玄参は日本の漢方薬にはあまり入っていませんが、中国の漢方処方には多く配合されています。玄参は清熱涼血の生薬で、主に温病でつかわれます。日本の漢方は傷寒に対する処方は多いですが、なぜか温病に対する漢方薬が大変少なく、玄参が入った漢方薬が少ないのが現状です(玄参が入っているのは市販の柏子養心丸くらいです)。時代が変化し、暖房器具の発達、建築技術の向上からも現代では傷寒にかかりにくくなってきています。寒邪の冷えを持った邪であっても、慢性化すると熱(火)になる性質があるため個人的には玄参を使うべき機会は多いように思えます。
玄参が入っている漢方薬には増液湯、化斑湯、清営湯、清宮湯、普済消毒飲、柏子養心丸、鎮肝熄風湯、消瘰丸、四妙勇安湯などがあります。
玄参と似ている生薬に生地黄があります。色の黒さから見ても一瞬見ただけでは同じように見えるくらいです。性質も似ています。その違いを呉鞠通の『温病条弁』から考えたいと思います。
『温病条弁』上焦篇 6条:桑菊飲(風熱犯肺)
「太陰風温、但咳身不甚熱、微渇者、辛涼軽剤桑菊飲主之」
桑菊飲の加減法
「二三日解せず、気粗く喘に似て、燥気分に在る者は、石膏・知母を加う。舌絳(あか)く、暮に熱し甚だしく燥き、邪初めて営に入るは玄参・犀角を加える。血分に在る者は、薄荷・芦根を去り、麦門冬・生地黄・玉竹・牡丹皮を加う。」
桑菊飲の加減法からもわかるように気分の熱は石膏・知母で清熱しています。気分から営分に邪が侵入してくるときは玄参・犀角にて対応しています。さらに血分に邪があるときは麦門冬・生地黄・玉竹・牡丹皮を加えています。
気分の熱→石膏・知母
営分の熱→玄参・犀角
血分の熱→生地黄・牡丹皮
玄参も生地黄もどちらも広い意味で涼血し、血分に働く生薬ですが、どちらかというと生地黄の方が作用する位置がより深いと考えられます。生地黄の方が養陰の働きが強く、玄参の方が降火が強いともいわれます。
玄参は生地黄とは異なり鹹味をもっているため、消瘰丸(消瘰丸:玄参・牡蛎・貝母)にて軟堅散結し、リンパの塊をほぐす働きもあります。
現代中医学
気味:苦・鹹 寒
帰経:肺・胃・腎
効能:清熱涼血、滋陰降火、解毒散結の効能から、清営湯などの温病の熱入営血、骨蒸労嗽、虚煩不寐、津傷便秘、咽喉腫痛、瘰癧痰核、瘍疽瘡毒などに応用される
古典
気味:苦 微寒<神農本草経>
帰経:腎・心・心包<葉天士解本草>
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『神農本草経』
気微寒。味苦。無毒。主腹中寒熱積聚。女子産乳余疾。補腎気。令人明目。
『葉天士解本草』
元参気微寒、稟天冬寒之水気。入足少陰腎経。味苦無毒。得地南方之火味。入手少陰心経、手厥陰心包絡経。気味俱降。陰也。
腹中者心腎相交之區也。心為君火。心不下交於賢。則火積於上。而熱聚腎為寒水。腎不上交於心。則水積於下而寒聚矣。元参気寒益腎。味苦清心。心火下而腎水上。升者升而降者降。寒熱積聚自散矣。
女子以血為主。産乳余疾。産後諸症以産血傷也。心主血。味苦清心。所以主之。
補腎気者。気寒壮水之功也。
令人明目者。益水可以滋肝。清心有以瀉火。火平水旺。目自明也。
気微寒。味苦。無毒。
元参気微寒、稟天冬寒之水気。入足少陰腎経。味苦無毒。得地南方之火味。入手少陰心経、手厥陰心包絡経。気味俱降。陰也。
主腹中寒熱積聚。
腹中者心腎相交之區也。心為君火。心不下交於賢。則火積於上。而熱聚腎為寒水。腎不上交於心。則水積於下而寒聚矣。元参気寒益腎。味苦清心。心火下而腎水上。升者升而降者降。寒熱積聚自散矣。
女子産乳余疾。
女子以血為主。産乳余疾。産後諸症以産血傷也。心主血。味苦清心。所以主之。
補腎気。
補腎気者。気寒壮水之功也。
令人明目。
令人明目者。益水可以滋肝。清心有以瀉火。火平水旺。目自明也。