朮(白朮・蒼朮)

『神農本草経』の時代には白朮と蒼朮が区別されていなかったため、朮というひとくくりで記載されています。

現在では白朮の方が健脾に優れ、蒼朮の方が除湿に優れているとされていますが、漢方のメーカーによっては白朮・蒼朮に違いがあります。江戸時代中期は蒼朮ばかりがつかわれていたようであり、それを意識したメーカーは蒼朮を使用し、古典では白朮が多くつかわれており、それを汲んで構成されたものは白朮が使用されています。



目次

現代中医学

白朮

気味:甘・苦 温

帰経:脾・胃

効能:健脾益気、燥湿利水、固表止汗、安胎、去風湿

蒼朮

気味:辛・苦 温

帰経:脾・胃

効能:去風除湿、燥湿健脾、散寒解表、除障明目

古典(朮)

気味:甘 温<神農本草経>

帰経:胃・脾<葉天士解本草>

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『神農本草経』と、葉天士がそれを解説した『葉天士解本草』から白朮・蒼朮の働きについて考えたいと思います。

『神農本草経』

気温。味甘無毒。主風寒湿痺。死肌痙疸。止汗除熱。消食。作煎餌久服。軽身延年不飢。

『葉天士解本草』

朮性温。稟天陽明之燥気。入足陽明胃経。味甘無毒。稟地中正之土味。入足太陰脾経。気味倶升。陽也。

風寒湿蚕砂合成痺。痺者拘攣而麻木也。蓋地之湿気。感則害人皮肉筋骨也。死肌者。湿邪侵肌肉也。痙者。湿流関節而筋勁急也。疸者。湿乗脾土肌肉発黄也。皆脾胃湿症。朮性甘燥。所以主之。

胃土湿。則湿熱交蒸而自汗発熱。朮性燥湿。故止汗除熱也。

脾者為胃行其津液者也。脾湿。則失其健運之性而食不消矣。朮性温益陽。則脾健而食消也。

煎餌久服。則胃気充足。

気盛則身軽。気充則不飢。気納則延年。所以軽身延年不飢也。

で『神農本草経』と『葉天士解本草』を並べて記載し、白朮・蒼朮について考えたいと思います。

気温。味甘無毒。

朮性温。稟天陽明之燥気。入足陽明胃経。味甘無毒。稟地中正之土味。入足太陰脾経。気味倶升。陽也。

『中医臨床のための中薬学』では白朮は“甘・苦 温”、蒼朮は“辛・苦 温”となっていますが、『神農本草経』のときには白朮・蒼朮区別されていなかったため、甘・温となっています。温性であり、燥性で陽明胃経に入ります。甘味にて太陰脾経に入ります。

主風寒湿痺。死肌痙疸。

風寒湿三者合成痺。痺者拘攣而麻木也。蓋地之湿気。感則害人皮肉筋骨也。死肌者(死肌:感覚が麻痺した肌)。湿邪侵肌肉也。痙者。湿流関節而筋勁急也。疸者。湿乗脾土肌肉発黄也。皆脾胃湿症。朮性甘燥。所以主之。

風・寒・湿が合わさることで痺証(関節や筋肉の痛み・しびれ)を形成します。痺症の方は筋肉が拘攣し、しびれ・麻痺を生じます。それらの原因は邪によって湿気が蓋をされた状態となり、逃げ道がなく、肌・肉・筋・骨に障害を起こすからです。死肌(肌の感覚が麻痺している状態)は湿邪が肌肉に浸入することで生じ、痙病(痙攣や筋肉の強ばり)は湿邪が関節・筋肉に流れ込むことで生じ、黄疸は湿が脾土を乗することで発黄します。死肌・痙・疸は脾胃の湿が原因によるものであるため、甘燥の白朮・蒼朮をつかいます。

関節痛・しびれ・麻痺の症状の時ときの疎経活血湯、大防風湯には白朮、気味羗活湯には蒼朮がつかわれています。

黄疸のときにつかわれる茵蔯五苓散にも朮は入っています。

止汗除熱。

胃土湿。則湿熱交蒸而自汗発熱。朮性燥湿。故止汗除熱也。

“脾は燥を喜み(このみ)、湿を悪(にく)む”というように脾は湿が過剰にならないように胃の熱によって乾燥してもらい、胃は熱が過剰にならないように脾の湿によって冷やされています。湿と熱が合わさることで、湿が蒸発し、自汗・発熱となります。白朮・蒼朮は燥湿の生薬であるため、湿を除き、止汗・除熱となります。似たような状態として『温病条弁』上焦篇暑温のところに白虎加蒼朮湯がつかわれています。

消食。作煎餌久服。

脾者為胃行其津液者也。脾湿。則失其健運之性而食不消矣。朮性温益陽。則脾健而食消也。

煎餌久服。則胃気充足。

脾は胃の熱を冷ますために津液をめぐらせています。脾胃の働きが失調すると消化することができなくなります。白朮・蒼朮は温性であり、陽を益します。脾が働けば食べ物を消化できるようになります。胃もたれや消化不良に蒼朮の入った平胃散がつかわれます。

軽身延年不飢。

気盛則身軽。気充則不飢。気納則延年。所以軽身延年不飢也。

気が盛んになれば身が軽くなり、気が充足すれば不飢となり、気が納まれば延年します。よって白朮・蒼朮によって軽身・延年・不飢となります。




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