『葉天士解本草』から陳皮について考えたいと思います。

『神農本草経』

気温。味苦辛。無毒。主胸中瘕熱逆気。利水穀。久服去臭。下気通神。

『葉天士解本草』

陳皮気温。稟天春升之木気。入足厥陰肝経。味苦辛無毒。得地南西火金之味。入手少陰心経、手太陰肺経。気味升多於降。陽也。

胸中者肺之分也。肺主気。気常則順。気変則滞。滞則一切有形血食痰涎。皆假滞気而成瘕。瘕成則肺気不降而熱生焉。陳皮辛能散。苦能洩。可以破瘕清熱也。苦辛降気。又主逆気。

飲食入胃。散精於肝。温辛疎散。肝能散精。水穀自下也。肺主降。苦辛下洩。則肺金行下降之令。而下焦臭濁之気。無由上升。所以去臭而下気也。心為君主。神明出焉。味苦清心。味辛能通。所以通神也。

↓で『神農本草経』と『葉天士解本草』を照らし合わせて、作用を考えます。

気温。味苦辛。無毒。

陳皮気温。稟天春升之木気。入足厥陰肝経。味苦辛無毒。得地南西火金之味。入手少陰心経、手太陰肺経。気味升多於降。陽也。

陳皮は気温であり、厥陰肝経に入ります。味苦辛であり、少陰心経、太陰肺経に入ります。

主胸中瘕熱逆気。

胸中者肺之分也。肺主気。気常則順。気変則滞。滞則一切有形血食痰涎。皆假滞気而成瘕。瘕成則肺気不降而熱生焉。陳皮辛能散。苦能洩。可以破瘕清熱也。苦辛降気。又主逆気。

胸中は肺のある部位であり、肺は気を主ります。気は順調にめぐっていれば問題がありませんが、気の流れがうまくいかなくなると停滞してしまいます。気の停滞は血・食・痰涎が有形の邪となるきっかけとなり、気の滞りによって癥瘕が形成されます。癥瘕によって肺気は降りることができず、熱となります。陳皮は辛味にてよく散じ、苦味にてよく気を降ろします。陳皮の苦辛にて癥瘕を破り、清熱します。苦辛は降気するため、逆気にもつかうことができます。

お腹の痞えにつかわれる温胆湯や、咳につかう清肺湯にも陳皮は入っています。

利水穀。

飲食入胃。散精於肝。温辛疎散。肝能散精。水穀自下也。

口から取り込んだ飲食は胃に入り、肝によって精を散じます。陳皮は肝に入り、温辛にて精を散じ、水穀が自ずと下ります。

二陳湯をはじめ、六君子湯にも陳皮が入り、痰湿を取り除き胃腸の働きを改善します。

久服去臭。

肺主降。苦辛下洩。則肺金行下降之令。而下焦臭濁之気。無由上升。所以去臭而下気也。

肺は粛降を主ります。陳皮の苦辛にて下ベクトルへ働くのを助けるため、下焦の臭濁は上に上がることなく、下に向かっていきます。

下気通神。

心為君主。神明出焉。味苦清心。味辛能通。所以通神也。

心は君主であり、神明を主ります。陳皮の苦味にて清心し、辛味にてよく通じるため、通神の働きがあります。めまい、ふらつきに使われる半夏白朮天麻湯や導痰湯、滌痰湯にも陳皮は使われています。

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