皮膚のかゆみが強い湿疹、皮膚炎、あせもにはどんな漢方薬がいいの?

消風散

かゆみや湿疹などの皮膚症状において幅広く使われる漢方薬です。皮膚疾患全般に用いられます。漢方ではかゆみという急迫的な症状は“風”と捉えられます。“風”を“消”す漢方薬です。

薬理効果としても“ヒト由来好中球及びcell-freeのxanthine-xanthine oxidase由来活性酸素(O2−、H2O2、OH・)の産生を抑制した。また、好中球の細胞内Ca2+濃度を抑制した(in vitro )”という報告もあります。

目次

効能又は効果は?

ツムラの添付文書には「分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)」と記載があります。

何が入っているの?

荊芥・防風・牛蒡子・蝉退・石膏・知母・苦参・蒼朮・木通・地黄・当帰・胡麻・甘草の13種類です。

使用されている生薬の種類は多いですが、大きく4つの薬効にわけることができます。

袪風薬(荊芥・防風・蝉退・牛蒡子)・清熱薬(石膏・知母・苦参)・利水薬(蒼朮・木通)・養血薬(地黄・当帰・胡麻)の4種類です・

荊芥・防風・蝉退・牛蒡子:袪風

荊芥の辛・温にて袪風解表・透疹。防風も散風解表する生薬であり、その字の通り“風の病気を防ぐ”生薬です。大抵の袪風薬は辛・温の生薬であり、辛味にて風を発散し、温薬であるため燥性があります。防風は辛・“甘”・温であり、辛味と甘味を兼ねます。甘味があるため防風は燥性に偏りません。牛蒡子も袪風薬ですが、寒であるため清熱し、毒邪を外透します。蝉退は甘寒で軽い生薬であり、風熱を透発します。

石膏・知母・苦参:清熱

石膏は白虎湯につかわれているように肌肉を、強力に清熱します。知母も同じく白虎湯にはいっているように苦寒にて陰気を補います。苦参は『金匱要略』では三物黄芩湯につかわれているように苦寒にて清熱燥湿し、よく皮膚疾患にもちいられます。

蒼朮・木通:利水

皮膚を掻きむしると滲出液がでる状態というのは風湿熱毒によって三焦が通調せず、湿が皮膚にあふれてきている状態です。蒼朮・木通にて利水し、湿熱の邪を下行させ、小便から排出します。

地黄・当帰・胡麻仁:涼血養血

かゆみの原因が風邪のように皮膚の表だけに限局していれば袪風薬で対応することができます。しかし慢性化することによって病態が深く、気分から血分の領域にまで及んでくると袪風薬・気分の薬だけでは対応できなくなります。消風散には地黄が入っており、清熱涼血し、血分の熱を冷まします。熱によって血が枯れ、さらに熱化する恐れもあるため、当帰・胡麻仁の養血薬がはいっています。

効果のまとめ

荊芥・防風・蝉退・牛蒡子にて袪風し、風熱を散じます。石膏・知母・苦参にてかゆみの原因にもある気分の熱を清熱します。掻きむしると滲出液がでるなどの水湿・湿熱を蒼朮・木通にて小便に排出します。地黄・当帰・胡麻にて慢性化し、かゆみの原因が血分まで落ち込み、血熱となっているものを涼血します。消風散は風を発散し、湿や気分・血分の熱にも対応しているため、皮膚のかゆみに対してとても使いやすい漢方薬になっています。

ほかの漢方薬との違いは?

皮膚疾患で使用される漢方薬は消風散のほかに黄連解毒湯、温清飲、十味敗毒湯があります。

消風散

消風散もよく使用される漢方薬で、名前の通り“風”を消すことに特化した方剤です。ツムラの添付文書にも「分泌物が多く、かゆみの強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、水虫、あせも、皮膚そう痒症)」とあり、“かゆみが強い”と記載があります。蝉退・防風・荊芥・牛蒡子にて風熱を散じ、当帰・生地黄・知母・苦参・胡麻仁・石膏にてかゆみの原因になっている血の熱をとるとともに、清熱します。

黄連解毒湯

黄連解毒湯は黄連・黄芩・黄柏・山梔子という苦味で清熱の生薬から構成されていることからも赤みが強いときに使われます。清熱の作用が強いため赤みでも鮮やかな赤みです。時間が経過し、くすんだ赤みであれば血のめぐりにも影響しているため別の漢方薬が適当と考えられます。

温清飲

温清飲は黄連解毒湯に養血の四物湯をあわせたものです。“皮膚の色つやが悪い”ときに用いられます。市販の温清飲には“皮膚がかさかさして色つやが悪く”“湿疹・皮膚炎”と記載があります。そういった症状の疾患の1つにアトピー性皮膚炎があり、論文を検索するとアトピー性皮膚炎に温清飲をつかっている報告がいくつもあります。湿疹・炎症を繰り返すことで皮膚を掻きむしり、浸出液や血がでていきます。皮膚はどんどん血を失っていくと同時に熱がこもっていきます。温清飲は四物湯によって失われた血を補い、黄連解毒湯にて清熱することで症状に対応します。温清飲はアトピー性皮膚疾患につかうことはありますが、アトピー全般に温清飲がつかえるわけではありません。熱が強ければ、より一層熱をとる必要がありますし、浸出液が多ければ水湿を取る必要があります。“皮膚がかさかさして色つやが悪く”のときが温清飲です。

十味敗毒湯

十味敗毒湯は風寒湿をとりのぞく漢方薬です。独活・荊芥にて風寒“湿”を散じ、防風・柴胡・川芎にて風を散じるのを助けます。風と湿を発散する作用が強いため十味敗毒湯は化膿性皮膚疾患、じんましん、急性湿疹に用いられます。

処方箋でもらう薬とドラッグストアで売っている薬はどう違うの?

処方箋でもらうときツムラが多いので、ツムラにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。

ツムラ22 7.5g(3包)中には、、、

ジオウ       3.0g
セッコウ      3.0g
トウキ             3.0g
ゴボウシ      2.0g
ソウジュツ   2.0g
ボウフウ    2.0g
モクツウ    2.0g
ゴマ          1.5g
チモ          1.5g
カンゾウ        1.0g
クジン             1.0g
ケイガイ          1.0g
センタイ          1.0g

医療用のメーカーごとの違いは?

大手2社(ツムラ、コタロー)の生薬量を比較してみました。2社ともつかわれている生薬量は同じでした。ただコタローは防風が浜防風となっています。防風と浜防風は植物から異なり、通常の防風は疎散風熱に働くのに対し、浜防風は沙参ともいわれ、補気の作用が強くなっています。

ドラッグストアで購入できるものとの違いは?

ドラッグストアで売られている市販のものにはどれくらい生薬が入っているか調べてみました。

クラシエ漢方

クラシエからでている市販用の漢方薬です。医療用に比べると若干生薬量は少なりなりますが、市販されているなかで一番生薬量が多い商品です。剤型も錠剤タイプになっており、粉が苦手な方でも服用しやすいのでオススメです。

 

ツムラ漢方

こちらは一般用医薬品のツムラです。生薬の1日量では医療用の半分となっています。

皮膚のかゆみが強い湿疹、皮膚炎、あせもには消風散です。

 

 

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