何首烏(かしゅう)は養血薬として当帰飲子につかわれています。
それ以外にも七宝美髯丹、贊化血余丹には髪・髭を黒く、顔色をよくする生薬として配合されています。
現代中医学
気味:苦・甘・渋 微温
帰経:肝・腎
効能:補益精血、生発烏髪、強筋骨、解毒(截瘧)に応用される。
古典
気味:苦・渋 微温<神農本草経>
帰経:胆・心・腎<葉天士解本草>
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何首烏の働きについて『神農本草経』と葉天士がそれを解説した『葉天士解本草』から考えたいと思います。
『神農本草経』
気微温。味苦渋。無毒。主瘰癧。消癰腫。療頭風面瘡。治五痔。止心痛。益血気。黒髭髪。悦顔色。久服長筋骨。益精髄。延年不老。亦治婦人産後及帯下諸疾。
『葉天士解本草』
何首烏気微温。稟天春升少陽之気。入足少陽胆経手少陽三焦経。味苦渋無毒。得地火水之味。入手少陰心経、足少陰腎経。気味升少降多。陰也。
瘰癧少陽之鬱毒。何首烏入少陽。気温則通達。所以主之。
癰腫及頭面風瘡。皆属心火。味苦入心。気温能行。所以主之。
腸辟為痔。痔者湿熱傷血之症也。味苦清血。故亦主之。
心為君火。火鬱則痛。苦能洩。温能行。故主心痛。
心主血。腎蔵気。味苦益血。味渋益気也。
髭髪者血之余也。心者生之本。其華在面。心血通流。則髭髪黒而顔色美矣。其黒髭髪悦顔色者。苦益血而温能通也。
肝主筋。腎主骨。蔵精與髄。胆気疎則肝血潤。心血充則腎精足。其堅筋骨益精髄者。
気温益胆。味苦渋而交心腎也。心腎交。則火降水升。自延年不老矣。
治産後及帯下諸疾者。以気温能升少陽之生気。味苦渋混心腎之陰陽也。
↓にて『神農本草経』と『葉天士解本草』の条文を並べて何首烏の働きについて考えたいと思います。
気微温。味苦渋。無毒。
何首烏気微温。稟天春升少陽之気。入足少陽胆経手少陽三焦経。味苦渋無毒。得地火水之味。入手少陰心経、足少陰腎経。気味升少降多。陰也。
何首烏は微温で少陽の気をもち、少陽胆経・少陽三焦経に入ります。味は苦・渋で少陰心経・少陰腎経に入ります。
主瘰癧。
瘰癧少陽之鬱毒。何首烏入少陽。気温則通達。所以主之。
瘰癧(るいれき:しこり)は少陽の鬱毒によるものです。何首烏は少陽に入るため、瘰癧に使うことができます。
消癰腫。療頭風面瘡。
癰腫及頭面風瘡。皆属心火。味苦入心。気温能行。所以主之。
癰腫(化膿性の腫瘍、できもの)、頭風(頭痛などの発作を繰り返すもの)、面瘡(にきび、かさなど)はみな心火によるものです。何首烏は味苦で心に入り、気温でよくめぐり、これらにつかわれます。皮膚疾患につかわれる当帰飲子にも何首烏はつかわれ、何人飲という瘧病(発熱をくり返す疾患)の薬にも何首烏は入っています。
治五痔。
腸辟為痔。痔者湿熱傷血之症也。味苦清血。故亦主之。
腸辟(下痢や血便)から痔になります。痔は湿熱によって血分が傷つけられる疾患であり、何首烏の味苦にて血を清めるため、痔にも何首烏はつかわれます。
止心痛。
心為君火。火鬱則痛。苦能洩。温能行。故主心痛。
心は君火であり、火が鬱することで痛みが生じます。何首烏の苦味にて火鬱を解き、温性にてよくめぐらせます。よって心痛につかわれます。
益血気。
心主血。腎蔵気。味苦益血。味渋益気也。
心は血を主り、腎は気を蔵しています。味苦にて血を益し、味渋にて気を益ます。何首烏は養血の生薬としてみることが多い印象です。
黒髭髪。悦顔色。
髭髪者血之余也。心者生之本。其華在面。心血通流。則髭髪黒而顔色美矣。其黒髭髪悦顔色者。苦益血而温能通也。
髭・髪は血の余りとされています。血が栄えていなければ髭・髪も栄えません。心は生之本であり、その華は面にあらわれます。心血が流暢に流れることで髭・髪は黒く、顔色は美しくなります。何首烏の苦味にて血を益し、温性にて流れをよくします。七宝美髯丹、贊化血余丹にも何首烏は入っています。
久服長筋骨。益精髄。
肝主筋。腎主骨。蔵精與髄。胆気疎則肝血潤。心血充則腎精足。其堅筋骨益精髄者。
肝は筋を主ります。腎は骨を主り、精と髄を蔵しています。胆気は疏泄し、肝血を潤します。心血が充ちれば腎精も足り、何首烏は筋骨を堅め、精髄を益します。
延年不老。
気温益胆。味苦渋而交心腎也。心腎交。則火降水升。自延年不老矣。
気温にて胆を益します。味苦渋にて心腎を交わらせ、火が降り、水が上ります。そうすることで自ずと延年不老となります。
亦治婦人産後及帯下諸疾。
治産後及帯下諸疾者。以気温能升少陽之生気。味苦渋混心腎之陰陽也。
何首烏は産後や帯下などの疾患につかわれます。何首烏の気温にて少陽の気をよく上らせ、味苦渋にて心腎の陰陽を交わらせるためです。