手足が冷えやすい方の腰痛、足の痛みかしびれがあるときはどんな漢方薬がいいの？

2020 8/22

2018年4月19日 2020年8月22日

牛車腎気丸

腎虚という状態の方に処方される漢方薬です。

中医学において腎というのは、腎臓のように水分の排泄を担っているだけでなく、生命エネルギーにも関与しています。腎が衰えてくると（腎虚）、尿の異常、浮腫み、成長、老化、生殖の異常、腰痛、歯、骨、髪などの衰えが現れてきます。そういったときに使用されるのが補腎剤の牛車腎気丸です。さまざまな作用で一般用医薬品が販売されていますが、“腎虚を改善する薬”と覚えれば効能効果も理解できます。腎虚のなかでもむくみ、しびれがあるときによく使用されます。抗がん剤の副作用のしびれに効果があります。

効能又は効果は？

ツムラの添付文書には「疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症：下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ」と記載があります。

何が入っているの？

牛車腎気丸には地黄、山茱萸、山薬、沢瀉、茯苓、牡丹皮、桂皮、附子、牛膝、車前子の１０つの生薬が配合されています。八味地黄丸に牛膝と車前子を加えたものです。

牛車腎気丸＝八味地黄丸＋牛膝、車前子

地黄：補血、滋潤作用

コマノハグサ科のアカヤジオウの根のこと。強い滋潤作用があり、身体の乾きに使われます。年齢を重ねると皮膚が乾燥してきます。それは身体の水分を保持する能力が衰えているからです。頻尿も同じ理由です。水を飲んでも吸収されず、すぐに流れていくため頻尿になります。血虚の方に補血剤としても使用されます。

山茱萸：補腎、頻尿改善

ミズキ科サンシュユの果実。肝腎を補い、排尿を調節し、頻尿を改善します。

山薬：補腎作用

ヤマイモの根茎。補脾胃作用があり、胃腸が虚弱な方の消化吸収を高めます。補肺腎作用があり、呼吸器系や泌尿器科の症状を改善します。

沢瀉：利水作用

オモダカ科サジオモダガの塊茎。除湿、利水作用。気を降ろし、水滞による頭重感、めまい、耳鳴りを利水作用にて改善します。年齢を重ねると排尿能力が衰えて、むくみが生じます。利水作用にてむくみを改善します。

茯苓：利水作用

サルノコシカケ科マツホドの菌核。利水作用があり、身体の水のバランスを調整してくれます。胃内停水を改善、胃腸機能を調える作用、気を降ろす作用、精神安定作用もあります。

牡丹皮：清熱作用

ボタン科ボタンの根皮。こちらの生薬にも駆瘀血作用と、熱を鎮める清熱作用があります。

桂皮：身体を温める作用

身体を温める生薬です。発汗作用があるため葛根湯にも配合されています。

附子：体の裏から温める

附子は心と腎の陽気を補い、身体を裏から温め、手足の冷えを緩和します。

牛膝（ごしつ）：血の巡りをよくする

牛膝と書きますが、牛の膝が使用されているわけではありません。ヒユ科のヒナタイノコズチの根。瘀血を除く、つまり血の巡りをよくする作用があります。

車前子：水分代謝改善作用

オオバコの種子。水の巡りを改善し、湿を取り除きます。

効果のまとめ

牛車腎気丸に配合されているのは腎の働きをよくするものばかりです。腎の働きをよくすることで身体に水分を保ちやすくします。水がすぐに出ていくのを抑えるため、頻尿を改善、身体の乾燥を防止、乾燥によるかゆみ、口渇を改善します。沢瀉、茯苓の利水作用にて水の偏在を改善し、浮腫みも緩和します。桂皮、附子で手足を温めます。牛膝、車前子で水を巡らせ、より強力にむくみを改善し、下肢の痛み、しびれを緩和します。下肢痛やしびれがある状態というのは水が溜まっていると考えられるからです。

腎は生命エネルギーをつかさどる部位であるため、精力が衰えた方や耳鳴りのある方に使用されます。年齢を重ねて生じる腰痛にも使用されます。