血(けつ)
西洋での血のイメージに近いところもあります。中医学では酸素を運ぶだけなく、濃いエネルギーを伝える物質としての意味合いがあります。気も血もどちらもエネルギーをもっていますが、血は液体で冷やす作用があります(気を衛陽、血を営陰ということもあります)。気を衛気と表すときは、血を営気と表現します。営気は血液とともに全身を巡り、身体の機能を働かせています。
・血の働き
「血はこれを濡す(うるおす)を主る」とあり、気が温めるのに対し、血は滋潤の作用があります。血虚(貧血とは異なります)という血が不足した状態になると髪や肌が乾燥しやすくなったり、筋肉がつりやすくなったりします。それだけでなく、エネルギーをもっているため、身体の機能を動かす作用もあります。
「肝(目)は血を受けてよく視、足は血をうけてよく歩き、掌は血を受けてよく握り、指は血を受けてよく摂まむ(つまむ)」
生理不順から血のことを考えてみます(もちろん血だけでなく、さまざまな要因が絡んでいます)。まずは量的な問題です血が不足していれば生理も順調に進まないことが考えられます(血虚だけであれば基本処方は四物湯)。次に流れの問題です。血の巡りが悪くても(それが続くと瘀血という血の塊が生じる状態になります)生理は順調にいきません(一般的には桂枝茯苓丸がよく使用されます)。実際にはさらにもう1つ、2つ掘り下げ、なぜ血が不足しやすくなったのか、血の流れが悪くなったか、考える必要があります。
・血のつくられ方
「ここ(中焦)に受くるところの気は、糟粕を泌し、津液を蒸し、その精微を化し、上り肺脈に注ぎ、すなわち化して血となし、もって生身に奉ぐ、これより貴きはなし、故に独り経隧を行るを得る、命じて営気という」
血の生成についてです。流れとしては脾胃(消化器)から食べ物からの水穀の精微を取り込み、肺で清気と合わせます。ここまでは気と同じ流れですが、肺から心へ行き、心での温煦を受け、赤い血となります。
血のもう1つのつくられ方は腎からつくられる場合です。腎精化血という、腎の精が転化し、血となることがあります。「精血同源」ともいわれ、精と血は互いに変換されます。
・血の流れ
血は血管を通り送られ、気の固摂にて脈から漏れ出ないように、気の推動にて巡っていきます。その原動力は心の働きです。全身に血を送るという意味では心臓と似ています。大きい流れは心で送り込みますが、毛細血管の細かい部分は肝の疏泄によって調整されています。
その他のワード
「営は脈中にあり」「営気を壅圧遏(ようあつ)し、避くる所をなからしむ、これを脈という」
言葉の通り、営気は脈中を流れており、エネルギー、栄養を持った血液のイメージに近いです。
「栄(営)は水穀の精微なり、五臓を和調し、六腑を灑陳(さいちん)し、すなわちよく脈に入るなり」
営気は水穀の精微からつくられ、脈の中を流れ、五臓六腑を動かしているということです。