車前子(しゃぜんし)

車前子はオオバコの種子のことです。オオバコの種皮は水分を含むと数十倍の膨らむ性質を利用し、満腹感を得やすいということでオオバコダイエットというものもあります。

車前子は竜胆瀉肝湯、清心連子飲、牛車腎気丸、五淋散、八正散、易黄湯、完帯湯などに使われています。

目次

現代中医学

気味:甘 寒

帰経:腎・膀胱・肝・肺

効能:利水通淋、渗湿止瀉、清肝明目、清熱化痰

古典

気味:甘 寒<神農本草経>

帰経:膀胱・脾<葉天士解本草>

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『神農本草経』と『葉天士解本草』から車前子の働きについて考えたいと思います。

『神農本草経』

“気寒。味甘。無毒。主気癃。止痛。利水道通小便。除湿痺。久服軽身耐老。”

『葉天士解本草』

“車前気寒。稟天冬寒之水気。入足太陽寒水膀胱経。味甘無毒。得地中正之土味。入足太陰湿土脾経。気降味和。陰也。

膀胱者州都之官。津液蔵焉。気化則能出矣。出気不化。閉塞下竅。而為癃閉。其主之者。寒能化熱。甘能化気也。

小便者心火之去路也。火結於膀胱。則小便痛矣。其止痛者。気寒能清火也。

飲入於胃。游溢精気。上於脾。脾気散精。上帰於肺。肺乃下輸膀胱。車前子味甘。甘能益脾。脾気散精。則肺気通行。故水道通。小便利也。

益脾利水。則湿下逐。故又除湿痺也。

久服軽身耐老者。指有病者而言也。人身有湿則身重。湿逐則身軽。湿逐脾健。脾主血。血充故耐老也。不然。滑泄之品。豈堪久服者哉。”

 

気寒。味甘。無毒。

“車前気寒。稟天冬之水気。入足太陽寒水膀胱経。味甘無毒。得地中正之土味。入足太陰湿土脾経。気降味和。陰也。”

車前子は気寒にて冬寒の水気をうけ、太陽寒水膀胱経に入ります。味は甘く、無毒、中正の土味にて太陰脾経に入ります。

主気癃(癃閉:排尿困難のこと)

“膀胱者州都之官。津液蔵焉。気化則能出矣。出気不化。閉塞下竅。而為癃閉。其主之者。寒能化熱。甘能化気也。”

膀胱は州都之官で津液が最後にあつまる腑です。膀胱に蓄積された水は気化されることで排尿されます。気化されなければ、排尿することができません。下竅が閉塞している状態、つまり癃閉(排尿困難)となります。車前子の寒にて熱をよく化し、甘味にて気化が促されます。実際に車前子は清心連子飲や五淋散など排尿を促す漢方薬に入っています。

止痛。

小便者心火之去路也。火結於膀胱。則小便痛矣。其止痛者。気寒能清火也。

小便というのは心火が出ていく通路となっています。漢方では因勢利導といい、病態によって熱の排出路が考えられています。表に熱がある感冒のときは辛涼発汗し、腸に熱がこもっているときは大便として排出します。心に熱がこもっているときは小便として熱を排出します。火が膀胱にて結することで排尿痛となります。車前子の気寒にてよく清火し、排尿痛を止痛します。車前子は五淋散、八正散、清心連子飲の膀胱炎のときに使われる漢方薬によく配合されています。

利水道通小便。

“飲入於胃。游溢精気。上於脾。脾気散精。上帰於肺。肺乃下輸膀胱。車前子味甘。甘能益脾。脾気散精。則肺気通行。故水道通。小便利也。”

飲んだ水は胃に入り、脾から昇清・運化にて取り込まれた精気は上輸されます。肺は粛降を主り、肺→全身→膀胱へと水を行きわたらせます。車前子の甘味にてよく脾を益し、脾は取り込んだ精気を散布することで、肺気も機能するようになり、水道が通調します。ゆえに車前子にて利小便となります。

除湿痺。

“益脾利水。則湿下逐。故又除湿痺也。”

車前子の甘味にて脾は益され、脾が働くことで湿を追い出します。ゆえに車前子は除湿痺につかわれます。

久服軽身耐老。

“久服軽身耐老者。指有病者而言也。人身有湿則身重。湿逐則身軽。湿逐脾健。脾主血。血充故耐老也。不然。滑泄之品。豈堪久服者哉。”

 

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