五味子(ごみし)

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現代中医学

気味:酸 温

帰経:肺・心・腎

効能:斂肺、滋腎、生津、収汗、渋精の効能から肺虚喘咳、口渇、自汗、盗汗、労傷羸痩、滑精、久瀉久痢に応用されます。

古典

気味:酸 温<神農本草経>

帰経:胆・肝<葉天士解本草>

五味子は“5つの味をそなえる”ということで五味子といいますが、実際には酸味が強い生薬です。

五味子は小青竜湯、人参養栄湯、生脈散、天王補心丹、清肺湯、苓桂味甘湯、地黄飲子、大定風珠などに入っています。

『傷寒論』では止咳の目的で小青竜湯のように五味子が入った方剤がいくつか登場しますが、必ず五味子と乾姜がセットになっています。五味子の酸味にて収斂する作用で咳を止めますが、邪を留めてしまう恐れもあるため、乾姜の辛味にてそれを防ぎ、止咳の作用のみ残るように設計されています。

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『神農本草経』と『葉天士解本草』の条文を並列し、五味子の働きについて考えたいと思います。

『神農本草経』

気温。味酸。無毒。主益気。咳逆上気。労傷羸痩。補不足。強陰。益男子精

『葉天士解本草』

五味子気温。稟天春升之木気。入足少陽胆経。味酸無毒。得地東方之木味。入足厥陰肝経。気升味降。陰也。

胆者担也。生気之原也。肝者敢也。以生血気之蔵也。五味気温益胆。味酸益肝。所以益気。

肝血虚則木枯火炎。乗所不勝。病咳逆上気矣。五味酸以収之。温以行之。味過於酸。則肝気以津而火不炎矣。

肝気不足。則不勝作労。労則傷其真気。而肝病乗脾。脾主肌肉。故肌肉痩削。五味酸以滋肝。気温治労。所以主労傷羸痩也。

肝胆者。東方生生之蔵府。萬物営発之経也。肝胆生発。則余蔵従之宣化。五味益胆気而滋肝血。所以補不足也。

陰者宗筋也。肝主筋。味酸益肝。肝旺故陰強也。酸温之品。収斂元陽。斂則陰生。精者陰気之英華也。所以益男子精也。



気温。味酸。無毒。

“五味子気温。稟天春升之木気。入足少陽胆経。味酸無毒。得地東方之木味。入足厥陰肝経。気升味降。陰也。”

気温にて春升の木気をうけ、足少陽胆経に入ります。味は酸味で無毒、東方の木味をえて、厥陰肝経に入ります。気は升、味は降。

主益気。

“胆者担也。生気之原也。肝者敢也。以生血気之蔵也。五味気温益胆。味酸益肝。所以益気。”

胆は中正之官で、生気の源であり、肝は将軍之官で、血気を蔵します。五味氏は気温にて胆を益し、酸味にて肝を益し、ゆえに益気をつかさどります。

咳逆上気。

“肝血虚則木枯火炎。乗所不勝。病咳逆上気矣。五味酸以収之。温以行之。味過於酸。則肝気以津而火不炎矣。”

肝血虚であると肝木は枯、上炎します。その結果肝木が肺金を侮り(木侮金)、咳逆上気となります。五味子の酸味にて収斂し、温にてめぐらせます。酸味が過ぎれば肝気が湧き出て、火は燃えなくります。

労傷羸痩。

“肝気不足。則不勝作労。労則傷其真気。而肝病乗脾。脾主肌肉。故肌肉痩削。五味酸以滋肝。気温治労。所以主労傷羸痩也。”

肝気が不足していると労に勝つことができなくなり、労によって真気が損傷されます。肝の病が脾に乗じます。脾は肌肉を主り、肝気が脾土を克し、肌肉がやせていきます。五味子の酸味にて滋肝し、気温にて労を治し、ゆえに労傷羸痩を主るとあります。

補不足。

“肝胆者。東方生生之蔵府。萬物営発之経也。肝胆生発。則余蔵従之宣化。五味益胆気而滋肝血。所以補不足也。”

肝胆は東方の臓腑であり、萬物の営発の経であり、肝胆が生発し、ほかの蔵が宣化に従います。五味子は短気を益し、肝血を滋養し、ゆえに補不足となります。

強陰。益男子精

“陰者宗筋也。肝主筋。味酸益肝。肝旺故陰強也。酸温之品。収斂元陽。斂則陰生。精者陰気之英華也。所以益男子精也。”

陰は宗筋(陰茎)です。肝は筋を主り、五味子の酸味にて肝を益します。肝が旺盛になることで強陰となります。五味子は酸温の生薬であり、元陽を収斂します。収斂することで陰が生じ、精は陰気の華であるため、故に五味子は男子精を益します。

 

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