イボや関節の痛みでつかわれる薏苡仁(ヨクイニン)です。市販でもヨクイニンの入ったタブレットも販売されています。なぜそういう効能があるのか、調べてみました。
ヨクイニンとハトムギの違いは?
ヨクイニンとハトムギの違いは皮がついているか、いないかです。
ハトムギの皮を除いたものがヨクイニン、
反対にいえばヨクイニンに皮がついているものがハトムギです。
医療用でもつかわれるヨクイニンの方が余分なものがついてないものと言えます。
現代中医学
気味:甘・淡 微寒
帰経:脾・胃・肺
効能:利水滲透湿、健脾止瀉、除痺、排膿、解毒散結の効能から水腫、脚気、小便不利、脾虚泄瀉、湿痺拘攣、肺癰、腸癰、いぼ、癌腫に応用される。
古典
気味:甘 微寒<神農本草経>
帰経:肺・脾<葉天士解本草>
漢方においては生薬の使い方だけでなく、それ以前になぜそういう効能があるのかを理解する必要があります。『神農本草経』とそれの解説している『葉天士解本草』から考察したいと思います。
『神農本草経』
“気微寒。味甘。無毒。主筋急拘攣不可屈伸。久風湿痺。下気。久服軽身益気。”
薏苡仁は甘・微寒の生薬で筋肉が拘急し、足を曲げ、伸ばしができないのを主治します。慢性化した湿痺(湿邪による関節痛)、下気にも効果があります。長期服用することで益気し、身体を軽くします。
『葉天士解本草』
”薏苡仁微寒。稟天秋金之燥気。入手太陰肺経。味甘無毒。得地中平之土味。入足太陰脾経。気降味和。陰也。経云。湿熱不攘。則大筋軟短而拘攣。薏苡仁気微寒。清熱利湿。所以主筋急拘攣不可屈伸也。久風。長久之風也。風淫則末疾。所以手足麻木而湿痺生焉。薏苡仁甘寒。其主之者。甘以行之。寒以清之也。微寒。稟秋金之燥気而益肺。肺気治則下。故主下気。久服軽身益気者。湿行則脾而身軽。金清則肺実而気益也。”
↓に『神農本草経』と『葉天士解本草』の各項目を並べてまとめてみます。
気微寒。味甘。無毒。
“薏苡仁微寒。稟天秋金之燥気。入手太陰肺経。味甘無毒。得地中平之土味。入足太陰脾経。気降味和。陰也。経云。”
薏苡仁は微寒であることから太陰肺経に入り、甘味であることから太陰脾経に入ります。
主筋急拘攣不可屈伸。
“湿熱不攘。則大筋軟短而拘攣。薏苡仁気微寒。清熱利湿。所以主筋急拘攣不可屈伸也。”
湿熱が除かれないことで筋肉の拘攣が起こります。薏苡仁は微寒であることから湿熱を清熱利湿することで足の曲げ伸ばしができないほどの筋肉の拘攣に作用します。実際、現在でも関節痛に薏苡仁湯や麻杏薏甘湯がつかわれています。
久風湿痺。
“久風。長久之風也。風淫則末疾。所以手足麻木而湿痺生焉。薏苡仁甘寒。其主之者。甘以行之。寒以清之也。”
風邪に長くあたることで四肢(末疾)が風に侵され、進行すると手足が麻痺する湿痺の状態に至ります。薏苡仁は甘寒の生薬であるため、甘味でめぐらせ、寒をもって清します。
下気。
“微寒。稟秋金之燥気而益肺。肺気治則下。故主下気。”
薏苡仁は肺経に入る生薬であり、清熱利湿するため肺癰の葦茎湯や腸癰(大腸は肺の裏)の腸廱湯にも入っています。
久服軽身益気。
“久服軽身益気者。湿行則脾而身軽。金清則肺実而気益也。”
薏苡仁には益気する作用がありますが、それは湿を巡らせることで健脾し、益気します。薏苡仁は参苓白朮散にも入っていることからも脾虚湿盛の状態に用い、健脾止瀉としてもつかうことができます。
まとめ
薏苡仁は甘・微寒であり、清熱利湿の作用から関節痛・手足のしびれの漢方薬(薏苡仁湯、麻杏薏甘湯)につかわれます。肺経にも入る生薬であり、湿熱をとる作用からも葦茎湯、肺の裏は大腸であり、腸廱湯にもはいっています。湿を取り除くことで健脾する作用からも慢性的な下痢の参苓白朮散としてもつかわれています。白朮・茯苓は水飲を除くことで健脾する生薬であり、水に働くか湿に働くかで生薬の違いを理解する必要があります。
湿を取り除くという考えからイボ(イボは湿の凝聚したものと捉えられる)、肌荒れにもつかわれています。