甘草(かんぞう)

甘草は字のとおり、生薬のクセのある甘い味がします。その甘味からも食品の甘味料としても使用されます。有名なものではハリボーのタイヤグミに入り、かっぱえびせんなどにも入っています。

甘草は甘味から漢方においても矯味剤として頻用され、漢方薬の7割近くに配合されています。



目次

現代中医学

気味:甘 平

帰経:十二経

効能:補中益気、潤肺・去痰止咳、緩急止痛、清熱解毒、調和薬性

古典

気味:甘 平<神農本草経>

帰経:肺・脾<葉天士解本草>

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『神農本草経』、葉天士がそれを解説した『葉天士解本草』から甘草の働きについて考えたいと思います。

『神農本草経』

気平。味甘。無毒。主五蔵六府寒熱邪気。堅筋骨。長肌肉。倍気力。金瘡(九に重なる)。解毒。久服軽身延年。

『葉天士解本草』

甘草気平。稟天秋涼之金気。入太陰肺経。味甘無毒。稟地和平之土味。入足太陰脾経。気降味升。陽也。

肺主気。脾統血。肺為五蔵之長。脾為萬物之母。味甘可以解寒。気平可以清熱。甘草甘平。入肺入脾。所以主五蔵六府寒熱邪気也。

肝主筋。腎主骨。肝腎熱於筋骨耎(ぜん)。気平入肺。平肝生腎。筋骨自堅矣。

脾主肌肉。味甘益脾。肌肉自長。

肺主周身之気。気平益肺。肺益則気力自倍也。

金瘡熱則(九に重)。気平則清。所以治(九に重)。

味甘緩急。気平清熱。故又解毒。

久服肺気清。所以軽身。脾気和。所以延年也。

↓にて『神農本草経』と『葉天士解本草』を比較し、説明します。

気平。味甘。無毒。

甘草気平。稟天秋涼之金気。入太陰肺経。味甘無毒。稟地和平之土味。入足太陰脾経。気降味升。陽也。

甘草は気は平で肺経に入り、秋涼の金の気を備えています。味は甘味で“和平”であり、太陰脾経に入ります。『葉天士解本草』で気味を和平と表現しているものは甘草しかなく、和平することからも甘草は多くの漢方処方に配合され、味・作用を和平にし、つかいやすいものにしています。

主五蔵六府寒熱邪気

肺主気。脾統血。肺為五蔵之長。脾為萬物之母。味甘可以解寒。気平可以清熱。甘草甘平。入肺入脾。所以主五蔵六府寒熱邪気也。

肺は気を主り、五臓の長であり、脾は統血し、後天之本であり、万物の母です。甘味は寒を解し、気平は清熱し、平じます。甘草は甘平であり、肺と脾に入ることで五臓六腑の寒熱邪気に働きます。肝臓は傷寒につかわれる桂枝湯・葛根湯・麻黄湯にも入り、温病につかわれる銀翹散・麻杏甘石湯に入り、寒邪・熱邪を問わず漢方薬にはいっています。

堅筋骨

肝主筋。腎主骨。肝腎熱於筋骨耎(ぜん)。気平入肺。平肝生腎。筋骨自堅矣。

肝は筋を主り、腎は骨を主ります。肝腎の熱によって筋骨を弱らせます。気平によって肺に入り、肝を平じることで腎も整い、筋骨は自ずと堅くなります。関節痛につかわれる薏苡仁湯、独活寄生湯にも甘草は入っています。

長肌肉

脾主肌肉。味甘益脾。肌肉自長。

脾は肌肉を主り、甘草の甘味にて脾は益するため、肌肉は自ずと長じます。補脾薬の六君子湯、補中益気湯にも甘草はつかわれています。

倍気力

肺主周身之気。気平益肺。肺益則気力自倍也。

肺は身体の周りに衛気をめぐらせ、甘草の気平によって肺を益し、気力が自ずと強くなります。補気薬の補中益気湯にも甘草は入っています。

金瘡(九に重なる)

金瘡熱則(九に重)。気平則清。所以治(九に重)。

金瘡とは切り傷のことで、キズは熱をもち、甘草の気平にて清します。キズや皮膚疾患につかう漢方薬にも甘草はよく入っており、十味敗毒湯、荊芥連翹湯、消風散、治頭瘡一方、托裏消毒飲、四妙勇安湯、托裏透膿散、排膿散及湯などがあります。

解毒

味甘緩急。気平清熱。故又解毒。

甘草の甘味にて急しているものを緩め、気平にて清熱し、解毒します。十味敗毒湯、荊芥連翹湯、普済消毒飲、消風散、治頭瘡一方、托裏消毒飲、四妙勇安湯、托裏透膿散、排膿散及湯にも甘草は入っています。

久服軽身延年

久服肺気清。所以軽身。脾気和。所以延年也。

甘草は肺経と脾経に入るため、長く服用することで肺気はめぐり軽身となり、脾気が和することで延年します。

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